協賛 日本アイ・ビー・エム株式会社

〜「第41回 IBM インダストリアル・フォーラム京都」〜

2020年自動車業界の将来展望 続編
    〜“複雑さの解消”の重要性への示唆〜


5つの緊急課題の重要性を示唆した2008年の「自動車業界の将来展望 AUTO2020」を受け、IBMは今年、自動車業界のCEOを対象とした調査「IBM Global CEO Study 2010」を基にした「複雑さの解消」に関するスタディと自動車業界幹部を対象とした「Advance Mobility(モビリティーの進化)に関するインタビュー」を行った。「第41回 IBM インダストリアル・フォーラム京都2010」の講演では、それら調査で見えてきた世界の自動車業界リーダーからの示唆を紹介。業界における「複雑さの解消」の重要性と「モビリティーの進化」について、日本IBM 自動車産業ビジネス開発 部長 江崎 智行氏がさまざまな視点から自動車業界の将来展望を語った。

自動車業界に押し寄せるグローバル化の変革の波

 基幹産業として長い間、経済の成長を支えてきた自動車業界。だがこの業界にも、グローバル化による変革の波が押し寄せている。

 IBMは2008年に「自動車業界の将来展望 AUTO2020」と題した調査を実施。その中で“Simplify Complexity(複雑さの解消)”と、“Advance Mobility(モビリティーの進化)”を含む5つの緊急課題の重要性を示唆した。

 「第41回 IBM インダストリアル・フォーラム京都 2010」のセッションで、日本IBM 自動車産業ビジネス開発 部長 江崎 智行氏が「2020年自動車業界の将来展望 続編 〜“複雑さの解消”の重要性への示唆〜」と題した講演を実施。自動車業界における「複雑さの解消」の重要性と「モビリティーの進化」について、さまざまな視点から自動車業界の将来展望を語った。

日本IBM 自動車産業ビジネス開発 部長 江崎 智行氏

 AUTO2020の調査から2年後となる今年、IBMは自動車業界のCEOを対象とした調査「IBM Global CEO Study 2010」を基にした「複雑さの解消」に関するスタディと、自動車業界の幹部の皆さまを対象とした「Advance Mobility(モビリティーの進化)に関するインタビュー」を行った。今回の講演では、「本邦初公開」(江崎氏)という、その調査内容の詳細と江崎氏の分析が紹介された。

業界幹部は“複雑さ”への挑戦をどう捉えている?

 複雑化していると言われる自動車業界だが、実際に自動車業界のCEOはこの状況の変化をどう捉えているのだろうか。

 多くのCEOが「変化が急激」で今後ますます「より複雑」になると答えているが、さらに興味深い点として「『従来とは構造が異なる』『予想できない』という回答が多いことが挙げられると江崎氏は指摘する。従来と異なるということは、いままでのノウハウの蓄積や改善の積み上げでは十分に対応できないのでは、と心配されていることが結果から分かった」と語る。

業界幹部は“複雑さ”への挑戦をどう捉えているか  Source:IBM Global CEO Study 2010

 「この“複雑性”はどのように進んでいくのだろうか、という質問に対しても『すでに複雑性に直面している』という答えが7割以上を占め、さらに『今後5年間により大きな複雑性に直面する』との答えも同じく7割以上あった」(江崎氏)。

 しかし残念ながら、この複雑性の波に対して「準備ができている」との答えは47%しかないという結果で、過半数以上が予想される複雑性の波に対して準備ができていないと感じていることが分かったという。

 「直面した複雑性(73%)への対応能力の差をわれわれは『複雑性のギャップ』と呼び警鐘を鳴らしている。このギャップをいかに減らしていくかが業界幹部のチャレンジとなる」(江崎氏)。

複雑化加速のドライバーは何か?

 IBMでは、この複雑性を加速させるドライバーとして「テクノロジー」「情報」「新興経済&市場」「サステナビリティ」といった4つの要因を定義している。

複雑化を加速させる4つのドライバー

 「『 テクノロジー』は3つのI(Instrumented、Interconnected、Intelligent)が進化すること。これにより実世界のあらゆる『情報』が集約され、つながっていくが、それはいいことばかりではない。あらゆる『情報』がつながるということは、さらに複雑化するということ。今後の自動車産業にとっては、いかに『テクノロジー』や『情報』を使っていくかが大きなテーマになる」(江崎氏)。

 「BRICsなど『新興経済』の新しい購買層である“Global Middle Class(グローバル中流階級)”は、何億何十億というカタチでこれから10年の間に市場に加わってくる。これら“過去にデータのない購買層”の『購買パターンや市場動向』を予測することが重要になる。また、地球環境保全なくしてこれからの自動車業界に生き残りはないことからも、技術の進展にともなって『サステナビリティ』はさらに“複雑さ”を加速させるドライバーになることだろう」(江崎氏)。

 このような要因によって生まれる“複雑さ”の要素は以下の4つに分類できる。

【洗練された消費者】

クルマの購買層や価値観の変化により多様化した新しい消費者市場の台頭や従来の市場セグメントの衰退などにより、洗練された消費者を理解することは、ますます複雑になってきている。

【インテリジェント・
     ビークル】

グリーンカーや「つながる」クルマ(V2X)に対する需要が高まることで、クルマづくりや技術の複雑さがさらに加速される。

【ダイナミック
  オペレーション】

グローバル規模での迅速な実行能力を強化するために、企業のオペレーション戦略と地域特化のチャレンジという異なる複雑化への対応が求められる。

【相互依存した
   エコシステム】

業界の枠を越えたエコシステム全体での協業推進は、それぞれの業界の文化、製品サイクル、オペレーションモードの相違から、新たな複雑性をもたらす。


“複雑さ”は、自動車業界エコシステム全体に広がり、影響を与える

 「多くのCEOは『より顧客と近づくことが重要である』とし、ニーズを深く理解し、新しい考え方のサービスや製品の提供を重視している。一方、クルマの購買層や価値観の変化により、消費者の価値要素はますます断片化している。自動車メーカーは、消費者ニーズやマイクロセグメントの購買価値要素を深堀りして理解しなければならない」(江崎氏)。

 このような『洗練された消費者』をより深く理解するためには、どうしたらよいのだろうか?

 「情報の激増をいかに利益に変えるか。無尽蔵にあるデータから価値や洞察を導き出すことが重要になる。そして何よりも大事なのは、顧客視点に立ち戻ること。さらに2Wayコミュニケーションを駆使し、常に顧客と同じ視点・感覚を持つことが大切であると、調査では示唆している」(江崎氏)。

 そしてEVやハイブリッドカーといった「グリーンカー」、社会インフラと“つながる”クルマ(V2X)、『インテリジェント・ビークル』への対応が重要度を増すことで製品とサービスのポートフォリオも変わってくる。テクノロジーの進化、市場受容レベルの多様性など、クルマの「モノづくり」の複雑化は、すべての業界関連企業に影響を与えていくだろうと江崎氏は述べる。

「“複雑さ”は自動車業界エコシステム全体に広がり影響を与える」と警鐘を鳴らす江崎氏

 このような“複雑化”に対しての自動車業界への示唆として、「標準化と統合の重要性」「モジュラー化による“鮮度”の維持」「“Smarter Engineering”の活用」が挙げられる。

 「統合管理プロセスとアーキテクチャーの採用や、共通の規格仕様により容易なアップグレード、より容易な故障・修理を可能にすることが重要。また“プラグ&プレイ”機能や“アップグレード可能”な柔軟な形態での提供も必要になってくる。さらにモノづくり自身をもっとスマートにする“Smarter Engineering”的な発想も重要になる」(江崎氏)。

 また多くの自動車業界幹部は、グローバル対応における『ダイナミック・オペレーション』実施に当たって、オペレーション戦略の「単純化」と「実行スピード」が今後5年間の変革を実現するために必要な能力であると認識しているという。

 なぜなら、すでに高度なグローバル化が進んでいる自動車業界では、複雑化の高まりとその影響度は、地域ごとに異なっているためである。

 「例えば北米のCEOは『大きな政府』と『規制強化』を警戒しているし、中国のCEOは『グローバル思考』を持った次世代リーダーの育成に注力している。一方、日本のCEOは『経済力の成熟市場から新興市場へのシフト』が影響を及ぼすと考えている。そしてEUのCEOはほかの地域のCEOに比べて『人材不足』に対する懸念が最も少ないのも興味深い。地域ごとの特性を理解し、グローバルに統一されたビジョンと、地域ごとの戦略とのバランスをいかにとっていくかが大切になる」(江崎氏)。

複雑化の高まりとその影響度は、地域ごとに異なる  Source:IBM Global CEO Study 2010

 このような地域ごとの戦略の違いを加味したうえでグローバル規模で迅速に実行していく『ダイナミックオペレーション』を実現するために、顧客接点や組織などを「可能な限りシンプル化する」、分析技術などを使って「スピード感と柔軟性への意識を高める」「複雑性を管理する」、グローバルとローカルの最適な組み合わせによる「“Glocal” を目指す」といったステップが必要であると江崎氏は訴える。

 さらに、パートナーや消費者を巻きこんだエコシステムを妨げる異業種間の障壁は、消費者中心の視点の新たなコラボレーションである『相互依存するエコシステム』によって解決しなければならないと江崎氏は指摘。それを可能にする方法として、すべての参画企業で問題を共有したうえで役立つビジネスシナリオ、収益還元モデルを探求し、成果とリスクをシェアすることが求められるとし、そのためには「多様なグループを集める」「価値共有モデルを構築する」「共通のプラットフォームを構築・活用する」「業界エコシステム間の交差点を見つける」ことなどが重要と語った。

消費者中心の視点の新たなコラボレーション「相互依存するエコシステム」が必要

変化するモビリティー価値

 講演では近日発表予定の“モビリティーの進化(Advance Mobility)”インタビュー調査の一部も、“プレビュー”として紹介された。

 今回の調査では「変化するモビリティー価値」という視点で、全世界16カ国から100名を超える業界幹部へのインタビューを実施したという。特に今回は、テレマティクスやEV、カーシェアリングといった新興モビリティー企業が新たに加わり、従来の自動車産業との回答内容の違いも表れているのが興味深いところだ。

 調査によると、都市部で直面している“モビリティーの複雑化”には、多様な競合する勢力が影響を与えているようだ。

“モビリティーの複雑化”には多様な競合する勢力が影響を与えている

 「従来、自動車産業は経済発展の要であるとされており、クルマの個人所有への憧れなども含め『モータリゼーションを発展させる流れ』であった。だが今は、気候と環境汚染が自動車社会全体で問題視されていること、交通渋滞規制が都心間の生産性低下を招いていること、爆発的に増大する人口と都市発達が社会インフラを圧迫していることなどから、『無計画な拡大を制限する流れ』が、すでに始まっている」(江崎氏)。

求められるモビリティーという概念の再考

 しかし、新興モビリティー企業と比較すると、従来の自動車メーカーの新たなモビリティーへの対応ははるかに遅れており、いくつかの企業ではまったく対応がなされていない状況だという。

 「モビリティーという概念の再考が求められている。自動車メーカーはクルマ(車両)を作るだけでなく、テクノロジーを満載した価格競争力のあるインテリジェント・ビークルの継続的な開発を行わなければならない。その一方で、EVなどにおいても、従来どおりドライバーの安全・快適性を確保するソリューションを見出さなければならない。さらに“つながる”クルマの実現など、新たなソリューションが求められる中、異業種の参入による今までにないアライアンス戦略や、自動車販売金融会社とのアライアンス強化の必要性など、自動車業界にとって多くのチャレンジが必要な状況と言える。しかしながら、それは日常生活の中でよりスマートな移動手段を求める消費者に対するモビリティーソリューションの提供という観点で、非常に大きなビジネス機会とも言え、今後自動車業界で生き残るために不可欠な取り組みとなっていくだろう」(江崎氏)。



提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画
制作:@IT MONOist編集部
掲載内容有効期限:2010年12月17日

「IBM インダストリアル・フォーラム
京都 2010」 レポート記事 INDEX

・ 7つのプラットフォームが企業のグローバル化を現実にする (日本IBM 取締役専務執行役員 ポール与那嶺氏)
・ 2020年自動車業界の将来展望 続編 〜“複雑さの解消”の重要性への示唆〜 (日本IBM 自動車産業ビジネス開発 部長 江崎 智行氏)
・ 地域・企業・市民による北九州市スマートシティ構想の挑戦 (新日本製鐵 八幡製作所 総務部 開発企画グループ 部長 網岡 健司氏)
・ ERP導入による標準化と生産性の向上を実現 (川崎重工業 航空宇宙カンパニー 企画本部(ACE担当) 基幹職 笹俣 愼吾氏)
・ 24時間365日稼働し続けるシステムをSaaSで実現 (日本産業廃棄物処理振興センター 情報処理センター長 三本木 徹氏)
・ グローバル経営を実現する海外拠点データの一元集約と可視化 (旭化成クラレメディカル 経営統括総部 情報システム部 課長 上野 公志氏)

関連リンク

・ 日本IBM
・ IBM「製造/製造装置」ソリューション