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工作機械向け構想設計ツールでシミュレーション検証を実現

機能モデルの導入で
工作機械設計の開発プロセス全体を簡素化

シーメンスPLMソフトウェアが2010年9月に、工作・産業機械業界向けに発表したNXベースの構想設計用ツール「Mechatronics Concept Designer(MCD)」は、機能設計の手法を用いてメカトロニクス設計の効率化を可能にするばかりでなく、データの再利用を格段に容易にして、開発期間の短縮と品質向上を支援する。すでに日本でも工作機械のメーカーが採用に向けて検討を始めている同ツールの特徴のいくつかを紹介したい。

 Mechatronics Concept Designer(以下、MCD)は、機械の詳細設計に移る前段の構想設計用に開発されたツールである。設計チームはこれを用いて、開発プロセスの上流で、概念を3Dモデリング化し、システムのシミュレーション検証を実施して、その検証を基にコラボレーティブな詳細設計を展開できるようになる。設計の初期段階で技術や部品の選択を検討することは、目指す機械の品質性能の実現とコスト目標に適合しながら、開発プロセス全体を簡素化することに効果を挙げる。

機能モデルを共通言語に

 工作機械の設計に関わるデータ構造としては、機械設計のメカニカルなアセンブリ・ツリー構造、電気設計には通常10のライブラリによるレイアウトBOMのツリー構造、ソフトウェア設計には独自のソフトエア開発管理ツールの構造といった、いわば異なる言語構造が並立する。このために従来、エレ・メカ・ソフトの連携シミュレーションによるシステム検証が難しかった。

 これに対し、MCDは構想設計の段階で、各詳細設計領域間の共通言語、あるいはメカトロニクスの基本要素として機能モデルを確立し、詳細設計領域の間のリンクとして活用する。例えば機能モデルは、工作機械の自動ツールチェンジャ(ATC)のアクチュエータ動作に関わる機械設計のデータを電気設計と連携させ、ソフトウェアによる制動のためのデータとあわせてリンク構成ができる。この機能モデルを共通言語とするメカトロニクス開発プラットフォーム上で、開発初期のモデリングとシミュレーション検証が可能になる。

 加えて、機能モデルは要求管理ともリンクできる。それによって、顧客の要求事項をエレ・メカ・ソフトウェアの詳細設計にまで跡付けるためのトレーサビリティが確保できる。また要求事項に変更が加われば、変更が及ぼす設計全体への影響を細部に至るまで直ちに確認できる。

シミュレーションにゲームエンジン技術を活用

 今日のビデオゲームは、対象物の挙動を重力や衝突など力学的原理に基づいて実際に高速演算処理している。MCDでは、構想設計の段階でこのコンピュータゲーム技術をモデリングとシミュレーションにフル活用する。このために、NVIDIAのゲームエンジンPhysXをベースに、PhysX SKD(ソフトウェア開発キット)を使用して産業用シミュレーション用途に特化した物理エンジンを開発し実装している。

 その物理エンジンのパラメータには、重力のほかに、摩擦、衝突、イナーシャなど静的/動的物理要素を含む。その一方で温度、湿度、空力抵抗は含んでいない。またすべて対象物は弾性をもたない完全剛性体として規定されている。

 このエンジンの第一の利点は、インターラクティブ性。シミュレーションを開始後、マウス操作で対象物に力を加えるなどして、機械のデジタル・モデルを直接操作できる。これにより、シミュレーションしながらさまざまな設計構想を試すことが可能となり、それぞれの効果を即座に検証できる。

コンベヤとアーム・ロボット間のキネマティック連携動作の検証画面
コンベヤとアーム・ロボット間のキネマティック連携動作の検証画面
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 第二の利点は、モデリングが容易であること。詳細なパラメータを指定する必要がなく、シミュレーション操作もプレイボタン1つで、システムが直ちにシミュレーション動作を開始する。

 これを用いて例えば、積み木のような単純な仮想立体モデルを用いながら、重力をもたせた固体対象物の材料の摩擦係数などを「物理ナビゲータ」で変更しながら落下、滑動、転倒、衝突などの挙動をシミュレーション検証したり、印刷機など産業機械に必要となる複数軸とカムの挙動設定による動作の同期性を検証したりできる。

 また、センサ・アクチュエータを設定したイベント・ベースによるコンベヤとアーム・ロボット間のキネマティック連携動作の検証、あるいはガントチャートに表示される「シーケンス・エディタ」の設定を通じて大規模なメカニカル・アセンブルモデルをインポートしたイベント・ベース、タイム・ベースの挙動検証など、主として部品相互間の連携やシステム全体の挙動をいずれも数少ない手順で検証できる。

 メカトロニクス開発プラットフォームによる、機械的、電気的かつプログラム要素が絡む対象物の挙動や物理的動作を、試作機や実機試験よりもはるかに上流の工程で検討できることになる。

顧客の要求事項を詳細設計までトレーシング

 MCDは「機能ナビゲータ」を備えるが、この「機能ナビゲータ」はPLMシステムのTeamcenterと相互連携している。Teamcenterはまず、その「要件管理マネジャ」において、要件の階層構造を管理する。この階層構造は通常、Microsoft Office Word文書をインポートし、構文の章、節の構造に即して、要件内容を階層化したアイテムの構造として生成する。

 また、MCDの「機能ナビゲータ」による機能的分解は、ドイツ工作機械工業会(VDW)が提唱する技術仕様に基づき、機械の機能すべてをサブ機能に分解する。例えば、機械の主要な機能ブロックをツールのX?Yテーブル位置決めと補助的稼働部品に分解する。さらにX?Yテーブル位置決めをX単軸方向位置決めとY単軸方向位置決めに分解する。このようにしてステップバイステップで対象物の機能をツリー状の階層構造に細かく分解していく。

 この「機能ナビゲータ」を通じて、要件のツリー階層と、機能のツリー階層をTeamcenter 内で簡単な操作によってひもづけることにより、機能部品ごとに、それぞれの要件内容まで遡って確かめることができる。顧客の要件事項と機能部品間のトレーサビリティを実現したことは、MCDがもたらすシステムエンジニアリングの大きな成果といえる。

機能ユニットによるデータ再利用

 過去に実機に採用されて実証済みの部品データを再利用するのは、品質および開発コスト両面から有効であるが、今回開発された機能ユニット(インテリジェント・オブジェクト)は、データの再利用に関しても従来のレベルとは格段の使いやすさを実現する。MCDで特定の機能部品を再利用するには、「再利用ライブラリ」を開き、ライブラリ内の部品ファイルから機能ユニットを取り込むことができる。その部品を3Dモデリング画面にドラグインすると、その部品の物理/キネマティックス、3Dデータ、機能、センサ・アクチュエータ、カム/ギア、操作情報がひとくくりとなって即座に再利用が可能となる。

工作機械の詳細設計データをMCDに戻してシステム機能の再検証ができる
工作機械の詳細設計データをMCDに戻してシステム機能の再検証ができる
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 また、同一部品の再利用にとどまらず、3DモデリングのNXのシンクロナス・テクノロジを活用してモデリングデザインを一部変更したり、MCDの「シーケンス・エディタ」を用いて動作する順番を入れ替えるなどの変更を加えながら、シミュレーション検証を手軽に繰り返すことができる。

◆◇◆

 工作機械開発のプロセスには、大変多くの人が関わる。そしてその作業結果は、それぞれの分野を越えて受け渡されなくてはならない。だがこれまでは各分野での共通言語が存在しなかったため、情報共有に多くの時間を費やすことになり、ワークフローやデザイン検証が遅れ、問題点を早期に発見することが困難だった。こうした問題を解決するために生まれたMCDは、工作機械設計の世界に革命を起こすソリューションになるかもしれない。


提供:シーメンス プロダクトライフサイクルマネジメント ソフトウェアJP株式会社
アイティメディア営業企画
制作:@IT MONOist編集部
掲載内容有効期限:2011年01月31日