電子機器 イベントレポート

電子機器 イベントレポート(5)

太陽電池産業は金融危機なんていってられない

上口 翔子 @IT MONOist編集部 2008/10/30

薄膜化へのシフトは判断ミス!? 半導体ウォッチでおなじみの豊崎 禎久氏(ジェイスター)が『太陽電池を輝かせる製造技術〜究極のエコ技術の現在と未来〜』の中で10年後を見越した今後の太陽電池産業について講演。国内競争力の低下が進む日本の太陽電池産業はいかにして生き残るのか、講演内容を基にお伝えする。

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 「2013年、すべての日本企業が太陽電池シェアにおいて世界トップ10外になるだろう。原材料であるシリコン不足解消とともに中国を中心とするアジア勢が量産化に乗り出し、変換効率の高い多結晶シリコン太陽電池が主流となる」――太陽電池産業が世界的に注目される中、半導体アナリストの豊崎 禎久氏(ジェイスター)は今後の日本太陽電池産業についてこのように言及した。

 本稿は2008年10月2日、都内で開催された第21回テクニカルセミナー『太陽電池を輝かせる製造技術〜究極のエコ技術の現在と未来〜』における豊崎氏と、2008年10月22日都内で行われた『日独産業フォーラム』での小池 百合子衆議院議員による講演内容を基にお届けする。


シャープの首位転落から始まった判断ミス

 早くから太陽電池市場を育成してきた日本企業だが、PV News(太陽電池シェアデータで最も高精度といわれる米サイト)による2007年の太陽電池世界シェアランキングを見ると、企業別では昨年まで1位のシャープが2位、次いで京セラが4位、三洋電機が6位。地域別のシェアで見ても欧州を追う状況となっている。

資料1 2007年太陽電池生産シェア(出典:PV Newsのデータを基にジェイスターが作成)
左が地域別、右が企業別のランキング

 一方で、世界シェア1位のQ-Cells(独)は1999年に設立された新興企業にもかかわらず、設立後わずか6年で世界シェア2位へ躍り出た(2006年の生産量は1位がシャープ、2位がQ-Cells)。3位のSuntech Power(中国)も2001年に設立された新興企業であり、両者ともここ数年で急速に生産量を伸ばしている。豊崎氏は2008年8月のSuntech Powerによる日本のMSK買収について挙げ「実はSuntech Power自身はまだ太陽電池を開発するための基礎的な技術は足りていない。M&Aを早急に進めることで日本が持つ太陽電池のノウハウ、技術を補完している」と述べ、こうしたアジア企業が今後さらにシェアを拡大してくると予測した。

 2006年まで生産量1位だったシャープがそのポジションを奪われた理由は原材料のシリコン調達ミスにあると豊崎氏はいう。世界中でシリコンの需要が増大した際、日本企業は情報分析で出遅れた。そしてシリコンの価格は高騰、日本企業は十分な量のシリコンを確保できず生産量が低下してしまったのである。

 しかし豊崎氏が危惧(きぐ)する問題はここではない。「シリコンはむしろ今後余る状況になる、そのときに変換効率の高い太陽電池が作れるかどうか」が重要だという。

 「日本企業はいま、シリコン調達の失敗を薄膜化技術で補おうという安易な方向へ進んでいる。しかし私どもの需要予測では今後2、3年でシリコン不足は完全に解消される。発電効率の面から考えるとやはり結晶系で行くべきである」(豊崎氏)

資料2 太陽電池向けシリコンの需要予測(出典:豊崎氏の発表資料を基に作成)
注:CAGA(年平均成長率)

 資料2はシリコン製造企業各社の発表内容からジェイスターが作成した太陽電池向けシリコンの需要予測である。豊崎氏は「半導体向けシリコンの使用量は成熟期にあり、今後はさほど変化しない。メモリに関しても作れば作るだけ大赤字という状況で、半導体業界はこれからメモリ企業を含めた再編時代になるだろう。そのとき重要が高まるのが太陽電池向けシリコンであり、だから日本以外のシリコンメーカー各社はいま太陽電池向けシリコンの大増産を掛けている(資料3を参照)。一時は不足するシリコンの供給も2011年には完全に解消する」と述べ、シャープをはじめとする1GWクラスの薄膜太陽電池という戦略は「まったくの逆読みである」とした。

資料3 世界の多結晶シリコン生産計画(出典:豊崎氏の発表資料を基に作成)

 また、台湾では中環や緑能など多くの企業が薄膜太陽電池を主力にしている点について豊崎氏は「いまは薄膜への参入が増えているが、実は台湾の自国政策としては多結晶シリコンを押している。日本企業はとにかく薄膜への参入を急いでしまっている」としている。

関連情報  
シャープ、薄膜太陽電池の量産・出荷を開始(IP NEXTニュースより)
薄膜太陽電池元年、各社が参入(NNA.ASIAより)
シリコン供給不足は緩和へ、太陽電池市場で結晶系と薄膜系の力関係が変わる(EETIMES JAPANより)

シリコン確保にひそむ落とし穴

 大手メーカーを中心に急増産が進められているシリコンウエハー。半導体はもちろん太陽電池開発には欠かせないものだが、実はそのシリコンの大本の材料であるケイ石はほとんどが中国から得られているという。つまり原材料のケイ石をいかに中国から調達するかが重要というわけだ。中国はシリコンの自国生産を開始しており、韓国のサムスンやヒュンダイといった財閥グループが参入しケイ石の確保を進めている。日本については「非常に交渉力がない企業群が集まっている。実質的に買い負けていくだろう」――豊崎氏が2013年に日本が世界シェアトップ10外になるという根拠はここにあった。


  >>小池百合子衆議院議員が述べる、太陽電池産業に対する日本政府の取り組みとは?


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