電子機器 イベントレポート

電子機器 イベントレポート(16)

日本は太陽電池産業で
エネルギーの輸入国から輸出国に

上口 翔子 @IT MONOist編集部 2009/6/19

液晶や半導体、太陽電池の製造装置を製造・販売するアプライド マテリアルズは2009年6月2日、米国本社よりCEOのマイケル・スプリンター氏を招き、記者懇談会を開催。スプリンター氏は日本の太陽電池産業にエールを送った。本稿では、懇談会の内容を要約してお伝えする。

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 2008年9月に日本政府が打ち出した太陽電池設置に関する経済政策を封切りに、日本では国、地方自治体から次々と助成金制度が開始され、自宅や学校の屋根などに太陽電池を設置する動きが活性化している。昨年までは、FIT(Feed in Tariff)制度のある欧州が太陽電池産業の大きな市場だととらえられていたが、いまでは世界の太陽電池メーカー各社がそろって日本市場に期待を寄せているほどだ。

 太陽電池の製造装置メーカーとして知られるアプライド マテリアルズは2009年6月2日、米国本社よりCEOのマイケル・スプリンター氏を迎え、記者懇談会を開催。日本の太陽電池市場に向けた同社の活動と、日本太陽電池産業へのエールを示した。

 日本は土地が狭く、欧州などに比べると日照時間が少ない。よってどちらかといえば、太陽電池の設置場所として好立地ではない。しかし、日本が得意とする半導体の製造技術は太陽電池と親和性が高く、太陽電池製造に流用できる製造装置が揃った企業も多い。またこれまで太陽電池産業を先進して引っ張ってきたのも日本企業だ(2007年度世界太陽電池生産量2位のシャープは30年以上前に世界初の太陽光パネルを商品化し、製造を行っていた)。

 「日本は太陽電池の可能性を先進するリーダーであり、今後はエネルギーの輸入国から輸出国になるべきだ」――スプリンター氏は記者懇談会の中でこのような言葉を幾度も述べた。

今後高まるアジアを中心としたエネルギーニーズに対し、
日本は重要な役割を果たす

 今日、日本は世界のどの国よりも多くの太陽電池を生産している。同時に、冒頭述べたように日本はいま非常に大きな太陽電池市場を形成しつつあるのも事実だ。最近政府が打ち出した政策によると、2020年までに国内太陽光発電の規模を20倍にするという。

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アプライド マテリアルズ CEO マイケル・スプリンター(Michel R.Splinter)氏

 また、このように引き続き太陽電池産業の先進国であり続けると同時に、世界のさまざまな環境問題、社会問題に貢献していく役割も求められている。 例えば現在、アジアの経済は急激に成長している。このままの成長を遂げていけば、アジアにおける電力需要は2030年までにはいまの2倍になる見通しだ。

 よって、どうしても太陽光、風力、あるいは原子力といったような、代替エネルギー源が必要になる。今日における再生可能エネルギーは、全体のわずか2%の発電しかしていない。いまだにこの分野においては化石燃料が支配的なエネルギー源となっている。もしいま何もせずにいて成長がこのままの推移で伸びていくと、今後50年のうちに世界全体のCO2発生量は現在の2倍になってしまう。また、アジアの経済成長率が現在のまま維持されていくと、2030年までには、アジアから発生するCO2の排出量は、全体の50%以上になるともいわれている。

 このような状況の中、日本はアジアで、再生可能エネルギーの開発と導入のリーダーとなるべきだ、とスプリンター氏は語る。

 現在、化石燃料の価格高騰やCO2の影響と考えられる気候変動に関する脅威などが、再生可能エネルギーへのシフトを促す刺激となっている。石炭や天然ガスの価格も、世界経済が回復すると今後は上昇する可能性がある。エネルギー価格の高騰は、電力料金にも影響する。スプリンター氏によると、その傾向はすでにアメリカで顕著に現れているという。

 古くからエネルギー源を輸入に依存してきた日本は、これから先、化石燃料に代わる安全安価な代替エネルギーを開発しなければならないが、「そのためには、政府の果たす役割が非常に大きい」とスプリンター氏は述べる。実際に来日する数日前にはスプリンター氏自身も米国のオバマ大統領と面談し、太陽電池導入を促進するための具体的な政策について、さまざまな議論を行ってきたという。

太陽電池産業におけるアプライド マテリアルズの役割

 アプライド マテリアルズは、現在世界にある15社の結晶系太陽電池パネルの企業のうち、13社に製造装置を導入しているという。薄膜系のパネルについても、SunFabという新しい製造装置の導入を進めている。 SunFabを使用している企業は、すでに25万台の太陽電池パネルを生産し、現在は年間で数百メガワットの生産量だが、スプリンター氏はそれが今後ギガワットレベルに達すると予測。1ワット当たりコストが低下し、太陽電池の導入はますます加速されるとしている。

 目標は2020年までにCO2の排出量を15%、2050年までには50%削減すること。また、太陽光発電に関しては、2030年までに40倍に増やしていく。そして、太陽光発電のシステム価格を今後3〜5年の間に50%下げていくことが同社のビジョンだ。 そのためには日本の迅速な行動も求められている。短期的なターゲット、目標を立て、電力各社が早い段階で太陽光ならびにそのほかの再生可能エネルギーを導入するようなインフラを作り、措置作りをしたいという。

 もちろんこれは簡単なことではない。しかしこれから先、本当の意味でクリーンなエネルギー社会を達成するためには、そしてそのために世界を動かすには、大胆な政策、リーダーシップが必要とされている。

最後に

 エネルギーと環境の問題は、現代における大きな社会問題だ。 よっていまを生きる私達が取り組まなければならない優先課題だといえる。

 スプリンター氏は最後に、「困難な課題にチャレンジする日本人の気質の中にこうした課題に対応するための答えがあるはずだ。太陽電池は日本にとって大きなチャンスをもたらす。そして今後さらに発展していくアジアならびにそのほかの世代の成長に寄与するチャンスを、日本がもたらしてくれると期待している」と述べ、懇談会は終了した。

 なお、同社は2009年6月24〜26日、幕張メッセで開催される「PVJapan 2009」に出展する。国内外の太陽電池関連企業および情報が集うイベントに、足を運んでみてはいかがだろうか。



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