ARM Forum

電子機器 イベントレポート(26)ARM Forum 2010

次の10年に向け一段上のステージに入ったARM

石田 己津人  2010/11/29

2010年11月に都内で開催された「ARM Forum 2010」において、ARMは「2020年でARMコアの累計出荷1000億個以上」という目標を打ち上げた。MCP市場でARMの存在感はますます強まりそうだ。(編集部)

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 2010年11月に都内で開催された「ARM Forum 2010」で開幕のあいさつを行ったARM日本法人の社長、西嶋 貴史氏は、ARMコアの出荷推移グラフを示しながら誇らしげに語った。「ARMコアの年間出荷量が15億個だった2005年、2010年に45億個を目指すと述べたら、人にアレコレといわれたが、現実は、直近4四半期(2009年第4四半期〜2010年第3四半期)で55億個を達成している」。


画像1 ARM日本法人社長の西嶋 貴史氏

 2005年といえば、「ARMv7アーキテクチャ」が発表された年であり、前後して、リアルタイム制御向けの「Cortex-R4」、アプリケーションプロセッサ向けの「Cortex-A8」、MCU向けの「Cortex-M3」がデビューしている。それらがいまや各セグメントで隆盛を極めている。ARMの急激な躍進もうなずける。

ARMが見据える巨大な市場機会

 
  画像2 ARMのCOO(最高執行責任者)グラハム・バッド氏

 続いてARMのCOO(最高執行責任者)グラハム・バッド氏が「The Future is in Your Hands」と題して基調講演を行った。同氏は冒頭、「2010年の段階でARMコアの累計出荷量は200億個以上、それが2020年には1000億個以上になる」と語った。「1000億個以上」という数字にオッと思われるかもしれないが、計算してみれば、年率7%で出荷量を伸ばしていけば達成できる。高い確率で実現される数字といえるだろう。


図1 ARMコアの出荷量推移を示すグラフ。2020年には累計出荷で1000億個以上を見込む

 バッド氏はARMの「Huge Opportunity(巨大な機会)」を示すため、各デバイス分野で予想される2014年段階の最大有効市場を紹介した。

 モバイル44.5億台、モバイルコンピューティング8億台、車載21億個、ネットワーク装置などのエンタープライズ20億台、ホーム9億台、組み込み165億個……。MPC市場でARMのシェアは「2009年で26%」というから、需要見込みに掛け合わせれば、約70億台にARMが搭載されることになる。

ARMの強さを高める4つのポイント

 バッド氏は4つのポイントからARMの優位性が続くとした。それは(1)拡張性の高いアーキテクチャ(2)重要性が増すセキュリティ・信頼性(3)MCUへの急速な適用(4)パートナー/コミュニティとの協業強化、である。

 (1)の拡張性の高いアーキテクチャでいう「拡張性」とは、1つのデバイス種で家庭向けから事業者向けまで、同じARMコアを適用できるという意味である。Cortex-Aシリーズでいえば、家庭向けのフェムトセルやルータならCortex-A5、ネットワーク事業者向けのWiMAX基地局やコアルータなら最新のCortex-A15というわけだ。さらに、「異なるデバイス種間でもソフトウェア資産の再利用が進み、開発・保守しなければならないプラットフォームの種類を減らせる」(バッド氏)。

 (2)のセキュリティ・信頼性について、バッド氏は「Next“Big Thing”」と称した。eコマースを行う家庭用デバイスはもとより、各分野のデバイスで共通して重要性が増している課題とみている。その点、ARMではアクセス制御機構向けシステムIP「TrustZone」が2004年から提供されている。TrustZoneでは、1つのCPUコア内に特殊モードでのみで動作する“セキュア領域”を仮想的に設け、そこから暗号鍵やID情報にアクセスする。TrustZoneはTexas Instruments(TI)の「OMAP」などにも採用され、ARMはセキュリティ・信頼性で一日の長がありそうだ。

 最近のARMで目覚ましい動きといえば、Cortex-Mシリーズが担う(3)のMCUへの適用だろう。国内の大手MCUベンダも雪崩を打ってARM採用に動いている。バッド氏は「主力のCortex-M3で35社以上、2009年に発表した省電力、低コストのCortex-M0でもすでに20社以上のライセンシーが出ている」と打ち明けた。Cortex-Mを採用するMCUのためのハードウェア抽象化層「CMSIS(Cortex Microcontroller Software Interface Standard)」によるMCUベンダとの協調も進んでいるようだ。

 バッド氏は、ARMが(4)のパートナー/コミュニティとの協業にさらに力を入れていくことも表明した。700社以上(この4年間で倍増)が参加するARMのサポートコミュニティ「The ARM Connected Community」、ARMベースのAndroid開発を支援する「Solution Center Android」、さらに、Linuxベースのモバイル端末の開発環境を支援するため、ARMがIBMやSamsungなどと立ち上げた非営利団体「Linaro」など、プログラムは多彩である。「コミュニティスタンダードは非競争領域での開発負担を減らし、革新を強化する」という考えなのだ。

>>次ページでは、Cortex-A15について解説!


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