デジタル技術の仕組みと傾向

知って得するデジタル技術の仕組みと傾向(2)

iPhoneでマルチタッチができるのはなぜ?

上口 翔子 @IT MONOist編集部 2009/5/13

本連載は、ITmedia News@IT MONOistの共同でお届けする、知って得するデジタル技術講座です。デジタル家電が好きなのに機械音痴な“乙女ちゃん”の疑問に、理系男子“ムサシくん”が、最新トレンド技術の仕組みと傾向を交えて分かりやすく解説します。(編集部)

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はじめに
 

iPhoneユーザーの乙女ちゃんとWindows Mobileユーザーのムサシくん。今回は、そんな2人のデバイス(スマートフォン)にも搭載されている、タッチパネルの仕組みについて解説します。


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■登場人物の紹介
乙女
文系女子
デジタル製品に興味はあるが、細かいスペックの話をされるとよく分からない。結局、デザイン重視で選びがちになるが、どうせ買うなら、きちんと製品の性能を理解して自分に合った良い物を買いたいという思いがある
ムサシ
理系男子
自称デジタル人間。スケジュール管理に紙なんて論外。デジタル製品のことなら、細かいICの隅々まで、何でもこい。基本的には物静かだが、得意分野となると熱く語り始める。女の子に「すごい!」といわれると、やる気が出る

タッチパネルの種類と用途

 タッチパネルの種類は大きく分けて5つあります。主に携帯電話やPDAやカーナビなどの小・中型機器に搭載されている抵抗膜方式と静電容量方式。専用ペンを使用するタブレットPC向けの電磁誘導方式。そして、POSやATMなどの業務機器やFA機器など産業用途の大型機器に採用されている超音波表面弾性波方式と赤外線走査方式です。今回は抵抗膜方式と静電容量方式について解説します。

表 タッチパネルの種類と特徴(タッチパネル研究所の資料を基に作成)
__ 抵抗膜方式 静電容量方式 電磁誘導方式 超音波表面弾性波方式 赤外線走査方式
動作原理 ガラス面、フィルム面に電圧を加え、タッチ部の導通による押された位置検出を行う タッチパネルの表面全体に電界を形成し、タッチした部分の表面電荷の変化をとらえて位置検出を行う 磁界を発生する特別なペンの電磁エネルギーにより、ペンの位置を検出する タッチパネル全体に表面弾性波を与え、タッチ部で吸収される弾性波をとらえ、位置を検出する 表示パネルの表面周囲の縦・横方向にLED発光源、受光源を対で設け、光が遮られた箇所をタッチされた位置として検出する
長所 ペン、手袋で操作ができる/価格が安い/文字入力ができる ほこり・水に強い/応答速度が速い/高分解能 耐久性に優れる/光透過率が100%/誤作動が少ない 耐久性に優れる/光透過率90%/大きなサイズの製造が可能 ほこり・水に強い/ペン、手袋で操作できる/光透過率100%/耐久性に優れる
短所 衝撃に弱い/寿命が短い/光透過率が70〜90%程度 ペン、手袋で操作できない/光透過率70〜90%/文字入力できない 専用ペンのみでの操作 ほこり・水に弱い/ペン、手袋で操作できない 分解能が低い/開発費が高い
主な用途 PDA/カーナビ/スマートフォン・携帯電話 スマートフォン・携帯電話/POS タブレットPC/プリクラ端末 POS/ATM/販売機器/キオスク端末 ATM/キオスク端末/FA機器/販売機


タッチパネルにもいろいろな種類があるんだねぇ。

そうだね。あと、小型機器向けのタッチパネルっていうと、iPhoneのようにマルチタッチ(2点以上の多点検出)ができる静電容量方式(注)のものを思い浮かべるかもしれないけど、実はタッチパネルの方式別搭載シェア(2009年5月現在)を見ると、全体の約90%は抵抗膜方式が占めているんだよ。
(注)厳密にいうと、マルチタッチができるのは静電容量方式の中の投影型(Project Capacitive)のものになります


へぇ〜。そういえばムサシくんのWindows mobileはペンを使った文字入力ができるけど、マルチタッチはできなかったよね。どうして?

抵抗膜方式だからね。構造上、マルチタッチは難しいんだ。この辺も含めて説明するよ。


抵抗膜方式の仕組み

 抵抗膜方式のタッチパネルは、指やペンなどで押された場所の位置座標を電圧で読み取ることで文字入力やスイッチの機能を実現しています。構造は2枚のフィルム(素材はプラスチックまたはガラス)で透明導電膜(ITO)を挟むというシンプルなもので、“コストが低く製造しやすい”“位置検出がしやすい”といった利点があります。手袋をした状態でも認識され、漢字を含む文字入力もできるなど、幅広い用途に対応します。

図1 抵抗膜方式の構造

位置検出の仕組み

 上下に配置したフィルムとガラスには、それぞれ、横方向と上下方向に電極が印刷されています。フィルム側には、右側と左側に電極があり、その間に電圧をかけると横方向に、電圧勾配ができます。ガラス側の電極からその電圧を読み取ることで横方向の位置が分かります。ガラスには、上側と下側に電極があり、その間に電圧をかけると縦方向に電圧勾配ができ、フィルム側から電圧を読み取ります。これらを1秒間に200回程度繰り返すことにより、位置を特定します。ただしこの方式は、サイズが大きくなるほどフィルムとガラスのサイズ変化の差が増大する(注)ため、2〜8インチほどの小型機器向けを主流に製造されています(最近では、20インチ以上のものも登場してきている)。

(注)抵抗膜方式の素材はプラスチックとガラスの組み合わせだが、ガラスが湿度や温度の寸法変化が小さいのに対し、プラスチックは温度と湿度変化が大きいためサイズが大きくなればなるほど、差異が生じてしまい、たるみなどができてしまう

図2 抵抗膜方式の位置検出の仕組み


あと、抵抗膜方式はフィルムを使っている分、画面の透過率は静電容量方式など他の方式に比べると少し低いかな。

>>次ページ、静電容量方式の仕組みと今後のタッチパネル技術


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