@IT MONOistゼミナール・レポート(2)
〜ワイヤレスM2M市場を攻略する近道! 無線センサネットワーク基盤技術「ZigBee」講座〜

ZigBeeが日本で普及するために必要なこと

上口 翔子 @IT MONOist編集部 2009/12/25

2009年12月16日、MONOist編集部主催のゼミナール「ワイヤレスM2M市場を攻略する近道!無線センサネットワーク基盤技術『ZigBee』講座」が東京・大手町で開催された。本稿ではその中から、パネルディスカッションの模様をお伝えする。(編集部)

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 2009年12月16日、@IT MONOist編集部主催のゼミナール「ワイヤレスM2M市場を攻略する近道! 無線センサネットワーク基盤技術『ZigBee』講座」が東京・大手町で開催された。

 すでに公開している基調講演のレポート「注力市場から見るこれからのZigBee活用」に続き、今回は、ベンダセッションに登壇したディジ インターナショナルの江川 将峰氏とアジレント・テクノロジーの福島 理絵氏の講演内容、およびパネルディスカッションの模様をお伝えする。

 なお、同セミナーは以下のプログラムで進められた。※各項目をクリックすると該当のレポート記事をご覧頂けます。


日本でZigBeeは普及するか

 コーディネーターを務めた@IT MONOistの西坂 真人編集長は、テーマを何にしようかといろいろ悩んだ結果、個人的にも疑問に思っているという「はたして本当にZigBeeが日本で普及するのか」というテーマで、パネラーのZigBee SIGジャパン理事長 齋藤 和正氏やディジ インターナショナル 江川 将峰氏とともに議論を交わした。

西坂:長い間“次世代の近距離無線通信技術”といわれていたBluetoothも携帯電話の搭載で一気に普及したという経緯がありますが、ZigBeeが日本で普及するきっかけになるようなものって、何かありそうですか?

齋藤氏:基調講演の中で、どんどんターゲットアプリケーションが変わっているという話をしましたが、もともとはホームオートメーション、それが1番のターゲットでした。いまは皆さんご存知のようにスマートメータですから、ホームエリアネットワークが、ターゲットになります。中でも有力なのは、スマートメータと、リモコンです。

西坂:電気自動車(EV)はこれからかなり普及が見込まれますが、もしも各家庭に電気自動車が1〜2台置いたときに、それを家庭内の電源から充電しなくちゃいけないとなると、いまの電力事情ではきついんじゃないかなという見方もありますが、その辺にZigBeeが生かされるということはありますか?

齋藤氏:トリガーとしては後になるかなと考えていまして、いま、EV関係でも引きが良いのは、太陽電池、風力発電からの電源を安定させるための信号になるのが1つ。後はEVだと、スタンドや急速充電器が都市内に置かれるわけですから、その際に(車が入ってきたときに)通信をして、例えば車の中に音楽配信をしたり、近所スーパーマーケットの情報の配信したり、後は課金ですね。どのくらい電力を使ったかという。

アイティメディア @IT MONOist 編集長 西坂 真人

西坂:いずれにしても、チップの値段が約300〜400円と、まだまだ高いですよね。あらゆる機器にZigBeeのチップが入るようになるためには、もっと下がらなくちゃいけない。そのためのトリガーがリモコン(RF4CE)ではないかと思いますが、来年あたり具体的な動きはありますか?

齋藤氏:そうですね、RF4CEとして入るのは来年あたりかと思いますが、すでにソニーのブラビアなどにはIEEE802.15.4のチップが入っています。RF4CEになると何が良いかというと、結局周波数アジリティがあって安定したり、相互接続性があります。また、RF4CEに関してはソニー、パナソニック、サムスン、フィリップスの4社が世界の家電やリモコンに関して6〜7割占めているということで、その市場が広がっていけば、チップの価格も下がっていくんじゃないかなと見ています。

西坂:先日のEmbedded Technology展でZigBeeの取材をしているときもそういう話を聞きまして、だいたい来年の秋冬モデルから、遅くとも再来年のモデルには搭載していく予定のようですね。薄型テレビはずいぶんと多機能になって、なかなか競争力で他社との差別化が難しいところで、このZigBeeのリモコンを使って差別化をしていこうという動きがあれば、一気に普及する可能性は出てくる気がしますよね。

西坂:ディジ インターナショナルさんの方で、ZigBee普及のきっかけとなるような動きはありますか。ここまではコンシューマ系の話をしましたが、産業系の方ではどうでしょう?

江川氏:われわれの会社自体が、あまり家電製品を重要視していないというのもありますので、RF4CEがどうかというよりは、スマートグリッドが1番牽引していくものなのかなと期待しています。米国のオバマ大統領が国策としてスマートグリッドにかなり予算を費やしていますので、日本を前提に考えると、なかなか想像しにくいですが、やはり日本は電力供給のインフラが恵まれている方なので、海外での状況を考えると安定した電力供給ができない状況、それをいかに安定化させるかというところでモニタリング制御というのが必要になってきます。

 ただし日本企業がスマートグリッドに対して何もやっていないかというと、実際に日本の会社も動いています。ただ出荷先が北米であったり、南米であったり、東南アジアであったりという、要するに電力安定性の必要なところに対してすでにビジネスが動いている。いつ日本がスマートグリッドを本格的にやるのか、電源(電力)自体は安定されていますので、どちらかというと今回、鳩山総理が−25%、CO2削減を掲げているので、そことスマートグリッドがつながってくるのかなという期待がありますね。

西坂:最近の展示会では、環境・エコ・省電力というキーワードがかなり目立って注目されていましたが、スマートグリッドを含めて、この流れが省電力を売りにしているZigBeeにとってはかなり追い風になるんじゃないかなと感じています。江川さんは日本市場で実際にビジネスをやられていて、一方で本社はワールドワイドで展開していますので、日本と世界とのZigBee市場を比較できると思いますが、実際にはどうなんでしょうか?

江川氏:そうですね、日本でも事例は結構出てきています。ワイヤレスジャパンに初めて出したのが2006年。“使えるハードウェアがリリースしそうだ”とうたっていたのが、その頃でした。そしていま、約3年を費やした中で、実際採用の事例としては、いろいろな市場にありますね。

 スマートグリッドをはじめ、ホームセキュリティでもすでに活用しているお客様はいますし、ナースコールであったり、鉄道関係でも多くのアプリケーションに採用いただいています。しかし、なかなか皆さんの目にするようなアプリケーションではないというのが事実ですね。

西坂:Bluetoothの場合はコンシューマ製品で実際に一般の人が目に触れますが、ZigBeeに関しては、組み込み機器という目に見えない形で機能しているアプリでもあると思うので、なかなか私達が目にする機会がないのかもしれませんね。

西坂:斎藤さんの方でそういった事例とか聞いていますか?

ZigBee SIGジャパン 理事長 斎藤 和正氏

齋藤氏:エコに関しては、よくいわれる「ITでエコか、ITのエコか」という話ですけども、もともと、省電力をうたっているZigBeeですから、ITのエコはないですが、いまやはりお客さんの方でターゲットになっているものというのは、そういうエコ関係が多くて、例えば、先ほどいった太陽電池用の無線モニタなどがかなり大きく出てます。新聞などにも出ていますが、そういったところから、日本市場が立ち上がっていくかなと思いますね。

 あと、エコ関係ですと、例えば国の政策、総務省、経済産業省のプロジェクトがかなり立ち上がっていて、我われが加入させていただいている中でも、4つ5つは立ち上がっていますので、国の支援を受けて、立ち上がっていくということがあると思います。

西坂:国の支援という点でいえば、海外はスマートグリッドでZigBeeが平準化されれば、結局は原子力発電所を1基作らなくていいから、それだけ国としてもコストが下がるし、無用な建設費がかからないですよね。そういう取り組みはぜひ日本でもしてもらいたいな、というのが切に思いますね。

西坂:Bluetooth Low EnergyやZ-Waveなど、ZigBee以外にも似たような競合規格が最近話題になっていますが、そういった競合する技術と比べて、ZigBeeの優位性を教えてください。

齋藤氏:基本的には、狙っているターゲットは一緒ですので、どんどん似通ってくるというのが実際のところだと思います。少しずつ違うのは、やはり市場に出すタイミングだとか、後は相互接続性を重視するかしないか、そういったところだと思います。後はメッシュネットワークが組めるかとか、そういったところが違いとして挙げられますね。

 これはアライアンスの中でも一致している意見ですが、ZigBeeの場合は、北米でもマルチベンダで行っているということですので、供給面が安定しています。日本のメーカーさんはやはりその辺を心配されるので、そういった意味での優位性はあるのかなと見ています。その分、相互接続性の試験だとか複雑になったりお金が掛かったりとか、タイミングが遅れたりして市場投入のタイミングが遅れるといったデメリットもありますが、(供給面で)そういうメリットがあると思います。

ディジ インターナショナル セールス&マーケティング リージョンマネージャ 江川 将峰氏

西坂:最後に、Zigbeeが日本で普及するために必要な条件について、齋藤さんと江川さんそれぞれに伺いたいと思います。

齋藤氏:この話題については、社内(NECエンジニアリング)でもかなり検討をしまして、「技術的なブレークスルーポイントは何なのか」と。そして、私がここ2、3年で思っているのは、省電力化。あるいはバッテリーレスの技術、ここだと思っています。

 数の面では、家の中のスイッチ/リモコン/センサ、この3つはZigBee向きです。これらは今後普及していくLED照明も含めるとすごい数になると思います。

江川氏:齋藤さんもおっしゃっていましたが、低消費電力、省電力化というのは1つの大きなキーになっていくのかなと思いますね。後はやはり、米国のように政府主導の動きが欲しいですね。(鳩山政権がCO2などの日本の温暖化ガスを)マイナス25%を掲げてしまった以上、何かしらの政策を立てて、どこにどれくらいの予算でどういう方法で削減するのかをもう少し考えてもらうと、必然的にスマートグリッドにつながるはずです。そうなれば(電力供給が安定している)日本でも、グリーンやエコというキーワードで伸びていくのではないかなと思います。

西坂:逆に「日本で普及するためには」という視点ではなく、日本ならではの“高品質なモノづくり”を生かして、このZigBee規格で世界に勝負できるような可能性はありますか。

江川氏:あると思いますね、先ほども挙げたスマートメーターは日本メーカーでも作っていますし、それを米国に輸出しようとしています。製品自体のクオリティもあれば、サーバセンターを独自で用意される方が多いですから、そのサーバセンターのクオリティもそうですし、サービスに対するクオリティも重要です。クオリティというのは日本のモノづくりやサービスにおける要ですので、それを持ってすれば(ZigBeeの)市場は日本も立ち上がるでしょうし、日本企業も(その市場に)十分入り込める力があると思いますね。

齋藤氏:これも繰り返しになりますけども、やはり日本が先行していてZigBeeが使えそうな分野というと、太陽電池関係やEVですね。リチウムイオン電池を使ったEV関係は日本でも整備が進んでおり、いろいろなところで実証実験を行ってますが、そこが日本が先行している市場ですので、(そこにZigBeeが)うまく入れば、と思っています。



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