RFID2.0に向けたプラットフォームを提唱するNTTデータ

日本のRFID業界をけん引する人々(4)

RFID2.0に向けたプラットフォームを提唱するNTTデータ

柏木 恵子  2007/2/14

NTTデータは、2003年にマルエツと協力して食品流通分野における実証実験を実施するなど、早い時期からRFID関連事業に力を入れている。いわゆるメーカーではなくソフトウェア開発やシステムインテグレーションを本業とすることから、オープン化や共通プラットフォーム技術などにフォーカスして開発や検証を進めているのが特徴だ。現在はエバンジェリストとしての活動がメインであるという、ビジネスイノベーション本部ビジネス推進部課長の河西謙治氏に、最近の動向や今後の展開について伺った(編集部)

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強みを生かせるのは共通化のための技術開発

――この分野に携わるようになったきっかけは

河西 2003年ごろに事業戦略部という部署にいました。そこは、既存組織の選択と集中の判断と、新規ビジネスの創出をミッションとしていました。

 私は新規ビジネスの方を主に担当していました。当時は、ライフサイエンスとかグリッドコンピューティングなど8つのテーマが挙がっていましたが、私はその中でユビキタスコンピューティングを担当しました。

 ユビキタスコンピューティングといってしまうと、おサイフケータイといった身近なものからITS(高度道路交通システム)といった社会インフラのようなものまで、ものすごく概念が広くなってしまいます。

 当時のNTTデータの中で、未着手で、かつ将来性のあるユビキタスに属するテーマとは何かと模索していたときに、かねてから社内に蓄積されていた接触型・非接触型ICカード技術や、総務省による実証実験やユビキタスIDセンターへの参画など、すでに社内で取り組みが始まっていたRFIDに着目しました。

 一方で、その当時はいろいろな組織が別のベクトルを向いていて、統一的な方向性が欠けていました。そこで、2004年度に事業戦略部の中にユビキタス推進室を作り、NTTデータとしてのビジネスの方向付けするとともに、ある程度の予算を持って、既存のビジネスユニットのビジネス収支に影響を与えないように切り離す形で、効果の高い実証実験や技術開発に積極的に参画してもらい、技術や業務ノウハウの蓄積を推進することを目指しました。

河西謙治 ビジネスイノベーション本部 ビジネス推進部 課長

 少人数で全社の司令塔的な役割をミッションとしていたユビキタス推進室は、2006年度の初めにリアルな組織としてはいったん役割を終えたと位置付けました。それは、当初の目論みどおり、実証実験や商用システム開発を通じた多くのノウハウが各ビジネスユニットに蓄積され、各ビジネスユニットが自律的に対応すべきフェーズにきたと判断したからです。現在の私は、兼務という形で、このインタビューのような対外的な情報発信と、標準化団体などへの参画を通じた情報収集を社内にフィードバックする、といったミッションになっています。

――NTTデータが注力している事業分野は

河西 ユビキタス推進室が発足したときに、NTTデータの全社戦略として2004年12月6日にプレスリリースしたのが図1です。全体を、重点分野別のソリューション、ソリューションを支える共通基盤、セキュアなネットワークの3つのレイヤーに分け、関連する各組織がその取り組みの中で個々の箱を埋めていき、最終的にはソリューション体系として完成されます。現在進行形の取り組みです。

NTTデータが目指すユビキタスの形(画像をクリックすると拡大します)

 背景がブルーの部分は、共通機能としてのプラットフォームもしくはミドルウェアになります。どんなソリューションを提供するにしてもRFIDタグやセンサー、リーダ/ライタの端末管理、セキュリティ管理、ユーザー管理などは共通的な機能として必要となります。ソリューション側のアプリケーションを開発する際に、このような共通機能を切り出しミドルウェア化することにより、システム開発の効率化と短期化を企図しました。

 オレンジの部分は、NTTデータがRFID利用の当面の主領域になるだろうと予測し、ソリューション提供を優先すると位置付けた分野群です。現在は、生産、物流、流通、資産管理、セキュリティといったところが中心となっています。

 NTTデータはハードやデバイスを直接開発していませんし、それらをトライアルで使えるような生産ラインや物流倉庫といったフィールドも自社では持っていません。そこで、先導的な実証実験に参画させていただくという形でノウハウを蓄積しつつ、個別のシステム開発の練度を上げてきました。

 現在の当社の取り組みの特色としては、1つ目が「eコラボレーション」の実現に向けたものです。企業間で異なるベンダのミドルウェアやプラットフォームを使っていて、さらに異なるID体系であっても、連携して情報を共有するためプラットフォームの開発を行っています。

 2つ目は、コンテクスト・アウェアネスです。RFIDタグやセンサーが収集した情報に加えて、ロケーションやタイムスタンプなどの外部環境情報を総合的に判断して、何がどのような状況に変化していて、次にどのようなアクションを起こすのかを導き出すことを指します。

 例えば、スーパーマーケットでタグ付きのパスタをリーダ付きのカートに入れると、まだカートに入っていない、パスタに合う食材やワインのリコメンドとクーポン券を出すといった、RFIDリーダとタグを組み合わせてお客さんの行動を把握し、そこからフィードバックするというサービスが提供できるのではないかと考えています。

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コスト削減から新しい付加価値へのシフトが必要

――RFIDの利用周波数帯や標準化など、最近の技術的な動向について

河西 当社は自らチップやデバイスを作っているのではないので、利用周波数帯や標準についてはあくまでも利用する側の立場で、個別の案件ごとに「どれが向いているか」を選択しています。そのため、ユーザー目線で最新動向を追いかけています。

 一方、ソリューション提供者の立場として着目している技術動向としては、RFIDのハイブリッド化や複数の取り組みがなされている相互運用接続といった分野です。具体的には、RFIDタグと各種センサーを組み合わせた製品とか、ユビキタスIDとEPCといったコード体系をまたがる相互接続や情報の翻訳、インターフェイスの構築に関する実証実験などです。

 私の立場はNTTデータの中でも特殊だとお断りしておきますが、個人的な興味は、1〜2年のスパンでビジネスとして刈り取れるものよりも、将来的にNTTデータとして利を生かせるような技術動向に意図的にシフトしています。

 当社も参画した温度センサー付きRFIDタグを活用した生酒の実証実験でも、きちんと温度管理した商品を配送できることが物流業者の付加価値となるのはもちろんですが、店頭でも消費者に商品情報を提供して購買行動に結び付けられるかどうかまで視野に入れていました。繰り返しになりますが、こういったRFID+コンテクスト・アウェアネスやeコラボレーションのもたらす付加価値を、今後当社として差別化の源泉としていきたいと考えています。

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