RFIDで家電のライフサイクル管理を、家電電子タグコンソーシアム

日本のRFID業界をけん引する人々(5)

RFIDで家電のライフサイクル管理を、家電電子タグコンソーシアム

柏木 恵子  2007/5/14

家電電子タグコンソーシアムは、国内の家電メーカー各社が会員となって、2005年に家電製品の製品ライフサイクル管理における電子タグの利活用モデルの検討と国際標準化を推進する任意団体として設立されたものだ。その事務局であるみずほ情報総研の紀伊智顕氏に、コンソーシアム設立の経緯や役割、活動内容について伺った(編集部)

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3Rのためのツールとして始まった家電電子タグ

――家電に電子タグを使うというのは、いつごろから取り組みが始まったのですか

紀伊 家電業界の電子タグについての取り組みはかなり以前からあって、もともとはリユース・リデュース・リサイクルの3Rのためのツールとして使えないかということで検討が始まりました。当初は、製造からリサイクルまでを一貫して管理するツールがないということでクローズアップされてきたものです。

 家電製品には製造番号のシールが張ってありますが、10年、20年と月日がたつにつれて消えてしまうことがあります。すると、どこの会社の製品かということは分かっても、どのような原材料が使われているかなどの情報を検索するのが大変なのです。

 例えば、冷蔵庫だとフロンが使われているかどうかでリサイクルの場合の処理工程が変わってきます。電子タグに製造番号を格納しておけば、ライフサイクル全体を管理できるのではないかと考え、取り組み始めました。

 このような取り組みが2005年に家電電子タグコンソーシアムの設立につながりました。

家電電子タグコンソーシアムの運営体制

家電電子タグコンソーシアムが旗を振って、実証実験へ

――家電電子タグコンソーシアムのこれまでの取り組みは?

紀伊 智顕 コンサルティング部シニアマネジャー

紀伊 家電業界では、これまでにさまざまな実証実験を行いました。2002年から2003年にかけて行ったのは、電子タグの読み取りに関する技術検証です。

 電子タグの張り付け方には2つの方法があって、1つは外箱に張り付ける方法。主に流通における使われ方です。もう1つは製品本体に張り付ける方法。箱は捨てられてしまうことが多いので、製品本体に電子タグが張られていないと、修理やリサイクルに使えません。

 そうはいっても、当時は、どちらも本当に読めるのかということがよく分かっていなかったので、いろいろな周波数帯で箱や製品に付けて読めるかどうかを実験しました。

 周波数帯は、当時、使われていた135kHz、13.56MHz、2.45GHzの3つの周波数帯を試しました。その結果、「前者2つは到達距離が数十センチメートルだが、2.45GHzは1メートルも届くので有望だ、いや、2.45GHzは電波の指向性が強くて使いにくい」といったことが分かってきました。

 また、米国のウォルマートや米国防総省が使っているUHF帯についても、将来的に日本でも周波数帯が開放されることになり、UHF帯を使って実験した結果、有望であると期待を持ちました。

 しかし、電子タグが読めたからといってそれだけで何かが効率化されるわけではありません。電子タグを使うことで、実際にどのようなメリットがあるのかという検証をしたのが2004年です。

 このときの実験対象は、メーカーと量販店、物流を含めた動脈(メーカー工場から販売店まで)のサプライチェーンです。ネット上の共通基盤に情報を企業間で相互乗り入れすることにより、さまざまなプレーヤーが、入出荷検品、在庫管理、不良品などのトレーサビリティといったことに使えるなど、お互いにメリットがあるということを実証しました。

 また、実際に導入する場合の仕様についても話し合いました。電子タグにどのようなデータを入れるのか、張る位置はどうするかといったことを、業界できちんと詰めておかなければ使えないため、これらをまとめたものを2006年にガイドラインとして発表しました。

 なぜなら、2005年になって、本格的にウォルマートが物流管理に電子タグを運用し始めて、日本のメーカーも電子タグを付けて出荷せざるを得なくなってきたためです。ウォルマートだけではなく、欧州の仕様はこうだ、日本の仕様はこうだというようにバラバラの仕様で運用が始まったら、量販店は効率化できてもメーカーは納入先ごとに異なる使用のタグを貼らなくてはならなくなり、ものすごく非効率になります。それを防ぎたいということで、家電メーカーが集まって、家電業界で使うときの基本的なガイドラインをメーカー主体で作ったのです。

【関連リンク】
電子タグ運用標準化ガイドライン ver1.0 のダウンロード

ライフサイクル管理の概念を国際標準に提案

紀伊 コンソーシアムのもう1つの役割目的に国際標準化への取り組みがあります。ガイドラインでルールを作っても、それが日本の家電メーカーだけのローカルルールでは意味がないわけです。日本の量販店との連携はもちろんですが、家電メーカーはグローバルでビジネスをしているので、国際標準でないとあまり意味がありません。

 電子タグの世界の国際標準には、メーカー主体のISOとユーザー主体のEPCglobalの活動があります。ISOについては、日本の窓口であるJEITAを通して提案しています。EPCglobalは日用雑貨におけるサプライチェーンでの電子タグ利用が中心の活動でしたので、製品ライフサイクル管理のような概念はありませんでした。そこで、日本の家電メーカーが考えているような電子タグの使い方を標準として盛り込んでほしいという提案をしています。

 EPCglobalの中にいろいろなアクショングループがありますが、その中で家電のグループを作るという動きがあります。CEDG(コンシューマ・エレクトロニクス・ディスカッション・グループ)が2006年10月に東京で立ち上がって、12月にソウルで会合を行いました。次回は、2007年5月にオーストリアで予定されていて、どのような活動内容になるのかがほぼ固まり、10月に香港で予定されている会合がアクショングループとしての第1回の活動になるでしょう。

 そこでは日本のコンソーシアムメンバーを中心に、欧州やアジアのサプライヤやリテーラが参加し、どのような要求仕様を策定すべきかを話し合うことになるでしょう。

 ウォルマートの考え方と何が違うかというと、ウォルマートはメーカーに対して入荷検品や在庫管理のための電子タグを外側の箱に張ってほしいといっていますが、家電業界は基本的には製品本体に電子タグを張って、それを保守や修理に使っていく、つまりライフサイクル全体で利用することを考えている点です。概念がちょっと違うわけですね。

――メーカーが製品に電子タグを張るようになったら、物流で使っている電子タグはやめて、統一しようという動きなのでしょうか

紀伊 そこはまだ見えていないですね。製品本体に張って、果たして本当に物流現場で読めるのかどうかというところが問題になっています。

 実際の箱には、電源コードやリモコンといった付属品が同梱されています。そういうものと電子タグが重なると読めない。すると、製品に電子タグを張る位置と同梱物をどこに入れるかといった梱包の仕方を、全部検討する必要があります。

 これは、数年かかると思うんです。だから、短期的には製品と箱と別々の電子タグで、それが5年10年運用していくうちに、2つあると面倒だから張り方や同梱物の位置まで決めていこうとなるのか、あるいはやはり難しいから2枚でいこうとなるのか予測はつきません。

――今年2月にコンソーシアムが行った実証実験では保証書に電子タグを張っていましたね

紀伊 保証書に電子タグを張ったのは実験のための暫定的なもので、基本的には製品に張ります。ただ、製品に張るとしても大きく2つの議論があります。製品本体の表面に張るのか、もしくは基板に組み込んでしまうのか。

 それぞれ良い面と悪い面があって、外に張ればどこに電子タグがあるのか一目瞭然なので分かりやすいけれど、壊されたりはがされたりしやすい。逆に、製造工程の一環として基板などの製品に組み込むならば、製造後に張る場合と比べて余計なコストを削減できるかもしれないが、製品の外からではタグがどこに張られているのかわからないため読み取りが難しくなるかもしれない。

 さらに、デジタルカメラのような小さなものの場合、金属の塊なのに本当に基板に組み込んで読めるのかという話になります。電子タグの張り方は、製品によって変わるかもしれません。

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――海外の家電メーカーで同じようなことを検討されている例はありますか

紀伊 いや、ないと思いますね。ウォルマートがやっているのはメーカーから店舗までの物流での利用であり、われわれのように業界単位で製品ライフサイクル管理に使うというのは世界初だと思います。シャンプーとか食品みたいなものはウォルマートのモデルでいいけれど、飛行機や自動車、家電といった業界は、リサイクルも含めたライフサイクル全体管理になるはずです。その先鞭を、家電業界が付けるつもりです。


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