ARM、次世代組み込み機器向けGPU「Mali-T604」発表

高度なビジュアルコンピューティングを実現

ARM、次世代組み込み機器向けGPU「Mali-T604」発表

2010/11/11

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 ARMは2010年11月11日、同日から東京・品川で開催している「ARM Forum 2010」でグラフィックスプロセッサシリーズ「Mali」の新製品「Mali-T604」のプレス向け説明会を開催した。

 Mali-T604は、米国カリフォルニア州サンタクララで2010年11月10日(現地時間)に開催された「ARM Technology Conference 2010」で発表された次世代組み込み機器向けGPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)。同社パートナー向けにライセンス提供を開始しており、すでにMaliのライセンスを取得しているSamsungが最初のMali-T604採用パートナーになるという。


画像1 ARM日本法人社長の西嶋 貴史氏

 ARM日本法人社長の西嶋 貴史氏は説明会の冒頭で「現在さまざまな製品に、UIとしてグラフィックスが必須になっている。ARMは2007年から組み込みGPUとしてMaliを展開。今回紹介するMali-T604は、そのMaliの最上位製品となる。新しいアーキテクチャを採用し、グラフィックスだけでなくGPGPUと呼ばれる汎用コンピューティングにも使われていく製品」とMali-T604を紹介した。

 現行のMali製品に比べて最大5倍の性能と低消費電力を両立した次世代マルチコアGPUであるMali-T604は、組み込みプロセッサで市場をリードする同社が満を持して投入する期待の新製品だ。ARM メディアプロセシング部門 Head of Product Managementのスティーブ・スティール氏は、Mali-T604の開発背景を次のように語った。


画像2 ARM メディアプロセシング部門 Head of Product Managementのスティーブ・スティール氏

 「Mali-T604は、すでにリリースして好評を得ているMali-400、Mali-200の成功に続くGPU。Mali-400とMali-200はすでに30以上のライセンス契約を交わしている。(Mali-T604が掲げる)ビジュアルコンピューティングとは、ビジュアル(グラフィックス)とともに演算能力にも力を入れた製品ということを表している。昨今、高度なビジュアル処理を必要とする製品が増加し、グラフィックスのニーズはますます高まっている。単にピクセル数が増加しているだけでなく、そのピクセルの処理も複雑化している。コンテンツの複雑性は今後さらに増してくるだろう。一方で、ハンドヘルド機器の消費電力は(その平均値である)850mWに抑えなければいけない」(スティール氏)。


画像3 画面解像度は5倍以上、コンテンツ複雑度は10倍以上に増えている。つまりグラフィックス処理は50倍以上に増加している

 さらにスティール氏はMali-T604のような高性能グラフィックスの使い方として、テクスチャを演算で生成する「プロシージャルテクスチャ生成」、リアルとバーチャルの世界を融合する「AR(拡張現実)」、複数の画像でHD画像を生成する「HDR画像処理」などの実例を挙げた。

 「プロシージャルテクスチャ生成では、従来のようにテクスチャ情報をメモリからダウンロードする必要がないのでメモリ帯域幅を節約し消費電力を少なくできる。また画像合成により現実にはあり得ないような写真を携帯電話のようなハンドヘルド機器で創りだすことができるようにもなる」(スティール氏)。


画像4 高性能グラフィックスの使い方の例

 このようなビジュアルコンピューティングを組み込みプロセッサで実現するのには課題も多い。

 Mali-T604は、ARM独自手法によってメモリ帯域幅の消費を最大30%削減し、システムレベルの電力効率を大幅に高めている。また、ARMのキャッシュ・コヒーレント・インタコネクト(CCI-400)を採用し、ARM次世代プロセッサコア「Cortex-A15」とともにメモリ・コヒーレントなシステムを構成できるという。

 「ビジュアルコンピューティングを可能にするGPUのSoC設計をするときには、システム的な全体像を見ていくことが重要なほか、これらをクリアしたうえで消費電力をいかに下げるかが課題となる。低消費電力化にはメモリの帯域幅を小さくするわけだが、ここでコヒーレンシ(coherency)が重要になってくる。さらにソフトウェアの設計がしっかりしていないと全体最適化ができない。Mali-T604にはすでにプロダクションレディのソフトウェアスタックが用意されており、さまざまなAPIやOSにも対応。すぐに製品導入できる準備が整っている」(スティール氏)。

 Mali-T604のグラフィックスアーキテクチャでは、タイルベースのレンダリングが採用されている。グラフィックスデータをタイル単位に分割し、そのタスクをコアに渡すというタイルベースレンダリングは、分割によって効率を高めるため、組み込みグラフィックス用途において電力効率の高い設計が行えるという。「組み込み型のグラフィックスにはタイルベースのレンダリングが最適」(スティール氏)。

 またMali-T604はグラフィックス性能だけでなく、GPGPUのような汎用コンピューティングの分野もカバーできる性能を持つ。グラフィックス性能と高速演算を両立させるために採用したのが「トライパイプ・アーキテクチャ」だ。

 「トライパイプ・アーキテクチャはその名の通り3種類のパイプ構造からなる。汎用演算用のArithmetic Pipeline、グラフィックス用のTexturing Pipeline、グラフィックスおよびコンピューティング相互に対応するLoad/Store Pipelineといった3種類のパイプ構造が、高性能と柔軟性を持った設計を可能にし、GPGPUコンピューティングを実現する」(スティール氏)。


画像5 ビジュアルコンピューティング向けに設計されたMali-T604

 幅広いAPIをサポートしているのもMali-T604の特長だ。従来のMaliシリーズでサポートしていたOpenGL ES 2.0/OpenGL ES 2.0/OpenVG 1.1といったAPIに加えて、OpenCL 1.1やDirectXを新たにサポートした。OSもAndroid/Linux/Symbianと主要な組み込みOSをサポートする。

 「マルチコアでスケーラリビティを確保。1つの設計でローエンドからハイエンドまで対応できる。Mali-T604によってARMはこれからも業界のリーダーシップを継続できるだろう。今後もイノベーションを盛り込んだ新製品を12カ月ごとにリリースする。その詳細はいまは語れないが、常にアーキテクチャの効率を高めるというイノベーションの製品にしていく方針。Mali-T604に関しては、ファミリー展開を図る製品の第1弾なので、このアーキテクチャで今後の製品が展開していくことは間違いない」(スティール氏)。


動画1 発表会で紹介された“Mali-T604が実現する世界”のイメージ動画


画像6 Mali-T604のアーキテクチャ図

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(@IT MONOist編集部 西坂真人)

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