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どうしてこんなに
コミュニケーションが取れないのか?
前回の「組み込み業界のいま “至るところにギャップあり”」では、組み込み業界の機能不全問題は“コミュニケーション不足にある”と書いた。コミュニケーションを取るための時間が圧倒的に不足していると……。
――では、なぜこんなにも時間がないのだろうか?
「以前はもう少し余裕があった」と、中根さんはつぶやく。設計をとことん詰め、開発に時間を割き、納得のいくまでテストを繰り返して品質を作り込んでいたという。
しかし、いま、それがままならなくなっている。どうしてこんな事態になってしまったのか? 中根さんは、問題の根本として大きく以下の3つのキーワードを挙げた。
- スピード至上主義
- オーバースペック
- 硬直化しつつもろくなった組織構造
今回は、これらの点について考察を進めていきたいと思う。
「スピード至上主義」――市場を制する最良の妙手という幻想
よく“スピード経営の時代”という言葉を耳にするが、もともと日本にあった考え方ではないと思う。これは、ビジネスのグローバリゼーションが世界的に進行する中、欧米の企業経営から学ぶ形で日本に輸入されたトレンドではないか。
ここでは、経営トップによる意思決定のスピードを上げ、製品やサービスを市場に投入する生産・販売のスピードを上げ、顧客対応のスピードを上げる。とにかく企業活動のあらゆる側面において疾走を続けていなければ、今日の生存競争からすべり落ちてしまう、という論理になっている。今日、この考えはすっかり日本の産業界に定着し、異論を唱える向きは少ない。もはやスピード経営ではあきたらず、超スピード経営という言葉まで登場している。
――では、なぜ急ぐのか?
急ぐのは、市場シェアを獲得するためだ。誰もがまだ手を付けていない更地にできるだけ早く駆け付けて、できるだけ広い区画に杭(くい)を打ち込み、ロープを張って、“私有地”という看板を立ててしまう。そのように市場を制してしまえば、後から競争相手がやって来ても、参入の余地を最小化できるからである。この目的のためには、つまり時間が最優先であるために、市場投入する製品の完成度が少々低くても目をつぶるという覚悟さえ今日はあるようだ。
――本当に、それほどまでに急がねば勝てないのだろうか?
裏を返せば、ただただ急げば戦いに勝利できるのだろうか? この素朴な疑問に対する答えを考えていたところへ飛び込んできたのが、次世代DVD規格競争の決着がついたというニュースだった。
最初に製品を市場に投入したのはHD DVD陣営だった。対するBlu-ray陣営は技術的課題を乗り越えるのに時間がかかり、ようやく製品投入ができたのはその8カ月も後のことだった。しかし、結果的に規格競争を制したのはBlu-ray陣営だ。
これが単に時間と製品の品質の問題だけではない、利害関係者の思惑が絡み合った複雑な戦いであることはよく分かっているが、“速攻、必ずしも妙手ならず”を示した一例であるように思う。
| 関連リンク: | |
| ニッポン電機メーカーを疲弊させる次世代DVDの戦い ― @IT MONOist http://monoist.atmarkit.co.jp/fembedded/articles/siliconeswatch/04/siliconeswatch04a.html |
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| フリー・アーキテクト 中根隆康氏は、ネクスト・ディメンションの取締役社長でもある |
スピード至上主義の企業活動下では、先にゴールが決まる。必要な時間を積み上げてゴールが算出されるのではなく。多様なニーズに応えるために、生産する製品の種類も多い。追い立てられるような余裕のないプロジェクトでは、コミュニケーションの時間が十分に確保できないばかりか、どこかにひずみが生じる。省略や見切り発車を余儀なくされることもあるだろう。そのように作った著しい妥協の産物を、胸を張って世に出すことができるだろうか?
中根さんはいう。「何を作るか、それによって社会に対してどのような貢献をするのか、といった本質論がないがしろになっているような気がします。そこがクリアになっていれば、やみくもに急いで作る必要はないかもしれません。いまはただ、“時間だけが成功の確率を測る指標”になっている点が危ないと思います」
最近、私の頭の中では“拙速”という言葉がずっと渦巻いている。
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