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2007年11月5日(米国時間)、Googleがモバイル端末向けプラットフォーム「アンドロイド(Android)」を発表したニュースは世界を駆けめぐった。このオープンな規格を推進する「オープン・ハンドセット・アライアンス(OHA)」には、NTTドコモやKDDIなど関係する主要な30社以上が参加しており、一気にモバイル向けLinuxのデファクトスタンダードとなり得る可能性を秘めている。
このAndroid、実はGoogleとウインドリバーが共同で開発を進めているというのだが、その真偽のほどを確かめるべく、来日中の米ウインドリバー・システムズ 副社長(ストラテジー&コーポレートディベロップメント)ヴィンセント・レロール(Vincent Rerolle)氏にお話を伺った。
それは1本の電話から始まった
―― Googleと共同で組み込みLinuxのディストリビューションとなるAndroidを開発しているというのは本当ですか。
レロール ええ、そのとおりです。ウインドリバーは多くの企業と一緒にOHA(注1)へ参加していますが、Androidの開発そのものに内部から参加・協力しているのはウインドリバーだけです。具体的にはAndroidのターゲット環境への移植・テスト・認証・検証などを行って、商用レベルの安定したプラットフォームにするのが目的です。最終的に、AndroidをOEMとして提供していきたいと考えています。
―― どうしてウインドリバーだけがGoogleの開発パートナーに選ばれたのですか。Googleから頼まれた? それともウインドリバーから協力を持ち掛けた?
レロール 確か今年(2007年)の春ごろだったと思いますが、「Googleで何かが起きているようだ」という情報が入ったので電話をかけてみたのです。それで、一緒に開発することになりました。もちろん11月にGoogleからAndroidが発表されるまで極秘に活動していました。いまでもお話しできないことがいっぱいあります(笑)。
―― 共同開発におけるGoogleとウインドリバーの役割分担は?
レロール ウインドリバー内に、Googleと一緒に開発しているチームがあり、毎日情報をやりとりしています。Googleが書いたコードを受け取って、われわれはパッケージングをしたり、OEMとして必要となる各種サポートを用意したり、デモ環境用のプロトタイプを作成したり、といった協力を行っています。つまりGoogleはオープンソース的に開発していて、われわれはそこに商用Linuxとして必要な要素を付加しているといった関係ですね。
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| 米ウインドリバー・システムズ 副社長 ヴィンセント・レロール氏 |
GoogleのエンジニアはとてもGoogle的というか、とにかくスピード第一の社風ですから、開発を主導して毎日何かしら新しいコードを書いているんです。ところがコードを書き直しただけでは一般の開発者に提供できる状態にはなりませんので、パッケージングをしたり、パッチを作ったり、テストをしたり、そういった安定したディストリビューションに仕上げていく作業は、商用Linuxを提供してきたわれわれが受け持っているというわけです。
LiMo(注2)におけるウインドリバーの立場は、Androidとは対照的で、Linuxのプラットフォーム戦略を決定するうえで中心的な役割を担っています。なぜならLiMoに参加しているメンバーはネットワークや電話、画像処理といった分野の専門家たちが多くて、Linux上で動かすミドルウェアに関しては強いのですが、カーネルやパッケージングといったOSの基礎の部分はあまり詳しくないからです。
―― ウインドリバーは商用グレードLinuxとして自社のディストリビューションを持っていますが、それとAndroidとは競合しないのですか。
レロール 競合関係にはなりません。OHAというのは標準的なプラットフォームを定義しているだけです。Linuxの世界ではウインドリバーとAndroidのどちらのディストリビューションが優れているか、といったことに意味はないのです。Linuxのビジネスモデルは、サポートやプロフェッショナルサービス、ツールといったものを提供することですから。Androidというディストリビューションはドキュメントもなければ教育も提供されない、そして毎日のように新バージョンがリリースされます。これではOEMをするのは大変です。
ウインドリバーのOHAにおけるビジネスモデルは、AndroidというLinuxのディストリビュータとして、インストール可能なパッケージおよびドキュメント、パッチのリリース、サポートや教育といった関連サービスを含めてOEMを提供するというものです。ですから、従来のウインドリバーLinuxと打ち消し合うようなビジネスではないのです。むしろ、これまでLinuxに関して培ってきたノウハウをAndroidという新しいディストリビューションでも展開していけるチャンスとなるのです。
商用グレードの組み込みLinuxを提供するのは大変なことです。Googleの開発したAndroidのSDKは誰でも簡単にダウンロードできますが(注3)、それでアプリケーションを作成すれば済むというわけではありません。携帯電話のOSとしてAndroidを稼働させるまでには、ターゲットボードへのポーティングからBSP(Board Support Package:ボードを動作させるための環境)の作成といったハードウェアへの対応が必要ですし、さらに開発ツールの準備や技術者の教育もあります。これらは商用Linuxに必須のことで、現時点ではGoogleのエンジニアだけで提供できるものではありません。オープンソースのLinuxをダウンロードするのと商用Linuxとは決定的に違うのです。
ウインドリバーのPCDLE(Wind River Platform for Consumer Devices, Linux Edition)というミドルウェア商品を使っているLinuxのOEMベンダから、現状のプラットフォームを維持したまま、つまり安定したシステムを維持したままで、カーネルのアップデート時にAndroidのパッケージを追加していきたいという要望を受けています。そうすれば、(PCDLEを使うことで)アプリケーションを安定させたうえで、Androidに移行できるわけです。こういうニーズに応えていけば、ウインドリバーのLinux環境におけるフレームワークのビジネスをさらに拡大していけるでしょう。
| 注1:OHA(Open Handset Alliance) http://www.openhandsetalliance.com/ 「モバイル端末の技術革新を促し、ユーザーに既存のモバイル端末用プラットフォームでは得られない、はるかに快適なモバイル体験を提供するという目標」(Googleプレスリリースより)の下に集結したアライアンス。Googleを中心に、T-Mobile、HTC、Qualcomm、Motorolaなど30社以上が参加している。 注2:LiMo Foundation http://www.limofoundation.org/ Motorola、日本電気、NTTドコモ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、Samsung Electronics、Vodafone Groupの6社が2007年に立ち上げたLinuxベースの携帯電話向けソフトウェアプラットフォーム構築を目的とした団体。ウインドリバーは2007年8月に加盟した。 注3:Android Software Development Kit http://code.google.com/android/download.html Googleがフリーで提供しているAndroid用の開発キット。記事執筆時点はearly look版で、対応プラットフォームはWindows、Mac OS X(Intel版)、Linux(i386)。Eclipse用のプラグインも用意されている。 |
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