組み込み開発の混沌から抜け出そう

組み込み開発の混沌から抜け出そう 第2回

分業化の悪夢、俺たちは下請けじゃない!

宮崎 裕明 横河ディジタルコンピュータ 2005/10/28

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ソフトは大変? ソフトも大変?

 ここ1年ぐらいの現象として目立ってきたのは、組み込みソフト開発者の悲鳴やぼやきの声に、別の声が交じるようになったことです。その一例をご紹介しましょう。

 

 

 

 

 

 

メカ開発者:「ソフトが大変、大変と取りざたされているけれど、大変なのはソフトだけではありません」

家電メーカーの「メカ」の中堅開発者の話です。研究や試作に割ける時間が十分とはいえないし、より確実な方法をぎりぎりまで模索するため、ソフトに対する要件もなかなか決められないというのです。

メカ開発者:「日本、アメリカ、中国……と、国が違えば好みも違います。ですから、日本市場向けの試作品が完成したとしても、海外向けの仕様は別で、同じ仕掛けが使えるとは限りません」

しかも競争相手はいまや海外にも多数存在します。その中で勝ち残っていかなければならないという、企業の事情もあるでしょう。十分研究できたら、それはそれで技術者として満足できるかもしれませんが、市場に乗り遅れてしまっては成功とはいえません。

メカ開発者:「ソフトにしわ寄せが行くのは分かっています。でももう、メカだ、ソフトだといっている状況じゃないような気がします。何とかしなければ破たんするのはソフトだけじゃない。メカもエレキも、同じような状態です。それに、組み込みは開発工程のどれか1つでもコケたら成り立たないものですから、どこかの部門が立ち直ればいいってものでもないでしょう」


 特性はさまざまではあるにせよ、組み込み製品は「物理的に動く」という点で、企業システムと明らかに異なります。その物理的に動くものをよりきめ細かく制御するのに、ソフトウェアの担う役割が大きくなったわけです。ソフト部門の問題が取りざたされているのは、特にソフトの役割が急激に増大し、人も、ソースコードの量も、急増してきたからでしょう。

 しかし、もう1つ上位の視点で見てみると、高性能化や多機能化は市場の要求であり、このメカ開発者が語るように、要求の配下にあるのはソフトだけではないということです。同じように、ハード部門も嵐にさらされているということでしょう。

組み込み開発の構造に根差した問題とは?

 組み込み製品というのは、機器として「どう動くべきか」という機能を実現してこそ価値があるわけで、それは携帯電話、DVDプレーヤー、冷蔵庫、半導体、自動車、ロケットでも同じです。その性格上、動く実体であるメカに始まり、エレキ、ソフトの順で仕様が決まっていくのが通常です。時間軸で考えると、ソフトの仕様が最後になってしまうのは、やむを得ないのかもしれません。

 ただ、メカやエレキの仕様がさっさと決まってくれればもっとうまくいくはずで、決まらないし、いったん決まっても変わってしまうから、ソフト屋さんは困るわけです。前が決まらなければ決まらない、前が変われば変わる。誤解を恐れずにいってしまえば、振り回されている感は否めないでしょう。

 しかし、人員、予算、重要度も、急速にソフトが増大しているのは事実です。その一方で、「主役はハード。ソフトはハード屋さんがついでに作るもの」という上層部の認識が抜け切っていない現場もあります。この現実と、開発現場の構造、そして企業のソフトウェア開発に対する考え方などのズレが、無理やゆがみを生み出す原因といえそうです。

 そういう構造なんだから仕方がないと片付けてしまう前に、こういう構造だからこそ、どうやって手戻りを減らすか、効率と品質を上げるかを考える時期に来ているようです。そして、ソフト部隊の閉じた中だけでもがいていないで、プロジェクト全体という視野も必要になってきたということでしょう。組み込み機器は、メカとエレキとソフトがそろって、初めて機能するのですから(図2)。

図2 組み込み機器はメカ、エレキ、ソフトウェアが協調して動いている

 さて次回は、「このままではいけない」といち早く動き始めた人たちに登場していただきます。それもやはり、平坦な道ではないようです。お楽しみに。

 最後に、前回と同様に独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)が行った「2005年版組込みソフトウェア産業実態調査」から1つの結果をご紹介します。

 組み込みソフトウェア開発者に対して、今後の自分をどのようにしたいかを調査した結果です。この調査は、次の選択肢の中から、1〜3番目まで、3つを選択するものでした。

  1. 収入を増やしたい
  2. いろいろな技術を身に付けたい
  3. 技術を極めたい
  4. 出世したい
  5. 足跡や結果を残したい
  6. 有名になりたい
  7. 世の中の役に立ちたい
  8. 国際的に活躍したい
  9. 仕事を変わりたい
  10. 現状の仕事を続けたい
  11. その他( )
  12. 特に考えていない

 以下に報告書の文章をそのまま引用します。

今後の方向性についても「収入を増やしたい」が2位とはなるが、「いろいろな技術を身に付けたい」「技術を極めたい」など技術に対する向上心は高い。数多くの課題を抱える組み込みソフトウェアの開発現場の中で、これら技術者の姿勢に期待したい。

 皆さんはどうなりたいですか?(次回に続く)

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