いまさら聞けない シャシー設計入門(11)

ハンドルが楽々切れるって、実はすごいこと

山本 照久 カーライフプロデューサー 2010/12/24

シャシーの基本である、動力伝達装置やブレーキなどの装置の仕組みを学ぼう。あなたの携わる設計のヒントも、そこに隠れているかもしれない(編集部)

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 今回は、最近の車では限りなく100%装備されているともいえる「パワーステアリング」について説明したいと思います。

*筆者注:各メーカーによって構造などは異なりますので、ここでは一般的な構造を基に説明していきます。

 パワーステアリングはいうまでもなくステアリング(ハンドル)の操舵(そうだ)力をアシストしてくれる機構のことですが、もちろん皆さんご存じですよね。いまでは女性の方でもまったく疲れることなくハンドルを切ることができますし、きっと小学生でも軽くハンドルを切ることが可能ではないかと思います。

 しかしよく考えてみると自動車の重量は約1〜2トンはありますので、単純計算すると前輪にはその半分の重量が掛かっていることになります。

 それだけ重量が掛かっている車輪を誰でも簡単に操舵できるということがいかにすごいかをあらためて認識しつつ、実際の構造・作動のお話に入りたいと思います。現在は燃費向上の観点から電動パワーステアリングが主流となってきていますが、まずはその基本となる油圧式パワーステアリングについて説明します。

 パワーステアリング機構は主に、

  • ステアリング(ハンドル)
  • ステアリングコラム
  • パワーステアリングポンプ
  • リザーバタンク
  • ステアリングギアボックス(ラック&ピニオン、バルブボディ、パワーシリンダ)
  • パワーステアリングフルード

によって構成されています。

図1 パワステ全体構成図

 ハンドルとステアリングコラムはドライバーのハンドル操作をギアボックスに伝える操作機構ですので、今回はあえて割愛します(これらにもいろいろな技術があります)。

 パワーステアリングポンプはベルトを介してエンジンのクランクプーリーによって駆動 されています。

写真1 ポンプのドライブベルト

 本文冒頭にて「燃費向上の観点から電動パワーステアリングが主流となっている」と説明しましたが、油圧式と電動式とで燃費が異なる理由はこのポンプ駆動にあります。

 ポンプということは内部で油圧を発生させる機構ですので、相応に力が必要です。 もちろんその力はエンジンによって駆動されているわけですから、エンジンにとっては パワーロスの原因になってしまうのです。

 実際にレース仕様やスポーツカーなどでは、この駆動ロスによるパワーダウンを抑えるためにパワーステアリング機構を排除した仕様もあります。

*筆者注:パワーダウンを抑えるだけではなく、操舵フィーリング向上や軽量化にもなります。

 正確な数値は車種によって異なりますが、およそ3%のパワーダウンになると いわれています。あらゆる技術を投入して少しでも燃費を向上させたい最近の車にとって3%という数値は非常に大きな存在ですので、パワーステアリングの電動化はある意味必然でしょう。

 個人的にはパワーステアリングなし(マニュアルステアリング・重ステ)の操作フィーリングが大好きです。まるで地面を手で触っているかのように、非常に繊細なフィードバックを得ることができますのでスポーツ走行には最適なのです。

 パワーステアリングポンプは主にベーン式ポンプが採用されています。

写真2 パワーステアリングポンプ

 ベーン式ポンプはギア式ポンプよりも吐出油量が多く、吐出脈動が少ないというメリットがあります。

 吐出油量の多さは操舵フィーリングの向上となり、吐出脈動の少なさは脈動によって発生する「うなり音」を低減することになります。双方ともにパワーステアリング機構として求められる重要な要素ですので、ベーン式ポンプは現時点で最適な方式だといえるでしょう。

>>次のページでは、パワーステアリングポンプのプーリーについて説明します

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