いまさら聞けない エンジン設計入門(2)

本田宗一郎も苦戦したピストンリングの設計

山本 照久 カーライフプロデューサー 2008/2/25

クルマの機構の重要部品・エンジン機構の基本をまずは理解しよう。いまさら聞けないエンジニアも、新米エンジニアも、いまのうちにCheck it out!(編集部)

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 前回は「ピストン」についての解説でしたが、今回は「ピストンリング」についてお話ししていきます。見た目はただのリングですが、ピストン同様にさまざまな工夫が施されています。ピストンリングの役割はいまさらいうまでもないと思いますが、「エンジン各行程における燃焼室内の気密の保持」ですよね。また、ピストンリングが発明されたことにより、エンジン性能と耐久性が飛躍的に向上したといわれています。

 ピストンリングは厚さ数ミリの薄いリングであるにもかかわらず、高温高圧という過酷な条件下に常にさらされる部品です。高温高圧に耐えるピストンリングには「耐摩耗性」「強靱(きょうじん)性」「耐熱性」が求められ、さらに「オイルの保持能力」などが求められます。

 かつては特殊鋳鉄や炭素鋼などを材料にして成型されていたのですが、最近はプレス鋼板製が増えているようですね。初期なじみ向上や熱伝導性向上などの目的で、表面に硬質クロムめっきなどを施したものが一般的です。

写真1 ピストンの溝にはまったピストンリング3本
上から2本がコンプレッションリング、
一番下がオイルリング

 一般的な4ストロークエンジンに取り付けられているピストンリングは、3本です。その3本を大まかに分けると「コンプレッションリング」2本と「オイルリング」1本とに分かれていて、それぞれ別の役割を持って協力し合うことによってエンジンの気密を保持しているのです(写真1)。

コンプレッションリングとは?

 コンプレッションリングとは、気密の保持のために用意されるピストンリングのことをいいます。

 “気密の保持”とは、ピストンが上下運動しながら行う「『吸気』→『圧縮』→『燃焼』→『排気』」行程において、その混合気をピストンより下に漏らさないことをいいます。コンプレッションリングの役割は、以下のように各行程で変わります。

  1. 吸気行程 ピストンが下降する際に圧漏れなく「負圧」を発生させて、混合気を吸い込む役割
  2. 圧縮行程 混合気を漏れなく上死点(ピストンが上昇する最終地点)まで圧縮する役割
  3. 燃焼行程 爆発して発生した燃焼ガスを“ピストンを下に押す力”へ変えるための圧力保持
  4. 排気行程 排気ガスを漏れなく確実にエキゾーストマニホールドへ押し出す役割

 コンプレッションリングは、前回お話ししたピストンヘッドと同様に燃焼ガスの超高温に直接触れる部品です。しかしシリンダとクリアランスを設けて存在しているピストンとは違い、自己の張力とガスの圧力によってシリンダに強く密着している部品です。従って、受けた熱をシリンダへと真っ先に伝えてシリンダライナ周囲に張りめぐらされている「ウォータジャケット(水路)」に効率よく熱を逃がす役割もしています。

 コンプレッションリングは2本取り付けてあります。その2本をどのような組み合わせにするか決めるには、ピストンリング形状ごとの特徴をしっかりとつかんでおく必要があります。一般的に、ピストンヘッドに近い側から「トップリング」「セカンドリング」といわれています。トップリングは主に“気密の保持”、セカンドリングは“余分なオイルをかき落とす”という役割分担となっています。

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