いまさら聞けない エンジン設計入門(9)

「バルブタイミング=0°」とはどういう状態か

山本 照久 カーライフプロデューサー 2008/10/16

クルマの機構の重要部品・エンジン機構の基本をまずは理解しよう。いまさら聞けないエンジニアも、新米エンジニアも、いまのうちにCheck it out!(編集部)

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 今回は、エンジン性能を大きく左右する「バルブタイミング」について解説していきます。

 バルブタイミングとは一般的にカムシャフトのカム山の形状を指す、つまりカムプロフィール(図を別窓で表示)が中心になる、と勘違いしている方が多いようです。

 本来はピストンを主役として考えて、

「ピストンの位置を中心に見たバルブの開閉タイミング」

と解釈するのが正しいでしょう。

 「カムプロフィールに追随してバルブが開閉するのだから、結局は一緒だろう!?」という意見もあるかもしれませんが、エンジンはそれほど単純なものではありません。

 後ほど詳しく説明しますが、バルブタイミングは「0°〜280°」といった単位で表現されます。このときの「0°」というのはカムシャフトの一番底辺(カムリフトの正反対)ではなく、あくまでもピストン上死点のことをいいます。

写真1 ピストン上死点(TDC)のマーク

 つまり「バルブタイミング=0°」というのは、「ピストン上死点におけるバルブの状態」、すなわち「カムシャフトの位置」ということになります。よって、「カムシャフト単体でバルブタイミングを測定する」という解釈は根本的に間違っているといえます。

 基本的に、バルブタイミングとは「4ストロークエンジンにおける各行程ごとのバルブの開閉状態」を示します(表1)。*4つの行程についての説明は第2回をご覧ください。

行程 吸気バルブ 排気バルブ
吸気
圧縮
燃焼
排気
表1 各行程ごとのバルブ開閉状態
 

 単純にバルブタイミングといえば上の表に準じたバルブの開閉状態のことをいいます。

 本当の意味でのバルブタイミングの難しさは、

「どのタイミングで開いてどのタイミングで閉じるか」

という部分になります。

 吸気行程で考えると、ピストンが下がり始めたと同時に吸気バルブが開き、排気バルブが閉じていれば問題なく吸気できます。しかし「エンジン出力を向上させよう」「排気ガスをクリーンにしよう」といった目標が出てくると、バルブタイミングの重要度は急激に上がります。

 例えば、先ほどの吸気行程のように、ピストンが下がり始めたと同時に吸気バルブが開いていたのではタイミングが遅過ぎるのです。なぜかというと、ピストンが下がり始めたときにバルブが開き始めるということは、バルブが完全に開いた状態になるまでは通気面積が狭いため、ピストンが下降する際の抵抗となってしまいます(吸気効率の低下)。

 よって、吸気行程における吸気バルブを開くタイミングは、ピストンが下がり始める上死点よりも前段階(排気行程)で開いている必要があると分かります。

 さらに、この吸気行程においての排気バルブにも注目してみましょう。吸気行程の前段階である排気行程において、排気バルブは当然、全開状態となっています。そして排気行程が終わりに近付くにつれて排気バルブは閉じていきます。

 排気行程と吸気行程との境目となる「ピストン上死点」というタイミングでは排気バルブは閉じた方がいいのでしょうか?

 答えはノーです。

 ピストンが上死点に達した時点ですべての燃焼ガスが排気口から排出されていれば問題ありません。しかし実際、それほどきれいに出ていくことはありません。ピストンが上死点位置であっても、ピストン上部には燃焼室分のスペースが残されていて、そこにはまだ燃焼ガスが残留しています。

  しかし、燃焼ガスなので、通常の大気よりも高圧状態です。つまり大気圧と同じ気圧である出口さえ開いておけば、自ら出ていこうとしてくれます。つまり、上死点のタイミングでは開いておいた方がいいということが分かりますね。

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