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| ■当連載の登場人物 | |
| 根川 甚八(ねがわ じんぱち) 根川製作所 代表取締役社長 団塊世代の大田区系オヤジ技術屋 通称、甚さん |
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| 国木田良太(くにきだ りょうた) ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務 80年代生のイマドキな若者。機構設計者 通称、良君 |
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「エエッ!? 甚さん! 甚さん! 今回で終わりって本当ですかっ? ぼ、僕はもう、残念で残念で……」 |
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「うるせぇヤツだ。ガキのように騒ぐな! その話は、後にしろ」 |
皆さん、第9回の「車のリコールに学ぶ 命を吹き込む設計」は、いかがでしたか? 昨今、社告やリコールの新聞記事がない日が珍しいくらい!? 商品の品質が低下し、収まるところを知りません。
品質向上は「FMEA(エフ エム イー エー)」と呼ぶ「トラブル未然防止法」という唯一の防御手段(手法)があります。いい換えれば、トラブルを未然に防止する方法は、FMEAしかありません。
FMEAを実施していると豪語している企業がありますが、第3者にはその効果が目に見えません。設計プロセスにおいて、FMEAよりも前に実施すべきことを忘れているからです。それは、「1つ1つの部品に命を吹き込むこと」です。この行為がないから、ただ単純に形式だけのFMEAをやっているに過ぎません。命のない部品にFMEAを施したところで、その効果が出るはずがありません。
それでは、恒例の「理解度チェック」です。3項目以上に「レ」点が入った方は先へ進みましょう。そうでない方は、第9回を読み直してみてください。
| 理解度チェック |
さて、今回の最終回は、「競合商品を設計分析で駆逐しようぜぃ!」シリーズ(第6、7回)の応用例となります。つまり、「同思想戦略」や「トレードオフ戦略」を使って、いま話題のハイブリッド車であるT社の「P」とH社の「I」を、この「甚さんの設計分析大特訓」という範疇で分析してみました。
各種の技術ジャーナル誌や新聞では、この2車種の「燃費」と「価格」を記事にしていますが、それは外観論に過ぎません。設計の神髄を分析することは性能や概観ではなく、「設計思想」を分析することです。これを忘れないでください。
日本は軍隊なき国家であり、基本的には軍用機器を開発していません。とてもいいことですが、それに伴い、日本企業では競合分析を実施することが少なくなり、最近は出来なくなってしまいました。その結果、設計思想なき、「何でもあり!」の商品が日本国内で蔓延(まんえん)するようになってしまったのです。
設計経験のない自動車評論家の中には、まるで小学校の通信簿のように「価格」「燃費」「出力」「居住性」「騒音」「安全性」「回転半径」などの設計品質をすべて比較項目に取上げ「○×式」で比較します。そして、オール5を取った子供(車)を優秀と判断します。
しかし、欧米や軍事は異なります。あくまでも使用目的を満たしたうえで、前記の設計品質項目に「重し付け」を設定し、設計思想とその優先順位を探り、優劣をつけます。
「最近のハイブリッド車の市場競争って、刺激的ですよね〜。甚さんは どう思っています?」 |
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「いいかげんにしろっ! って思っているさ。だってよう、デザインがそっくりじゃねえかい! あの会社は、兄弟かい? ンたくぅ〜、日本企業の商品ときたら、『なんでもあり!』の家電や、そっくりデザインの車ばかりときたもんだ〜っ!! ケッ」 |
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| 図1 T社の「P」とH社の「I」、兄弟車? そっくりなデザイン…… |
「甚さん、今日はのっけから機嫌が悪いなぁ」 |
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「家電も自動車も売れねぇ……とか嘆いているそうだが、欲しいモノや魅力あるモノがねェんだよなぁ! 何が『モノづくり、モノづくり』だ! これじゃ『罪(ツミ)つくり』じゃねぇかい? あん?」 |
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「僕はもう察しましたよ。それらの商品に設計思想が感じられないのですね? では、今回もビシビシとお願いします」 |
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「先月末、T社の『P』とH社の『I』のカタログをディーラへいってもらってきたんだ。しかも『P』は、比較広告になっているぞ。これは刺激的じゃねぇかい!」 |
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「うわーっ! 面白ーい。エンジンとモータの2つの駆動源を“2人乗り自転車”で表現したんですね。さすがは、T社の営業力だ!」 |
良君がいっている「2人乗り自転車で表現」とは、T社の比較広告のことです。難解なハイブリッド車の仕組みを非常に詳しく説明しています。いかにも技術者好みの資料です。
T社の比較広告について書かれた記事(ダイヤモンド・オンライン)
| 比較広告とは? |
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アメリカでは昔から行われていた比較広告ですが、1980年のペプシコーラが大々的に行ったコカコーラとの広告、つまり「ペプシコーラは、コカコーラよりもうまいというアンケート結果が出た!」との比較広告が有名です。 日本では、日産自動車のサニーが「隣の車より大きく見えま〜す!」と、トヨタのカローラを意識したCMを実施したのが初期です。しかし、相手を誹謗(ひぼう)するように受け取られるとしてほとんど実施されていなかったのですが、近年の携帯電話会社のCMで再び火が付きました。 今回、ハイブリッド車におけるT社のカタログでの比較広告は、相当、H社をライバル意識しているのが伺えますが、これはむしろマイナス効果ではないかと筆者は考えています。 |
「カタログの内容までそっくりですね。車の色や向きぐら変えたらいいのに……。それから、カタログの色調も……」 |
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「もう、今回はやめっかぁ? 設計分析しても、同じだよ」 |
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「うちの課長もいま、自動車を買い換えようとしているんですが、T社のディーラで、ついつい『P』と『I』の名前を間違って商談していた……といっていました。さて、話をカタログに戻しましょうよ」 |
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「しかし、びっくりしたなぁ。T社にしちゃー珍しい比較カタログだ。あそこまで比較しちまったらよぉ、王者も怖気(おじけ)づいてしまったことを明らかにしているようなもんじゃねかい!」 |
良君がいっているように、そして甚さんがご機嫌を悪くするように……確かに似ているのです。両社のカタログを比較してみると、車の向きも、色も、背景も、非常にそっくりなのです。
「甚さん! 早くハイブリッド車の設計分析大特訓をやりましょうよ〜!」 |
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「ガキのように騒ぐんじゃねぇ! 今回でこの連載は終了なんだから、ゆっくりと味わえようっ!」 |
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