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特許は20%、意匠は10%、商標は40%が未利用・未活用権利
それではお金を掛けて取得した知的財産権はどれくらい利用されているのでしょうか? 図4に大企業・中小企業合わせた日本企業の保有している特許権・意匠権・商標権の3つの利用状況を示します(商標権のデータには「未利用件数:防衛目的」がなかったため、「未利用件数:その他」にまとめました)。
図4 日本企業の保有知的財産権の利用状況(2007年度)
特許権では約50%を利用していますが、残りの半分は未利用となっています。しかし、未利用件数の中でも約30%は防衛目的の未利用となっています。防衛目的とは、他社に特許出願・権利化されてしまい、自社事業の障害にならないように特許を保有しておくことを意味します。
この防衛目的の未利用特許も、消極的な意味での利用と見なせば特許取得件数の約80%は利用していると考えることができます。特許以外の意匠や商標でも取得した件数の半分以上は利用されています。しかし、特許では20%、意匠では10%、商標に至っては40%が真の意味での未利用・未活用権利となっています。
せっかくお金を掛けて権利を取得しているのにもかかわらず、これだけ使われていない知的財産権があるのです。本当に不要なのであれば、権利を放棄することで知的財産権を維持するための費用を削減して新たな研究開発活動へ充てるなど、より効果的に資金を振り分ける必要があります。
図5 中小企業にとっての知的財産戦略上の課題
本項の最後に、なぜ中小企業は知財戦略の実践が難しいのか見ていきたいと思います。図5は中小企業を対象とした場合の知的財産戦略上の課題を示したものです。知的財産権を取得している企業にとっても、取得したことがない企業にとっても、重要な課題は「知識不足」と「人材・資金不足」の2点に集約されます。
知財戦略を支えるためには、戦略面から知財管理・知財実務面まで非常に多くの要素が必要になります。当然のことながら中小企業の方々にとって、自社ですべてをまかなうことは難しいと思います。そこで活用していただきたいのは、特許庁が実施している各種のサポート制度です。
知財戦略実践のためのサポート制度
2002年の小泉首相の知財立国宣言から1年後、2003年7月に政府より発表された「知的財産の創造、保護および活用に関する推進計画(通称“知的財産推進計画”)」には「知的財産を活用して中小・ベンチャーを活性化する」という項目が盛り込まれています。その後も、毎年公表される「知的財産推進計画」では、下記の表のように国として中小・ベンチャー企業を知的財産面から支援する姿勢を強く打ち出しています。
| 年度 | 該当箇所 | 内容 |
|---|---|---|
| 2004年 | 第2章−U−4 | 中小企業・ベンチャー企業の支援と啓発を強化する |
| 第3章−4 | 中小企業・ベンチャー企業や地域を支援する | |
| 2005年 | 第3章−U | 中小・ベンチャー企業を支援する |
| 2006年 | 第3章−V | 中小・ベンチャー企業を支援する |
| 2007年 | 第3章−V | 中小・ベンチャー企業を支援する |
| 2008年 | 重点編−T−3 | 新事業開拓の担い手として中小・ベンチャー企業を支援する |
| 第3章−V | 中小・ベンチャー企業を支援する | |
| 2009年 | U−1−(2)−F | ものづくり中小企業の知的財産の創造・活用を支援する |
| U−2−(3)−B | 中小・ベンチャー企業による外国出願を支援する | |
| U−2−(3)−C | 中小・ベンチャー企業の海外への事業展開に対する支援策を拡充する | |
| U−3−(1)−@ | ソフトパワー産業における中小企業支援策の活用を促進する | |
| U−5−C | 中小・ベンチャー企業に対する特許手数料減免制度を見直す |
中小・ベンチャー企業の知財活用を支援する制度
出所:知的財産推進計画
代表的なものでも、特許庁や工業所有権情報・研修館などを中心に以下のような「知財知識面」、「知財人材面」、「知財戦略面」でのサポート制度が準備されています。これらを活用することで、課題となっている「知識面」や「人材面」の不足を補うことを検討するのも良いでしょう。
知識面でのサポート
人材面でのサポート
戦略面でのサポート
自社で知財戦略を構築するために……
知財戦略面においても「地域中小企業知的財産戦略支援事業」を活用することは可能ですが、戦略立案機能については自社内で構築することが重要です。前回紹介した戦略の定義
戦略とは現在地と目的地を結ぶルート
を見ると、戦略立案の上でまず欠かせないのが現在地に関する情報を収集・分析する能力です。つまり、自社を取り巻く市場の動向や競合他社の状況といった外部環境情報を収集・分析する能力・スキルです。知財戦略を立案する上では、自社事業に関連する特許・意匠・商標の検索・分析方法を習得することが重要になります。検索エンジンを使っての情報収集とは異なり、知的財産情報の検索にはちょっとしたコツがあります。次回からは自社で知財戦略を立案するために欠かせない知的財産情報検索・分析方法について解説します。
◇◇◇
以上で第3回は終了です、お疲れさまでした。
今回は知財戦略の実態について統計やアンケート結果を基に解説しました。これで前半3回分の知財マネジメントスキル総論編は終了です。
次回からは知財マネジメントスキル各論編へ入り、特許・意匠・商標の検索方法やパテントマップといった特許情報分析方法について解説します。(次回に続く)
| 筆者紹介 | |
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日本技術貿易株式会社 野崎 篤志(のざき あつし) 1977年新潟県生まれ。 2002年慶応義塾大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻修了(工学修士)。 2010年金沢工業大学院 工学研究科 ビジネスアーキテクト専攻修了(経営情報修士)。 現在、日本技術貿易株式会社 IP総研 マネージャー。 知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、Webサイトe-Patent Map.net・e-Patent Search.netやメールマガジン「特許電子図書館を使った特許検索のコツ」を運営・発行している。 著書に『EXCELを用いたパテントマップ作成・活用ノウハウ』(技術情報協会)、『知的財産戦略教本』(部分執筆、R&Dプランニング)がある。 |
連載バックナンバー
- 第1回 自社開発品が特許侵害に?! 身近に潜む知財リスク
- 第2回 知財戦略を実践すれば事業はうまくいくの!?
- 第3回 これからは中小企業も知財戦略の実践が必要
- 第4回 カンタン3段ステップ検索方法をマスターする
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