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自社事業を強化する!知財マネジメントの基礎知識(6)

知的財産権情報を
事業戦略策定に活用するには?
〜新規事業への参入を検討するための特許情報分析〜

野崎 篤志 日本技術貿易株式会社 2010/6/28

製品開発の戦略作りには技術特許のルールや、技術情報活用の利点を理解しておくことが重要。本連載では知的財産権にかかわるトラブルへの対処法から、特許技術情報を基にした戦略構築の手法までを紹介する(編集部)

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前回の復習

 皆さん、こんにちは。日本技術貿易の野崎です。「自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識」の最終回、第6回を始めたいと思います。

 3日間のプログラムで構成された「技術者・研究者向け 現場で役立つ特許調査・分析スキル」セミナーへ参加したロボットアーム工業の地西(ちざい)さん。とうとう最終日を迎えました。

 最終日では仮の企業であるエンタメロボット社が、医療用ロボット事業に新規参入するため、特許分析・パテントマップ作成を行って知的財産面から新規参入の可否を検討するという事例を取り上げます。地西さんが勤務するロボットアーム工業でも、事業拡大のために新規事業を手掛けなければ……と社長からいわれていたので、格好の事例となったようです。

注:ロボットアーム工業がどんな知財トラブルに見舞われたかは、連載第1回をご覧ください。

 ◇ ◇ ◇

 皆さん、おはようございます。「技術者・研究者向け 現場で役立つ特許調査・分析スキル」セミナーも最終日となりました。3日目は1日目・2日目で学んだ内容を明日から現場で実践していただくため、仮想事例を用いて特許分析・パテントマップ作成の流れを体感していただきたいと思います。

 さて、いきなり質問で恐縮ですが、企業がある事業に新規参入することを検討していたとします。この場合、企業としてどのようなことを調べなければならないでしょうか?

 はい! 参入を想定している市場規模や、どのような企業がその市場にすでに参入しているかを調べる必要があると思います。

 その市場で必要となる技術がどのようなものか、技術トレンドのようなものも把握しておく必要があると思います。

 そうですね、皆さんに回答していただいた市場環境・テクノロジー環境の事前調査(フィージビリティ・スタディ)が必要です。そのほかに、法的環境――つまり参入するに当たって免許などが必要ないか、クリアすべき法規制はないか、という観点もありますね。

 今日は「エンタメロボット株式会社」という仮想の企業を例に、新たに医療用ロボット事業に参入する際に、どのように特許分析・パテントマップ作成を行えばいいのかを見ていきたいと思います。

 (おっ、ロボットメーカーが仮想事例か。うちの会社の知財戦略立案にも生かすことができそうだな、ラッキー)

特許分析事例について

 事例の背景について説明しましょう。

◆事例:エンタメロボット社の新規事業計画

 エンタメロボット株式会社(当然実在する会社ではありません)は、主に犬やネコなどの動物型ロボットの研究開発・製造販売を行っているメーカーです。動物の脚をスムーズに駆動させる関節技術には定評がありました。

 エンタメロボット社の業績は順調でしたが、エンタメロボット社の社長は、いわゆるペット型ロボットといったエンターテインメントロボット市場だけに利益を依存している危うさを感じ、2011年からスタートする中期経営計画に新規事業、つまり“医療用ロボット市場への参入”を盛り込もうとしていました

 そんなときに経営企画部を通じてエンタメロボット社の知的財産部へ「医療用ロボット」に関して新規参入の可否を検討するための基礎資料として、特許分析レポートを作成するように、との命令がきました。

 さて、このような背景でどのような特許分析を行えばいいか、想像がつきますか?

 あまりにも漠然としていて、どういう特許分析結果を出せばいいのか見当がつきません。

 ほかの受講者の方も地西さんと同意見のようです。

 確かに「新規参入が可能か否か検討するための基礎資料作成」としか伝えられていません。そこで、先ほど受講者の方から回答していただいた「市場規模」「参入企業」「必要となる技術」についてまとめてみます。

 基礎資料について、大きく分けて3つの項目でまとめることは理解できたのですが、医療用ロボットと一口にいっても、外科手術用ロボットのようなものもあればリハビリ用ロボット(介護ロボット)のようなものもあります。どのように医療用ロボットを定義すればいいのでしょうか?

 非常に的確なご質問ですね。分析対象を明確に定義することは非常に重要です。ただ今回は新規事業参入の検討段階であるため、広めに解釈しておくといいと思います。これから示す分析例では、医療用ロボットに関する特許分類のFタームである3C007AS35(医療用ロボット・マニピュレータ)でヒットした特許を分析対象としています。

医療用ロボット全体の出願状況を把握する

 それでは、早速特許分析レポート例について見ていきましょう。表紙のスライドは省略しています。

図1 医療用ロボット関連の特許出願は増えているの? 減っているの?
(クリックで拡大画像)

 図1では医療用ロボット関連特許の件数推移と出願人数(=参入企業数)推移を示しています。このスライドから医療用ロボット関連特許は2000年以降、件数・出願人数(=参入企業数)とも横ばいであることが分かります。つまり医療用ロボット市場はそれほど新規参入が増加しているわけではなく、ある程度プレーヤーが限られているのではないかと予想されます。

図2 医療用ロボット関連特許はどの企業が押さえているの?
(クリックで拡大画像)

 次にどのような企業が医療用ロボット関連特許を出願・保有しているのか把握するために、シェアマップを次のスライドに示しました。

 オリンパス・日立製作所・東芝の3社が上位を占めています。特に登録特許ベースで見ると3社のシェアは35%に達することから、この3社が医療用ロボット市場に参入した場合の主な競合他社になると予想できます。

図3 上位の企業は最近も積極的に特許出願しているの?
(クリックで拡大画像)

 図3に示すようにオリンパス・日立製作所・東芝の主要3社以外では、テルモやアメリカのインテュイティブ・サージカルのように近年になって積極的に特許出願を行っている企業もあります。特にテルモは2006年以降まとまった件数を集中して出願しているので、医療用ロボットへ本格的に参入したと考えてよいでしょう。

参考:特許出願状況をIR情報で裏付けする

 本文の図3ではテルモが2006年以降、まとまった件数を出願していました。なぜテルモが急に「医療用ロボット」関連特許を出願し始めたのでしょうか? 各社のIR資料を見ると、このような特許出願状況の背景が浮かび上がってくる場合があります。Webサイト検索で「テルモ ロボット」と検索すると

 がヒットします。

 この資料の中でSTEP UP 2007の3項目の1つとして「新しい治療システムの開発(新商品)」が挙げられています(9ページ)。さらに具体的な開発テーマとして「手術用ロボット」が挙げられています(11ページ)。これでテルモが特許出願を急激に増加した背景に、この新中期計画に基づいたものであることが分かります

次ページ > > 医療用ロボットに必要とされる技術要素別の出願状況を把握する

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