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バラツキを知るには“定量化”が不可欠
前回「トヨタ式? いえ、背伸びしない取り組みが正解」で説明した作業や品質の「ムダ削減アプローチ」に続き、今回は「バラツキ」を減らすためのアプローチをご紹介します。
皆さんに伺いますが、「作業や品質がバラツク」といった場合、どのような状態や状況を指すと思いますか。
「製品の大きさや形がそろわない」「電気特性が仕様値に入らない」「担当者によって仕上がりがマチマチ」など、モノにかかわることやヒトの作業のムラによることなどが、すぐに思い浮かぶのではないでしょうか。それでは、「そのバラツキにはどのくらい差があるのか」と尋ねた場合はいかがでしょう? さらに、そのバラツキぶりを見えるようにしてほしいといわれたらどうしますか?
モノであれば、うまく出来上がった製品と失敗作品を持ち寄ることで説明できるかもしれません。では、もしそれがヒトにかかわることだったら……。たとえ作業能力に顕著な個人差があるとしても、現場で直接比較することは、はばかられるのではありませんか。
筆者はよく「プロセス憎んで、ヒトを憎まず」というフレーズを使います。ここでいう“プロセス”とは作業工程手順のことで、“ヒト”は作業者のことです。つまり、作業者個人をいくら非難したところで何の解決にもならないという意味です。作業者が意識的に行った悪事ならともかく、一生懸命に働いたにもかかわらず意図せずに入り込ませてしまった瑕疵(かし)の責任を押し付けるのは得策ではないと思います。むしろ、その作業手順そのものに、間違いを犯させる原因があるのではないかと考えてみるべきなのです。
こうしたさまざまなバラツキは、「不良品」や「誤り」を誘引する大敵といえます。そしてその実態は定性的、直感的には把握できても、目で見て容易に分かるようにするのは一苦労です。日常生活においても「平均」という数値にはなじみはありますが、「バラツキ」という値にはあまりお目に掛かることはありません。
図1 バラツキの見える化
© GENEX Partners
図1のグラフは、同じ作業を行っているAさんとBさんの作業時間を各30回ずつ計った結果です。このグラフは「ヒストグラム(度数分布図)」と呼ばれ、バラツキを表す図として一般的に用いられます。図1中にあるとおり、それぞれの平均値だけを比べるとほとんど違いませんが、バラツキを示す「レンジ(注1)」や「標準偏差(注2)」には大きな違いが見られます。
| 注1:レンジ |最大値−最小値|の値。分布の幅を表す。 注2:標準偏差 √{煤i各数値−平均値)^2÷(データ数−1)}の値。データの散らばり具合を表す。 |
これ以外にも、定量的なデータを繰り返し採取すると、“平均”的な値以外にも分かることがあります。例えば、最大あるいは最小の値や最も多い値(最頻値)も分かりますし、グラフにすると分布の偏りを見ることもできます。直感的には、平均程度しかつかめなかった作業が、より見えるようになったといえるのではないでしょうか?
それでは何でもかんでも数値データを集めて定量化すればよいかといえば、そうもいきません。まずデータを集める手間が掛かりますし、通常では測定器そのものが存在しないようなものもあるでしょう。重さや時間といった物理量といわれるものは大抵身近に測定方法が決まっていて“物差し”がありますが、見た目や味などに代表される人間の感覚には全世界共通の物差しはありません。それこそ「技能者オリンピック」の選手が持つような職人技は、およそ測定できないでしょう。
しかしながら、通常の作業レベルであれば、現場でデータを採ることも測ることも可能だと思います。もちろん測定対象は全数でなくても、繰り返し測れるのであればサンプリングでも十分でしょう。バラツキを見るために最も重要な努力は、面倒がらずに定量化を試みることにあるのです。
現場で「バラツキ」と定義されたものは、基本的に少ないか皆無の状態が理想的なはずです。一方、芸術作品や小売店舗の世界では「個性」という性格の異なるバラツキが存在します。でもいくらお店の雰囲気が個性的でも、店主の気まぐれで開店日や商品価格の定まらないお店だったら、やはりお客さまの足が遠のくかもしれませんね。
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