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こうすればうまくいく生産計画

こうすればうまくいく生産計画(6)

“かんばん方式”にまつわる誤解・曲解・勘違い

佐藤 知一 日揮株式会社 2009/2/26

今日の製造業が抱えている根本問題は「大量・見込み生産の体制を残したまま、多品種少量の受注生産に移行しようとしている」ことにある。生産計画を困難にするさまざまな要因を乗り越え、より良い生産計画を実現する方法を検証してみよう。(編集部)

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プリウスの「見込み違い」

 数年前、車を買い替えようと思い、いろいろなディーラーを回ったことがある。ちょうどプリウスの新型モデルが出た直後だったので、トヨタの販売店を訪れて見せてもらった。試乗してみるとなかなか良い。値段を聞き、ローンの説明を聞き、注文しようかな、と内心思って納期を尋ねたら、「あいにく6カ月先になります」(!)という答えが返ってきた。期待以上のヒット商品で、生産が追い付かないらしい。だが、私は長らく乗っていた車の車検が切れる少し前だった。これでは間に合わぬ。うーん、トヨタさん、生産計画を見誤ったな……。結局、購入は見送ることにした。

 当時トヨタは毎年最高益を更新しているさなかだった。が、このとき同社は小口の顧客を1人逃し、販売機会損失を出したわけだ。そして、その原因は生産計画にあった。そう、トヨタには「生産計画」があるのである。

 トヨタでは生産計画と販売計画は1つのものである。車両台数ベースでは同じ数字で生産側も販売側も動いている。逆にいうと、販売計画が立たないと、生産計画も成り立たない。昨年(2008年)秋以来のトヨタの苦境は、まさにこの事情を象徴している。

 トヨタに生産計画がある、というと、「製造業だから当然じゃないか」と思う人がいる一方で、「え、あの会社はかんばん方式で動いているんじゃなかったの!?」と驚く人も一定数出てくる。かんばん方式は計画や予測などに頼らず、“売れた分だけ作る”のだから、生産計画なんてないはずだが、と。今回の記事は、何よりそうした疑問を持たれた方のために書こうと思う。

かんばん方式の基本的仕組み

 ここでまず、かんばん方式の基本的仕組みについてあらためて勉強してみよう(ちなみに御本家ではひらがなを使っているが、世界中に普及した結果、片仮名の「カンバン」で表記されることも多い)。

 かんばん方式は、後工程が前工程に材料を取りに行く「後工程の引き取り」が前提になっている。つまり、前回の「受注生産と見込み生産の混在を乗り切る方法」で説明したように、後工程の着手が前工程の着手の指示を出す、プル型の生産指示方式である。「かんばん」は、その生産指示の具体的な道具として使われる。

 かんばんは、その目的と機能から、「仕掛けかんばん」と「引き取りかんばん」に大別される(図1)。

 仕掛けかんばんは、工程の生産着手(仕掛け)指示に使用される。これはさらに、切り替えのほとんどない工程で用いられる「工程内かんばん」(=狭義の「かんばん」)と、プレスライン・ダイキャスト・樹脂成形工程などのように、段取り替え時間のかかるロット生産工程で使われる「信号かんばん」とに分類できる。

 引き取りかんばんは、文字通り後工程から前工程に部品を引き取るときに使われる。これも、工程と工程を取り持つ「工程間引き取りかんばん」と、外注先への納入指示を意味する「外注部品納入かんばん」とに分類できる(正確にいうと、これ以外に「臨時かんばん」が存在する)。

図1 かんばんの分類

 かんばんの使い方は、次のような手順に従う。

  1. 後工程側の現場に、使用する部品が供給される。部品には(小物であれば箱入りになっており)「引き取りかんばん」がセットされている。
  2. 後工程側は供給された部品を用いて加工・組み立て作業を行う。使うときには「引き取りかんばん」を外す。
  3. 「引き取りかんばん」を持って、前工程側の置き場に部品を取りに行く。
  4. 置き場にある部品を引き取る。このとき、あらかじめ前工程側が部品にセットしていた「仕掛けかんばん」を外し、自分が持ってきた「引き取りかんばん」をセットする。
  5. 後工程側は、その部品を自分の工程に持っていき、現場に供給する → 1に戻る。
  6. 前工程側は、外れた「仕掛けかんばん」に指示された数だけ、部品を製造する。
  7. 前工程側は「仕掛けかんばん」を製造した部品にセットして、部品置き場に置く → 4に戻る。

 引き取りかんばんをきちんと使うためには、守らなければならないルールがある。例えば、

  • 引き取られた分だけ、必ず前工程で生産する
  • 生産量と品種が平準化されている
  • 100%良品である
  • 現物表示(かんばんと現物は常に一体で動く)

などである。

 このように、かんばん方式をうまく使えば、ちょうど消費された分だけ補充生産する(“作り過ぎ”をしない)形で、すべての工程がきれいに同期化され制御されるようになっている。また、かんばんの枚数が仕掛かり在庫量を表しているから、現場の状況を見ながら、枚数をできる限り減らしていく。もちろん、そのためには、段取り替え時間を極度に短縮化し(シングル段取り)、作業者も多能工化・多工程持ちができるようになっていなければならない。サプライヤ側は100%良品を必要数量だけ、指定時間にきっちり納入する(トヨタでは原則としてサプライヤを信じ入荷検品はしない)。こうした努力すべてが相まって、初めて本当の意味のジャスト・イン・タイム生産になる。

>>トヨタ生産システムを支える中心思想は何?

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