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経営と基幹業務の現場をつなぐS&OP

世界のバリューチェーンから日本がはじかれる!?
S&OPに対応すべきこれだけの理由

松原 恭司郎 キュー・エム・コンサルティング社長 2009/10/19

S&OPとは、トップマネジメントと機能部門のミドルマネジメントが参画し、製品/サービスの需要と供給を継続的にバランスさせる戦術レベルの情報共有と意思決定プロセスである。本稿ではS&OPの概要を紹介する(編集部)

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また「日本素通り」現象が始まっている

 本稿のタイトルにもある「S&OP」という言葉を読者が知らなくともまったく不思議ではありません、S&OP(エス・アンド・オー・ピー)は、わが国ではほとんど知られていないバリューチェーン領域のグローバル・ランゲージなのです。

日本では知名度の低いS&OP

 S&OPを「知っている」「聞いたことがある」と答える日本人は、外資系企業の関連会社や欧米の企業と取引をしている企業で、需要管理やロジスティックス、そしてITに関与している人々などごく一部に限られているのが現状です。

 S&OPとは、セールス・アンド・オペレーションズ・プランニングの略称です。ビジネスのグローバル化に伴って、マーケットの変化に対して俊敏かつ柔軟に対応し、大陸をまたがって展開する市場と供給拠点を的確にマネジメントするマネジメント手法です。

欧米を中心に磨かれてきたS&OP

 S&OPは、よくあるパッと出の流行語などではありません。欧米のグローバル企業を中心にすでに普及し発展しており、その提唱はいまからおよそ20年前の1988年までさかのぼります。

 次に挙げる、皆さんが熟知しているマネジメント・コンセプトと比べてみましょう(表1)。

コンセプト 出現時期
ERP 1994年ごろ
SCM/サプライチェーン・マネジメント 1996年ごろ
BSC/バランス・スコアカード 1992年ごろ
S&OP 1988年ごろ

表1 主要なマネジメント手法と提唱時期

 これらと比べても、S&OPは他のコンセプトと遜色のない歴史を持つマネジメント・コンセプトだということが分かるでしょう。欧米ではすでに普及・発展しているにもかかわらず、日本では見過ごされています。

 前述のとおり、欧米を中心に、このS&OPの取り組みは当たり前になりつつあります。その理由は、迅速な経営判断が可能になることだけでなく、経営者の持つ数字と現場マネージャの持つ数字とが連携せずに「その場しのぎ」のものになってしまい実体を見えにくくするというリスクへの対応としても有効だからです。

グローバルな潮流はS&OPへと向かっている!

 20年の風雪に耐え、進化し続けてきたS&OPが、ここ数年、グローバル規模で、とみに脚光を浴びています。ここでは、日本の皆さんに警鐘を鳴らす意味で、いま、グローバル企業がS&OPへと向かういくつかの流れについてご紹介することにしましょう。

 ある米国のIT専門のリサーチ会社によれば、会員からの問い合わせのうち、ロジスティックス関連ではS&OPがここ数年上位にランクしているとのことです注1。確かに、欧米では代表的なERPやSCMそしてBI(ビジネス・インテリジェンス)のベンダー各社が、数年前からS&OPソリューションを前面に打ち出したマーケティングを積極的に展開しています。

注1:AMR Research, April 20, 2007, J.Barrett, S.Hochman, D.Hofman, Alert Article "DDSN for Discrete Organizations, Part 2: S&OP and Forcasting"S&OP currentry tops the list as one of most active topics clients discuss with us, and this high level of interest si substantiate by consulting firms we talk to.とあります。残念ながら、現在は削除されており、一般には公開されていないようです。

東のIFRS、西のS&OP

 現在、欧米のグローバル企業では2つのテーマを重視しつつあります。1つは国際財務報告基準、通称IFRSと呼ばれる会計分野の課題への対策とそのための組織・仕組みづくりです。そしてもう1つがS&OPです。トップマネジメントと製・販・在を含めた現場のマネジメントをシームレスな情報でつなぐ手法は、主にロジスティック関連を中心に、流通在庫を含む在庫と製造、販売の情報をアップツーデートに把握しながらショートサイクルで戦略を実行していこうとする流れです。

 これらの動きを受けて、現在、最先端のERPパッケージ・ベンダーでは、アプリケーション別の重点テーマを次のようにうたっています。

財務関連アプリケーションではIFRS(国際財務報告基準)
欧州のみならず、米国や日本でも自国の会計基準をIFRSに近づけるコンバージェンス(収斂しゅうれん)作業から、さらに一歩進めてIFRSのアドプション(適用)が検討されています。日本でも、非常にホットなテーマであり、財務会計以外にも、業務フローや社内ITインフラにも影響が及ぶのではないかとして、会計プロフェッショナルのみならず、IT関連のプロフェッショナルが注目しているテーマです。
ロジスティックス関連ではS&OP
IFRSのように法的強制力はありませんが、ビジネスのグローバル化が進む中にあって、S&OPプロセス、特にグローバルS&OPプロセスがホットなテーマとなっています。

 注目されているキー・コンセプトを相撲の番付表に例えれば、さしずめ「東の横綱IFRS、西の横綱S&OP」といったところでしょう。

「世界の工場」中国ではすでにS&OPが動き出している

 2009年8月に「APICS(米国生産在庫管理協会)が実施しているCPIM(公認生産在庫管理士)資格試験をいよいよ東京でも受験できる」との案内メールが筆者あてに届きました。いよいよ日本でも実施されるのか、と思い、詳細を確認すると、主催者は同協会の中国の提携組織となっており、しかもその中国の組織のWebサイトにはすでに「S&OP立ち上げサービス」の案内が掲載されているのです注2

 グローバルで展開している企業の方ならお分かりになるように、海外の企業と取引する際には、相手の国や企業の要求に合わせた報告や情報提供が必須となりつつあります。場合によっては、こうした情報の提供インフラが整っていないことを理由に、取引先リストから除外されてしまう、といった事態も発生しています。仕組みが欠如しているだけで、いくら優秀な製品を作ったとしても、取引相手として承認してもらえないという恐ろしい現実があるのです。

 この点で、近年急速に力を付けつつある中国企業はいち早くS&OPプロセスを学習し、欧米企業とのビジネスを有利に進めつつあります。先のCPIM資格試験についても、中国はいち早く実施しています。一方の日本は、20年以上も前からAPICSとの提携組織はあったものの資格試験を含めた取り組みに出遅れている傾向にあります。

 本稿の冒頭で、読者の皆さんがいままでS&OPという言葉を知らなかったとしても不思議なことではない、と述べたとおり、生産管理やERPシステムへの取り組みなど、日本では過去の成功体験なども障害となり、深刻に受け止められていなかったという状況があります。

 しかし、いわゆる「リーマンショック」に端を発した不況以降の市場では日本企業も生き残りをかけたグローバルな競争にさらされている点で変わりはありません。より多くの取引先とより有利なビジネスを展開するためにS&OPプロセスをしっかり理解しておく必要があるのです。

 日本でのCPIM資格試験開催が中国の組織によって実施されるという事態に危機感を覚えるのは筆者だけではないはずです。

注2:中国のAPICS提携組織が運営するWebサイト:http://www.ascms.com/en/ltzx1_1.asp
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