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顧客の問題を解決する「提案」の目の付け所
では実際に顧客の不満足の背後にあるジレンマをどのような提案で解決していけばよいのでしょうか。もうけるための優先順位は、
- 入ってくるお金を増やす(スループット)
- 出てゆくお金を減らす(在庫・投資)
- ムダなお金を減らす(業務費用)
でしたね。順番にどういった作戦があるのか考えていきましょう。
顧客製品の機能を向上させる
これは顧客の最終製品そのものの機能や利便性を向上させることにより、差別化を実現し売り上げ向上に直接効果が上がるようにしてしまおうというパワフルな提案です。代表的な例では、パソコンの心臓部であるインテルのCPUはその性能から、ほとんどのパソコンに採用されています。パソコンメーカーにとってはインテル社製のCPUを使うことは性能をより高め、自社の売り上げを確保することになるため、使わざるを得ないという状況になります。
顧客製品の利便性を高める
マイクロソフトのWindowsを搭載していないパソコンを企業内で使おうとすると、かなりの不便を強いられます。これはWindowsが実質的にパソコンのOS(オペレーティング・システム)の標準となっているため、いろいろなアプリケーションを使うためにはWindowsが不可欠になるからです。このようにある部品を採用することで、顧客の顧客に著しい利便性を提供できれば、顧客にとっては大変魅力的な提案になります。
顧客の生産性を向上させる
いうまでもなく企業にとって生産設備などの経営資源は有限なものです。その有限な経営資源をさらに有効に活用できる方法を提案できれば、顧客はその生産性向上分だけの売り上げアップを図れるため、大変魅力的な提案になります。
顧客のビジネス速度を向上させる
長野県にあるキョウデンというプリント基板メーカーは、小ロット、超短納期が売り物です。標準の納期は5日間ですが、このほかに、
- 特急(4日)
- 超特急(3日)
- マッハ(2日)
- ミラクル(1日半)
という納期を用意しています。では、この短納期は顧客のビジネスにどんなメリットがあるのでしょうか。プリント基板は量産段階だけでなく、開発段階の試作品にも必要です。しかしこれまでのプリント基板メーカーは量産品の生産が中心で、ごく少量の試作用プリント基板の注文は、製品段階での受注を前提にした「サービス」的な意味合いが強く決して歓迎される存在ではありませんでした。
そうなると、勢いリードタイムは長期化します。競合他社より少しでも早く完成品を作って市場に出したいセットメーカーは、短期間でプリント基板を作ってくれるところにプレミアム(割増料金)を払ってでも注文を出すのです。キョウデンのビジネスモデルはまさにこのニーズにぴたりとはまって、著しい成長を遂げています。
| 関連情報 | |
| キョウデン (http://www.kyoden.co.jp/) | |
顧客の資材費を低減する
代替素材を提案したり、加工方法などを変更することで収益率を向上して、顧客の資材費の低減をさせる提案です。これは大画面テレビなどに見られるように、自社の生産性向上成果をテコに素材価格を引き下げたり、代替材料を使ったりして製品価格を引き下げ、大量に普及させる手法です。
顧客のムダなお金を減らしたり余計な手間を省く
これは顧客のOE(業務費用)を削減できるという提案です。VMI(ベンダ在庫管理)は顧客の在庫を減らすだけではなく、在庫を自動的に補充することによって内示→納期調整→発注という事務作業を省くメリットもあります。
文具小売大手は大手企業の総務部とタイアップしオフィス文具のVMIを展開していました。総務部の文具倉庫を文具業者が管理し、使用した分だけ買い上げるビジネスモデルです。しかし、これに対してアスクルというオフィス用品の通信販売は、カタログに記載されたすべての商品に対する注文を当日か翌日に配送することで、倉庫スペースという制約を廃し、より多くの品ぞろえをより安価で提供しました。どちらのビジネスモデルも業務費用削減には有効な提案です。
最強のオファー(視点を変えて、売り物を変える)
最強の提案とは売り物を替えてしまうことです。TOCを題材にした小説『ザ・ゴール 2』に出てくるボイラー製造会社(プレッシャースチーム)を思い出してください。彼らが最終的に編み出したマーケティングオファーはボイラーを売ることから蒸気を売る、すなわちサービスそのものを売ることへの変更でした。
| 関連情報 | |
| 『ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス』(エリヤフ・ゴールドラット著、ダイヤモンド社刊) | |
もちろん、これ以外のオファーのネタもたくさんあると思います、ぜひ皆さんも顧客の困りごとに着目して、魅力的なオファーを創り出してください。
◇
以上4回にわたって、TOCスループットについて見てきました。読者の皆さんも「ムダ」という視点と「スループット」という両方の視点を持つことの重要性をご理解いただけたことと思います。ムダ取りの第一歩はムダの見える化です、経営のムダである「もうけ損ない」を撲滅するのも、スループットの考え方を活用して「見える化」することが第一歩なのです。(連載完)
ゴール・システム・コンサルティング株式会社 代表取締役社長 村上 悟(むらかみ さとる) 国際TOC認証機構 正式認定コンサルタント。 大手製造業にて経理、原価計算を担当、社団法人日本能率協会を経て株式会社日本能率協会マネジメントセンター分離独立に伴い移籍。1997年、TOC(Theory of Constraints)研究会を組織し、TOC研究とコンサルティングを開始する。2002年8月にゴール・システム・コンサルティング株式会社を設立し、代表取締役に就任。現在、法政大学講師、日本TOC推進協議会理事長。 ゴール・システム・コンサルティング株式会社は日本最大のTOC専業コンサルティング会社。導入企業に確実に利益をもたらすコンサルティング力はゴールドラット博士より多くの絶賛を受けている。 近著に『儲かる会社のモノづくり マーケティング 売るしくみ』(中経出版)、『問題解決を「見える化」する本』(中経出版)がある。 |
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