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人間的文脈から考えるインタラクションデザイン
フィジカルコンピューティングという言葉をご存じだろうか。ここのところ、複数のメディアで取り上げられていることもあり、徐々に認知されつつあるようだが、ここであらためて言葉の意味することを紹介しておこう。
例えばiPhoneの、ページをめくるように指をスライドさせる動作は、現実の世界の人間の行動に沿った、本を読むという行為を当たり前とする人であれば誰でもが理解できる動作といえる。現実の世界の人間行動に合致したインターフェイスを用意することで、説明書の要らないデバイスを実現しているといえる。フィジカルコンピューティングという発想には、コンピュータデバイスをマウスやキーボードといった入力系以外の、距離や温度、形、色、光、摩擦などの五感や物理的文脈から操作していこうという考え方が根幹にある。
一方で、インターフェイスのあり方を検討し、ユーザ体験をデザインすることを「インタラクションデザイン」と表現することもある。ユーザとデバイスの対話のあり方を検討する試みを、フィジカルコンピューティングによる「遊び」の場面で実現しようとするのが、今回紹介する「ガングプロジェクト」だ。
ガングプロジェクトは、情報科学芸術大学院大学・岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)において2005年から始まったIAMAS講師 赤羽亨氏が中心となって手掛けているプロジェクトだ。情報技術を活用した新しい電子玩具についての制作・研究を行いつつ、そのデザインプロセスを通じて、独自のプロトタイピングメソッドを探求・確立することを目指すとしている。
デバイス開発の障壁
デバイス開発者とデザイナ、メカ設計、回路設計など、実際の製品開発ではさまざまな部門の担当者が関りながら開発が進められる。むろん、この段階でターゲット原価など、ビジネスとしての線引きも行われる。
プロトタイプ制作のあり方
Webアプリケーション制作の場面などで、紙のラフスケッチを書き起こしながら画面遷移を検討する手法はCarolyn Snyder氏の著書「ペーパープロトタイピング」で広く紹介されたので、ITサービスに携わる方なら一度は聞いたことがあるかも知れない。
実際の画面の作りこみを行う前に、紙を使って実際の操作感を体験しながら実装する機能や遷移の検討を行うことで、以降の工程での手戻りを削減し、利用者にとって分かりやすいインターフェイスを実現する効果があるとされている。
画面での表示に限定されている場合は紙へのスケッチでプロトタイプとしての機能を十分に果たすが、実際のモノのプロトタイプ制作ではこうはいかない。仕様を十分に固めた段階でようやく試作用金型を発注して制作にとりかかる場合がほとんどではないだろうか。試作品でようやく仕様感を実体験したところインターフェイスの不備や機能上の欠陥が発覚して大きな手戻りが発生した、といった問題プロジェクトを抱えた経験をお持ちの読者も少なくないのではないだろうか。
ハードウェアをスケッチする
ガングプロジェクトは、こうした課題に対して、紙に書くようにハードウェアをスケッチしていく手法(ハードウェアスケッチ)をベースに、玩具制作の工程を通して、アイデアをストレートに、早いタイミングで形に落とし込むプロトタイプ制作を学習していくことを目的としている。
ハードウェアスケッチの方法は至極シンプルだ。全工程は以下の3ステップである。
・ステップ1:紙でのスケッチまず、1枚の紙にアイデアをごくシンプルに書きおこす。ここでのポイントは、「ここにxxセンサを使う」「素材はxx」といった情報は書いてはいけないということと、アイデアのコア部分だけを赤色で表現する、ということだ。
細かな仕様を指定しないことで、アイデアの核心的な要素に集中したプロトタイプの制作を促す。さらに視覚的にも目立たせることで、制作中の制約条件などによってアイデアの本質が損なわれないようにする。
・ステップ2:ラフなモックアップステップ2では、いきなりアイデアを形に落とし込む。身近な素材だけでまずは全体像を組み上げてしまうので、アイデアを具現化する際のコンフリクトする要素については、この段階である程度洗い出せる。
・ステップ3:完成形ステップ3では、ステップ2で作り上げたものの完成度を高めることに集中して制作する。ステップ2の段階でどのように具体化するかは検討済みであるため、実現方法や素材のブラッシュアップに集中して作業を行う。
ハンズオンセミナー会場に置かれたハードウェアスケッチの作成手順
ステップ1のアイデアを書き起こす際のポイントが説明されている
デバイス制作には、より簡易に回路を組み変えたりプログラム制作が簡便に実行できるよう、ブレッドボードと回路、各種センサモジュール操作用のライブラリが用意されている。これらの基板やソフトウェア類は一般に公開されており、入手も容易だ。

ハンズオンセミナーの様子
会期中におこなわれたハンズオンセッションではガングプロジェクトの授業風景画そのまま会場で再現された。「遊び」とは何か、その本質について考えることから作業はスタートする。写真はハンズオン講師の1人、James Gibson氏
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