開発者は自ら“改善”に向けて立ち上がろう組み込み開発者の本音トーク(後編)(1/3 ページ)

何もしなければ何も変わらない。絶望的な状況に抗して、強い意志と勇気を持った開発現場のリーダーたちは行動を起こし始めた

» 2006年02月10日 00時00分 公開
[宮崎 裕明 横河ディジタルコンピュータ,@IT MONOist]

――前編に引き続き、組み込みソフトウェア開発の改善活動にかかわってこられた方々の本音トークの後編をお届けします。参加者は前編と同様、半導体関連装置の画像処理ソフトウェア開発を経験されたA氏、携帯電話のソフトウェア開発の経験が長いB氏、測定器ソフトウェア開発のスペシャリストのC氏です。


座談会参加者 座談会参加者。今回は参加者に本音を語ってもらうため、各人の氏名や所属、取引先などは伏せ、覆面形式とした。(編集部)

出世するのはハード出身者ばかりという現実

―― 組み込み開発では、ソフトウェアをちゃんと開発できる期間やリソースを確保してくださいということを、上に理解してもらうことが解決につながるのでしょうか?

C氏 組み込みってね、一種の階級社会なんですよ(笑)。ハード屋が一番偉い。ハード出身の人がどんどん出世する。しかも、頭でっかちで、分かってくれなかったりする(笑)。ハードは基板を改版するとお金が掛かるので、すごく嫌がるのですが、ソフトの仕様変更は平気。人件費は開発コストだと思っていないんですよ。

B氏 例えば、チップを1つ変えるとこれだけ安くなる、なんていうこともある。そのことを発売の2カ月か3カ月前にいわれて、もちろんソフトの改造は必要だし、必ず発売時期は遅れるだろうし、良い品質のものを作れる時間はない、しかもこれだけコストが掛かる。長い目で見て、それでもやりますか? って話したことがあります。

C氏 でもね、ソフト屋も良くないところがあるんですよ。開発メンバーに見積もりを出せっていうと、ベストケースを出してくる。こんなの出したら、そのとおりにやれっていわれるよ、また地獄みたいな生活するんだよ、いいのって。これって中毒なんじゃないですかね、そこに快感を得ているんじゃないかな(笑)。

A氏 確かに、出してくる見積もりを見ると、デバッグしても何も出てこないような前提で成り立っていたりする。もちろん、ソフトは「バグ、ゼロ」が目標かもしれないですけど、そんなのはあり得ない。ソフト屋さんも自分のレベルを上げていかないといけないですよね。上が悪いとか環境が悪いとかいっているだけじゃ駄目だと思います。そういうことを意識してほしいと思って、開発者向けの情報を流していますけど。

C氏 ソフトの開発量が膨大になったといいつつ、その代わりにOSがちゃんとしてきたり、ミドルウェアがしっかりできてくるなど、周辺の環境は整ってきていますよね。それなのに膨大だ膨大だといっているだけでは、ある意味では自己努力が足りないのではないかな。そういっている自分も耳が痛いけど。単に膨大だとか期間が短いだけでは済まされない部分もあると思う。かっこよくいうと、プロ意識かな。従来の開発手法は何かが悪いとみんな思っている。でもその一方で、いまのやり方が一番速いのも事実。新しいやり方を試してみたいけど、納期に最短で近づこうと考えると、いまのやり方しかない。それの繰り返し。新しいことをやると時間もかかるし、うまくいくという保証もない。いままでのやり方を同じようにやれば、見通しが立つ。だから変えない。でも、実際自分たちが選んでいる道は、火に入っていく、これまでと同じ道なんですよね。しかも、少しずつつらさが増しているのに。

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