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» 2008年02月13日 00時00分 UPDATE

組み込み業界今昔モノがたり(4):組み込み業界のいま “至るところにギャップあり” (1/2)

経営トップと現場、マーケティング部門と現場……。組み込み開発現場にまん延するギャップとは? その問題を意識することから始めよう

[吉田育代,@IT MONOist]

その決定は、本当に現場のことを考えている?

 「昔の現場にはもっと権限があったんですが……」――中根さんは開口一番こういった。

 中根さんがバリバリの第一線だったころ、市場に出す製品の最終品質については製造現場に決定権があったという。工場長に権限があるというか、発言を尊重する気風があり、工場長が「こんな製品は出せない!」といえば、事業本部長であろうが、社長であろうが、その言葉に素直に従ったそうだ。

 それは、組み込み製品の本質的な価値が性能や品質にあり、それを作り込んでいるのが“実際にモノ作りをしている現場だ”ということをよく分かっていたからである。三権分立ではないが、権力は権力として存在しながらも、それぞれの役割に敬意を表しているようなところがあったという。

 しかし、いまの多くの企業は組織が完全なピラミッド構造になってしまった。トップの決定は“絶対”である。ビジョンを示すのが仕事であり、全責任を取るのだからそれだけの権限が与えられてもしかるべきなのかもしれないが、“トップはモノ作りの何たるかを知らずにゴールを設定しているきらいがある”と中根さんは危ぐする。

 単に収益確保の観点から、横並び意識から、企業としての威信から、製品の投入や生産計画を決定してしまっているのではないか? それは自社に十分な技術があるかどうかを見極めたうえでの決定なのか? 持てる強みを生かそうとしているのか? 中根さんは自身のコンサルティング活動や新聞報道などを通じてこのような疑問を抱くことがあるという。

フリー・アーキテクト 中根隆康氏 フリー・アーキテクト 中根隆康氏は、ネクスト・ディメンションの取締役社長でもある

 また、今日はマーケティング全盛の時代で、“顧客の声を聞いて作ること”が大前提となっているが、マーケティング部門は顧客の声を聞き過ぎて、仕様を肥大化させていないだろうか? あるいは、顧客は「馬が欲しい」といっているのに、それを「鹿」だととらえ違いをしたり、提案が重要だからと顧客は何もいっていないのに、「こんなものも必要なはず」「あれば便利なはず」と自己満足的な拡大解釈をしているのではないだろうか?

 これは私自身の話になるが、既存の携帯電話が海外でもそのまま使えるようにしたくて、対応している最新機種に乗り換えることにした。私にとってはそれさえ実現できればいいので、流行のワンセグ機能などはいらなかったのだが、最新機種にはこの機能が当たり前のように付いている。仕方がないのでその中の1つを購入したが、ワンセグを使う場面はやはりない。家では普通のテレビを見るし、外出先では仕事をする。唯一“いま見られれば”と思うのが地下鉄で移動するときなのだが、そこではうまく映らない……。というわけで、いまだに宝の持ち腐れ状態である。私にとっては完全にオーバースペックなのだ。

 「これがあらゆる製品に当てはまるというわけではないが、機能は多ければいいというものでなく、ニーズに合っていなければそれこそ何もならない。いたずらに開発現場の首をしめるようなマーケティング先行のモノ作りは避けなければならない」と中根さんも語る。

現場の中にすら大きなギャップがある〜今日の現状〜

 経営トップは現場を分かっていない。マーケティングも現場を分かっていない。では、現場そのものは十分理解し合っていて、何の問題もないのか?

 残念ながら、これもやはり一枚岩とはいかないようだ。ソフトウェア担当者とハードウェア担当者との間が完全に分断されてしまい、そこに大きなギャップが生じているのである。連載第2回「モノ作りの意識が薄れつつある現状」で、中根さんはソフトウェアの動きを考えず、自分の思いこみでCPU設計を行った技術者の話をしてくれたが、以前はお互いが相手のことを考え、少しぐらいなら双方の技術に手を出せたという。

 例えば、ソフトウェア担当者が動作検証のために簡単な回路を作成するぐらいのことは普通にできたのである。ところが現在は開発規模の巨大化、複雑化、さらには市場投入の短納期化が著しく進み、完全分業体制を取らざるを得なくなった。そのこと自体は担当者双方の責任ではなく、仕方がない面もある。しかし、組み込み製品はハードウェアとソフトウェアの2つが合わさって1つの製品となるという認識が欠落し、お互いに対して関心を持たな過ぎる、と中根さんは嘆くのである。

 さらに昨今では、なんとソフトウェア担当者同士にもギャップがあるという。組み込み業界で人材不足が深刻なことはつとに有名だが、ここ最近、それまで別の分野でソフトウェアを開発していた人間が続々と投入されている。同じソフトウェア開発なのでそんなに違いはないと思いがちなのだが、実はそうではないらしい。組み込み業界での経験が長いソフトウェア担当者は、ハードウェアで問題が起きたとき、「ソフトウェアで何とか解決することは可能か?」と考える。しかし、一般的なソフトウェアを開発してきた技術者は「ハードウェアの問題はあくまでハードウェア側で解決すべき、それは守備範囲外!」と主張する傾向があるのだそうだ。こんなに大きく考え方が違うと、共同作業は難しい……。

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