その改善力であと何年、会社は存続できますか失われた現場改善力を再生させるヒント(2)(2/2 ページ)

» 2008年03月10日 12時57分 公開
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現場改善力アップに必要なタイプ別の取り組み方

 さて、「現場改善力チェックシート」を使って、皆さん自身の現場改善力を3つのタイプに分類してみました。ここではタイプに合わせて、それぞれどのような取り組みを考えていけばよいかを示したいと思います(図1)。

 どのタイプの方にも、持って生まれた個性がありますし、好みや得手不得手もあります。また社内の人材育成といっても本人の努力だけでは成し得ない部分もたくさんあり、組織的に取り組んでいくことが望ましいのですが、そうはいかない現場の実態があることは前回も記しました。

 そんな逆風下であっても、タイプXやタイプYの方々には現場で能動的な働きかけを行ってもらえると期待ができます。なぜなら、程度の違いはあれ、仕事を進めていくうえでのさまざまな悩みや問題を解決するために、参考書籍を探したり、専門家に相談したりする自発性と向上心を備えていると思うからです。この記事を読むこと自体、その表れといってよいのではないでしょうか。

図1 タイプ別取り組みレシピ 図1 タイプ別取り組みレシピ(© GENEX Partners)

 もし問題解決の糸口を模索するのであれば、分量を多く当たるより、簡単な原因の仮説(注2)を作って、対象を絞って探しましょう。図解による改善の手引書やマニュアル本もバカにしたものではありません。ちなみに筆者が勉強するときも、そのまま使えそうなフォームやツールが出ているものを探します。このとき最初は興味本位でもよいので、ぜひ実務の中で試してみましょう。


注2:仮説 ある現象を理論的に説明するための経験上の仮定のこと。通常その真偽は実験や観察によって検証する。


 少し調べて知識を蓄えたら、自分と同じ問題意識を持っていそうな有志を探してみましょう。この際、喫煙所で愚痴っている同僚や、何かと文句の多い後輩でも仲間になってもらえたらよしとします。「三人寄れば文殊の知恵」ということで、1人で悩むよりよほど健全です。多少時間とお金に余裕があれば、外部セミナーなどに参加してみることをお勧めします。社外に人脈を得る機会ですし、鮮度の高い情報を手に入れることができます。

 ここまできたら、あなたも立派な現場改善リーダー候補です。次の段階では、ぜひ現場有志を集めた勉強会を開いてみましょう。ここで扱うテーマはいろいろと思い付くでしょうけれども、ぜひ検討に入れてほしいテーマは、

  • 自分たちが業界トップか2位になるための方法
  • 現場で起こるリスクへの備え

の2つです。大げさな内容に聞こえるかもしれませんが、志は高く掲げましょう。もちろん実際の取り組み活動テーマは、もっと違う内容になるかもしれません。例えば「誰よりも品質の高いはんだ付けができるようになる」とか「どこよりも清潔な作業現場を実現する」といったテーマの方が現実的でしょう。しかしこの「誰よりも」や「どこよりも」という言葉に込められる志こそが、改善力向上への第一歩なのです。

 スピード重視が叫ばれる今日の現場では、改善を推進するメンバーにとって逆風の吹く中での船出となりますので、現場改善力をアップさせるきっかけをいかに作るのかが最初の関門となります。外部から現場改善の「プロフェッショナル」を呼び込むこともきっかけにはなりますが、初期投資コストの負担が大きいことが予想されます。

 最もハードルが低いやり方は、やはり勉強会レベルから始めることだと考えます。これは何の強制力もない緩い体制に見えますが、扱う対象やテーマによって効力が変わってきますし、この時点では何よりも現場メンバーの自発性が大切です。また従来は大企業ではQCサークルに代表される小集団活動が行われてきましたが、最近は形骸(けいがい)化していることも多いように見受けられます。衰退した理由はともあれ、こうしたインフラを再活用してみることも1つの手段です。加えてこれらの取り組みは、通常チーム活動として行われるはずなので、ぜひ引っ込み思案のタイプZの方も巻き込んでほしいと思います。

 また少しでもこのような動きが出てきたら、できれば現場責任者や経営者などにバックアップしてもらえると活動が加速します。例えば経営者に直接モノづくりに対する夢やビジョンを語ってもらうことでもいいですし、ベテランの方々から自社の自慢話や苦労話を聞かせてもらうのでもいいと思います。つまり「仲間と一緒に良い現場、会社にしたい」という改善活動への動機付けを作ることが重要なのです。現状では、冒頭に述べた2つの思想が、経営責任者から現場に語られる機会があまりに少ないのだと考えます。

 いずれのタイプの方であっても、できない改善はありませんし、能力向上の可能性は十分にあります。ただし「やる気」と「努力」だけは、本人に任されているため他人にはどうにもできない領域です。

 次回以降は、具体的に現場改善力をアップさせていくための方法を説明したいと思います。


筆者紹介

眞木和俊(まき かずとし)

株式会社ジェネックスパートナーズ
代表パートナー

GEでシックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルトとして参加後、経営コンサルタントに転身。2002年11月ジェネックスパートナーズを設立。日本企業再生を目指して企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』(ダイヤモンド社)、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』(ダイヤモンド社)などがあり、中国、韓国、台湾などでも翻訳出版されている。

 ジェネックスパートナーズ
お客さまとともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から「成果を創出できるマネジメント手法の導入」および「人材を競争力の源泉にするためのリーダー育成支援」を行うプロフェッショナルファーム。国内外を問わず幅広い企業、公共団体に対して、数多くの企業変革、人材教育の実績を持つ。



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