有限要素法は解析要素がバネだと考える仕事にちゃんと役立つ材料力学(5)(2/3 ページ)

» 2008年05月14日 09時54分 公開

変形があって、ひずみがある

 さて、構造や部品に力が掛かると応力が発生するのですが、同時に起こるプロセスとして、変形があります。

 材料力学の世界では、この変形を「ひずみ」というもので表現します。「ひずみ」は、材料力学を理解するために、応力と同様にとても大切な概念です。今回は「ひずみ」を理解しましょう。ひずみは応力と同時に発生します。ひずみが発生しているのに、応力が発生していないとか、応力が発生しているのに、ひずみが発生してないとか、そういうことはありません。

 さて、またまたイメージの時間です。身近なモノで感触が分かっているものとして、円柱の形をした消しゴムを例に挙げます。

 消しゴムを親指と人さし指で挟んで持って、グィっと押してみましょう。両側から押さえられた消しゴムは押された方向に縮んで、中央が少し膨らみますね。

 今度は消しゴムを両側から引っ張ってみましょう。両側から引っ張られた消しゴムは引っ張られた方向に伸びて、中央が少し細くなりますね。

 これは消しゴムなので、肉眼でも変形は見ることができますね。これが鉄やアルミなど金属では見ることはできませんが、同じような形状に変形しています(図1)。

alt 図1 円筒状の物体の両端を押したり引っ張ったりすると?

 「ひずみ」とは力を受けたときの変形量を元の長さで割ったものです。つまり元の長さに対して、縮んだり伸びたりした変形量の割合がひずみになります。ひずみの単位ですが、長さを長さで割っているので、単位がありません(図2)。

alt 図2 ひずみとは?

 金属材料などのひずみは、非常に小さく、1×10-6ミリメートルとかそれくらいのオーダーです。ひずみは計測することができます。ひずみゲージと呼ばれるものを実験するモノに張ってひずみを計測します。

垂直ひずみとせん断ひずみ

 ひずみも応力と同じように成分があります。応力のときと同じように、皆さんの設計している部品から“極限に小さい”サイコロを切り出して考えてみましょう。もちろん部品には何らかの力が掛かっています。そしてその極限に小さいサイコロには変形してひずみが発生し、応力が発生しています。応力を説明した3次元のサイコロで描くとゴチャゴチャしてしまうので、今回は平面的な図で表現してみました。

 そのサイコロを真横から見てみると、ひずみはこの図のような成分に分解できるはずです(図3)。

alt 図3 ひずみの成分 「垂直ひずみ」と「せん断ひずみ」

 垂直ひずみはε(イプシロン)、せん断ひずみはγ(ガンマ)で表現されます。応力に続き、またまたギリシャ文字の登場です。老婆心ながら、材料力学に使われるギリシャ文字をまとめておきますね(図4)。

alt 図4 ギリシャ文字の意味一覧

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