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» 2008年05月26日 00時00分 UPDATE

組み込みイベントレポート:トヨタ!? 日産!? どうなるFlexRay普及への道 (3/3)

[八木沢篤/上口翔子,@IT MONOist]
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 組み込みシステム開発では一般的にエラーの検出が遅れれば遅れるほど、修正に必要なコストと時間が膨大するといわれている。設計エラーを早期に検出、修正できれば、品質向上のみならず、コスト削減や納期短縮といった3つの課題解決効果が期待できる。

 このような開発プロセスの改善策として近年注目されているのが、「モデルベース開発」である。

モデルベース開発ツールの最新動向

 サイバネットシステムは、同社で販売する「MATLAB/Simulink」によるモデルベース開発を出展した。Simulinkで作成した実行可能な仕様書モデルを開発の上流から下流まですべてのプログラム、プロセスで共有する。統一された環境でシステム開発を行うことで、開発の初期段階でのシミュレーションによる動作確認が容易になり、工程間でのミスコミュニケーションの抑制を実現するという。

 作成した仕様書モデルは、要求仕様書とリンクさせることも可能。シミュレーションを繰り返すことで実機では実現困難なエラーモードなどを体系的に解析する。実行可能な仕様書モデルからは、自動的にコードを生成することが可能だ。ハードコーディングによるヒューマンエラーを抑制し、プログラマーの経験に依存する実装効率やコード品質のばらつきを均一化するという。

 同社ブースでは、LEGO Mindstorms NXTを使ったモデルベース開発のデモを行った。制御ロジックの組み込みから実機検証までの流れを二輪型倒立振子ロボットを用いて紹介していた。

デモ機は自律的に前後のバランスを修正し、倒立状態を保っている 画像11 デモ機は自律的に前後のバランスを修正し、倒立状態を保っている

 運動を伴った機器のソフトウェア制御は、ソフトウェア単体で完結するGUI開発のようにはいかない。展示されたモデルベース開発ではハードウェアを作る前段階として、コンピュータ上に構築した仮想モデルで、ある程度までの開発・検証を進めているという。

関連リンク:
サイバネットシステム
MATLAB/Simulink

 キャッツは、昨年のESECでも出展した「ZIPC++」に新たに5つの機能を加えたCASE(Computer Aided Software Engineering)ツール「ZIPC Ver9.1」を出展。ユーザビリティの強化、モデルの書式チェック機能の強化、実装前のモデル・デバッグ機能の強化、MISRA C準拠の生成コードの追加、対応デバッガの追加など機能拡張が行われたという。

 モデリング、デバッグ、コード生成、試験といった既存機能にこれらの新要素が加わったことで、「分析−設計−実装−試験」の各フェイズをよりシームレスに開発できる環境を実現したとのこと。

各STM(仮想的な通信回線)のステータスを別ビューアにて参照できる 画像12 各STM(仮想的な通信回線)のステータスを別ビューアにて参照できる

 また、横河ディジタルコンピュータの「microVIEW-PLUS」、東芝セミコンダクターの「TIDE」、NECエレクトロニクスの「ID78 KOR-QB」が2007年9月に対応デバッガとして加わったことにより、開発の下流工程においてより幅広いデバイス群に対応することとなった。


 日本テレロジックはESEC開催初日(2008年5月14日)に、「Telelogic Rhapsody 7.2」と「Rhapsody Eclipse プラグイン」の発表を行った。また、同社ブースにおいても同製品の展示・デモが行われた。

 Telelogic Rhapsodyとはソフトウェア開発における設計から実装までをサポートするモデル駆動型開発環境で、主に自動車分野や通信分野などで使用されているという。同製品は、UML 2.1およびSysML 1.0に準拠しており、このほかにもDoDAF(米国国防総省アーキテクチャフレームワーク)やAUTOSARのDSL(Domain Specific Language)を使ったシステム設計・ソフトウェア開発が可能だ。そして、開発プロセス全域におけるモデルベースのシミュレーションとテストによる検証と妥当性の確認。さらにはC、C++、Java、Adaのアプリケーション生成が行えるという。ちなみに、コードとモデルは同期を取っているため、どちらで開発してもその整合性は保たれるとのこと。加えて、モデルならびにコードを基にしたドキュメントの自動生成も可能だという。これらの機能により、「設計担当と開発担当とのコミュニケーションの向上」「ビルドと設計を繰り返しテストすることで不具合の早期発見」「アプリケーションやドキュメントの自動性による開発期間の短縮」が図れるという。

 今回新たに発表されたTelelogic Rhapsody 7.2では、“ソフトウェア資産の再利用に対するブレークスルー” “システムエンジニアリングへの付加価値”の機能が拡張されたとのこと。

 ソフトウェア資産の再利用に対するブレークスルーでは、既存コードやサードパーティ製ライブラリのコードをビジュアル化して、アプリケーションの構造を明確化。これにより、新しい機能を追加する際にそのインターフェイスを容易に理解できるようにしたという。既存コードの中にはC言語で記述されているものが多いため、今回のバージョンアップでC言語のコード尊重(保存)をサポート。既存コードの構造や名前付け、位置、順番を管理しながら再利用できるという。

ジョージ・ルブラン氏 画像13 Telelogic, An IBM Company ビジネス開発/プロダクトマーケティング 担当副社長 ジョージ・ルブラン氏

 Telelogic, An IBM Company ビジネス開発/プロダクトマーケティング 担当副社長 ジョージ・ルブラン氏は、「“すべての製品の42%が既存の製品をベースとしており、平均ではアプリケーションのコードの40%が再利用である”という調査結果がある(米ベンチャー・デベロップメント社調べ)。新規に作成されるソフトウェアのすべてを開発者が新たに記述するわけではなく、大抵は再利用したい既存コードがある。しかし、残念なことに、そのほとんどが文書化されていないのが現状だ。これらをモデル化して、そのドキュメントを自動生成できれば開発者の役に立つだけでなく、開発効率も上がるはずだ」と同製品の優位性をアピールした。

 システムエンジニアリングへの付加価値では、要求テーブル/割り当てテーブル/2次元マトリックスに対応することで、モデルやコードだけでは分かりにくい情報を管理。また、システム内で使用されている単位(メートル、フィートなど)を比較するトレード分析や、設計の完全性/モデル統合/正確性のチェックなどの一貫性チェックの改善がなされた。これに加えて、設計の振る舞いを顧客などに確認する際に役立つグラフィカルパネル機能も追加。画面上にモックアップを配置して視覚的にシミュレーションを行うことができるという。

日本テレロジック ブースで行われたセッションの様子 画像14 日本テレロジック ブースで行われたセッションの様子

 Rhapsody Eclipse プラグインとはその名のとおり、Rhapsodyの機能をEclipse(ソフトウェア統合開発)環境へ統合するもので、同一画面上に階層表示されたモデル情報、ビルドエラー、図などを表示する。これにより、コード中心のソフトウェア開発者でも違和感なくRhapsodyの機能を使用できるとのこと。なお、Rhapsody 7.2は2008年5月に出荷開始、Rhapsody Eclipse プラグインは2008年夏にリリース予定だ。




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 毎年のように規模を拡大し続けているESEC。主催者であるリード エグジビション ジャパンによると今年も出展社数、来場者数ともに過去最高を記録したという(同時開催展含む)。まさにESECは上半期最大級の組み込み関連イベントといえるだろう。このように、1日ではすべてを見て回ることができないほど大規模なイベントだが、実際に足を運ぶことで、組み込み業界の盛り上がりを肌で感じることができた。

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