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» 2008年06月09日 00時00分 UPDATE

続・組み込みシステムに迫りくる脅威(3):メーカーを悩ませる組み込み機器の想定外の使われ方 (1/3)

メーカーが想定していなかった使われ方がユーザーによってなされる場合がある。これってホントに“安全な使い方”といえるの?

[黒木秀和(ユビテック/監修:独立行政法人情報処理推進機構),@IT MONOist]

 前回紹介した「生活インフラとの接続に潜む脅威と注意点」に引き続き、今回は「想定外の利用方法に潜む脅威と注意点」について解説します。

 なお、調査方法や接続事例については前回の1ページ目、またはIPAが公開している調査研究の報告書を参照してください。

想定外の利用方法に潜む脅威と注意点(1)〜利用シナリオの概要とその事例

 これまでの家電では、同じメーカーの製品(機器)同士でないとつなぐことができない、いわゆる“メーカー独自規格”のインターフェイスを持つことが多くありました。現在でも存在しているこのようなメーカー独自規格のインターフェイスを持つ機器は、接続可能な機器が限られているため、そうした機器などと接続しても“問題ない”ということが(ほとんどの場合)確認されています。

 しかし、近年の家電はそのような独自規格ではなく、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)やUSB、Ethernetなど、仕様が公開されており誰もが利用可能な規格に基づくインターフェイス(オープンな規格のインターフェイス)をサポートしているケースが多くなってきています。なぜなら、オープンな規格のインターフェイスをサポートすることによって、メーカーに関係なくさまざまな機器同士を相互接続することが可能となり、利用者の利便性が飛躍的に向上すると期待されているためです。さらに、このようなインターフェイスを用いてその規格に合致するように機器を製造することで、接続される可能性のある多くの機器との接続テストを省略できるといったメーカー側のメリットもあります。

 オープンな規格のインターフェイスを採用すると、このようなさまざまなメリットを得ることができます。しかし、一方では仕様が公開されており誰もが利用できるが故にその規格に沿ったさまざまな種類の機器が製造され、その結果、家電が設計・製造された時点では“想定もしていなかった”ような機器と接続されてしまうといった可能性が出てきます。

 また、オープンな規格のインターフェイスは、利用者のニーズに合わせて下位互換性を保ったまま拡張されることが多くあります。例えば、USBインターフェイス規格が1.0から1.1、そして2.0へ拡張されたのがその好例です(USBインターフェイス2.0規格は下位互換性を保っているので利用者は従来の1.0や1.1規格のものでも利用できます)。このように、インターフェイスの規格が拡張されることで、機器の設計・製造時にメーカーが想定もしていなかったような種類の機器と接続される可能性が十分に考えられます。特に家電は、5年、10年という比較的長い期間にわたって利用される場合もあるので、その家電の設計・開発時にまったく想定していなかったような新旧の機器と接続されたり、そのような機器と連携した利用方法が考えられたりする可能性が高くなります。

 組み込み機器にオープンな規格のインターフェイスが搭載されることにより、利用者の利便性は向上しますが、今後の組み込み機器の発展とともにほかの機器との組み合わせが多様化することが考えられ、それに伴い懸念事項も出てきます。例えば、何らかの問題が発生した際、“どこに原因があるのか?”ということを、利用者はもちろんのこと、それぞれの機器メーカーにも分からず、そのまま問題・被害が拡大していくことなどが考えられます。

 今回は、組み込み機器が想定外の使われ方をするシーンとそこに潜む脅威について見ていきたいと思います。はじめに、利用事例を挙げます。なお、想定外の利用により各組み込み機器同士でやりとりされる情報(データ)は、コンテンツデータであったり、機器の現在の状態であったり、制御信号であったりと実にさまざまです。

機器の種類 説明
ネットワーク対応テレビ ネットワーク経由でコンテンツを受信・表示したり、チューナーで受信したコンテンツをネットワーク経由で送信したりすることができるテレビ
ネットワーク対応DVD/ハードディスク(以下、HDD)レコーダ ネットワーク経由で、コンテンツを送受信・格納したり、遠隔操作したりすることができるレコーダ
HDD内蔵カーナビ HDDなどの大容量記憶媒体を内蔵するカーナビで、HDDを取り外したり、カーナビ本体を取り外したりすることで、家庭内に持ち込める製品
カーナビ用リビングユニット カーナビから取り外したHDDを家庭内ネットワークやPCに接続するための装置
コインロッカー 携帯電話に搭載されたICカード機能でドアの開閉が可能なコインロッカー
表1 ほかの組み込み機器と情報のやりとりが可能な機器

その1 − カーナビのHDDを家庭内ネットワークに接続 −

 本体もしくはHDDを取り外すことが可能なカーナビを家庭内ネットワークに接続し、カーナビの地図情報をネットワーク経由で更新したり、PCやAV機器のコンテンツをネットワーク経由でカーナビのHDD内に移動したりすることができます。

その1

その2 − 携帯電話をさまざまな機器の鍵として利用 −

 携帯電話に搭載されているICカード機能を利用して、自宅のドアや駅のコインロッカーなどの鍵として用いられるようになっています。また、メールで鍵を送信して知人などに一時的に使える鍵を配布したりすることも可能です。このような機能の利用により、利用者はいくつも鍵を持ち歩く手間から解放されます。さらに、電子マネー機能を持つ携帯電話を利用することで、外出時には携帯電話1つを持ち運ぶだけで済ませることができるようになります。

その2

その3 − PCとUSB端子付きテレビの接続 −

 テレビやDVD/HDDレコーダにはUSBインターフェイスを持ち、デジカメなどのモバイル家電を接続してコンテンツの交換を行うものや、PC向けの拡張用HDDを接続して記録容量を増やすことができるものが存在します。その一方で、USBを介した接続において、PCとPCを直接USBケーブルで接続し、互いのPC内のHDDの中身を参照できるような特殊なUSBケーブルも販売されています。このケーブルを用いると、PCからテレビやDVD/HDDレコーダの中身をのぞき見ることができる可能性があります。

その3
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