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» 2008年06月12日 00時00分 UPDATE

ジレンマ解消! TOC思考プロセスの基本を学ぶ(1):あなたの行動を制約しているのは“ジレンマ”だ (1/3)

TOCは工場の生産性を改善するだけの手法にとどまらない。相反するニーズの板ばさみに悩まされる組織の「ジレンマ」を解消し問題解決を目指す体系的なアプローチ「TOC思考プロセス」を紹介しよう。

[村上 悟/ゴール・システム・コンサルティング,@IT MONOist]

「ジレンマ解消! TOC思考プロセスの基本を学ぶ」連載目次

第1回:あなたの行動を制約しているのは“ジレンマ”だ

第2回:社内の対立を解消するツールとその使い方を伝授

第3回:芋づる式に問題の根本を発見し解決するツール

第4回:ジレンマを解くツールの使い方を詳細に学ぼう

第5回:“それができれば苦労しないよ”と決め付けないで

第6回:“空飛ぶブタ”を地上に引きずり降ろして勝利宣言



 皆さんこんにちは、ゴール・システム・コンサルティングの村上 悟です。今回の連載では「ジレンマ解消! TOC思考プロセスの基本を学ぶ」と題して、皆さんが仕事上で直面するさまざまな問題に対処する方法として、TOCの「思考プロセス」という問題解決の手法を分かりやすく紹介していきます。

 前回の連載「利益創出! TOCの基本を学ぶ」の第2回「在庫がたまり納期が遅れる理由〜『2つの勘違い』」でお話ししたように、工場には原価計算から導き出された「皆が忙しく働かなくてはならない」パラダイムと、納期遅れから身を守る回避策の結果として行われる「見込みで、早期に」投入する生産指示によって、二重の「ボトルネック工程を生み出す仕組み」が存在し、納期を混乱させ生産性を悪化させています。

 さらに、この混乱に拍車を掛ける、顧客、営業、工場の担当者がそれぞれ読む人間行動の「サバ」が存在し、問題をさらに複雑にしています。現実に立ち向かい問題を解決するために「どういう状態を作ればよいか」は前回の連載を最後まで読んでいただければイメージが沸いたと思います。

 しかし、もう一方で「それは理想だけれども、現実は……だから」と感じられた方も多いかもしれません。実はこの「……」がくせ者です。「じゃあやってみるか」と思っても、多くの場合この「……」が皆さんの思考を制約して実際の行動を鈍らせるのです。

現実の生産管理は問題とジレンマだらけ

 「……」と感じる背景には、現実の生産管理担当者の業務が次から次へと発生するさまざまな問題やトラブルとの戦いであることも1つの理由なのです。あちらを立てればこちらが立たず、こちらを優先すればあちらから火の手が上がるというように、膨大な数の問題を1つ1つ個別に解決する努力は、プールに浮いたたくさんのピンポン球を両手で必死になって沈めようとするのと同じかもしれません。

 前回の連載でもお話ししましたが、工場がもうかるためには「顧客ニーズに対応し、なおかつ工場が安定的に稼働する」という、相反するニーズを満たす必要があります。この2つを実現するために、製造の担当者は生産性を向上させる努力をし、営業の担当者は売り上げを求めて日夜努力を続けています。しかし両方にはさまれた生産管理担当者は、常にどっちつかずのジレンマ状態が続いているはずです。

 前回の連載で紹介したDBR(ドラム・バッファー・ロープ)の仕組みも、この2つのニーズを同時に実現するための特効薬の1つです。いずれにしてもこのジレンマは工場の宿命ともいえるものであり、このジレンマを解き、周囲の人や組織を思ったように動かせれば、著しい成果を挙げることも夢ではありません。本連載では皆さんのジレンマを解消し、より良い工場を作るための問題解決方法を一緒に考えてゆきましょう。

問題とジレンマを定義する

 一般的な問題解決を扱った書籍やセミナーでは、問題とは「あるべき姿と現状のギャップ」と教えています。一方、TOCでは問題の定義を少し広げ、問題というものは二者間の「ジレンマや葛藤」ととらえます。ジレンマ(dilemma)とは「ある問題に対して、2つの選択肢が存在し、そのどちらを選んでも何らかの不利益があり、態度を決めかねる状態」を指しています(引用:ウィキペディア百科事典)。要するにTOCでは2つの選択肢が存在し、どちらか一方に行動を決めかねる状態そのものが「問題」であるとします。行動を決めかねて、どっちつかずでふらふらしたり、本当はAをするべきだと思っても、Bをせざるを得ないために多くのトラブルや衝突が発生すると考えるわけです。

 こう考えてゆくと、従来の問題のとらえ方の基本である「あるべき姿と現実のギャップ」とは「ジレンマである」と考えればよく、そのジレンマの存在によって取りたい行動が取れず、その結果にさまざまな「良くない出来事」(注1)が発生するのだというのです。


注1:良くない出来事 TOCではこれをUDE(Un-Desirable Effect)と呼びます。「ウーディー」と発音してください。


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