連載
» 2008年07月14日 00時00分 UPDATE

甚さんの設計分析大特訓(4):加圧式ボールペンを設計分析しようじゃねぇかい! (1/3)

仰向けで寝ていても風呂に入っていても、スラスラ書けるボールペンの設計分析をしよう。シンプルに見えるペンにも素晴らしい仕掛けがひそむ。

[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),@IT MONOist]

当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


もしあなたなら、どう設計しましたか

 皆さん、第3回の「零戦の要求仕様の優先順位を考えようじゃねぇかい!」は、いかがでしたか? 航空機、特に戦闘機となれば「なんでもあり!」では飛ぶことさえできません。「設計思想とその優先順位」の争いとなるわけです。一歩間違えれば、パイロットの運命どころか、国の運命すら左右してしまうこともあったのです。

 若き主任設計者 堀越二郎氏もさぞかし悩んだことでしょう。零戦の設計は、徹底した軽量化によってすべての相反する仕様に優先順位をもって応えたのですが、軽量化し過ぎたことがアキレス腱になっていたのです。

 特に、背後から飛んでくる銃弾からパイロットを守るため厚さ10mmの鉄板を装備することは、世界の常識であったにもかかわらず、これを排除したことが致命的でした。絶大なパワーを誇るエンジンを搭載したアメリカ空軍の新型戦闘機は零戦の背後に回り、防弾のないパイロットを狙い撃ちにしたのです。現代の若き設計者に意見をお聞きしたいものです、「あなたなら、どのように『設計思想とその優先順位』を設定しましたか?」と。

今回も、理解度チェック

 さて第4回に進むに当たり、下記にチェックポイントを設けました。筆者として、是非、理解していただきたい項目です。3項目以上理解していた方は先へ進みましょう。そうでない方は、第1回第2回第3回を読み返してください。

理解度チェック

  1. 日本の商品は、オールインワン商品が多いと思う
  2. 設計思想とは何かを前回よりも理解できた
  3. 設計思想には優先順位があることを学んだ
  4. 多くの相反する要求は、優先順位を設定する
  5. 設計とは、まずは設計思想で勝負が決まる

甚さんお気に入りの文房具を分析する

 今回は日本の文房具に込められた素晴らしい設計思想、そしてそれを支える技術を解説しましょう。

甚

良君! Good Job! 灯油ポンプ、零式戦闘機と2つ続けて良く分析した。感心なやつだ。早いとこ、3次元モデラーから脱皮するんだ。


良

ありがとうございます。 大学でも、いまの職場でも、こんなに緊張しながら学んだことはありません。これが、プロフェショナルな世界なんですね?


甚

オメェ、近頃やけに素直じゃねぇかい。……さては、職場で何かあったな?


良

検図もできない、特許もチェックできない――そう、あの課長の下にいても僕の将来はないと思うんですよ。いっそのこと、甚さんの会社で働こうかと思いまして。


甚

べらんめぇ! 大学に6年間も行きやがって。そんな学歴でオレんちで通用すると思ってんのか? オメェこそ、図面の1枚も描けやしねぇじゃねぇかい! “3日3月3年で3割が辞める”って、このことか!!


良

またエリカちゃんと交代しろっていうんでしょう? そうでしょう。彼女は製図専門学校出身ですから。僕と違って、あくまで実務に必要な専門知識をみっちり勉強してきたんでしょうし。


甚

ばっかもーん! なーにいじけていやがる!


 良君は、いすに座ってガックリとうなだれています。甚さんとの特訓を経てきたことで、自分自身の仕事における反省点が十分身にしみているのでしょう。

 甚さんも怒鳴ってみたものの、少しいい過ぎたかもしれぬと考えたのか、励ますように良君の肩をたたきます。

甚

もういいってことよ。オメェの若さならいつでもやり直せるってぇもんよ。さてと今回は、『設計思想とその優先順位』の続きってことでよ、オレサマ取っておきの“超優れモノ”を分析してみようじゃねぇかい!


 甚さんは、作業服の胸ポケットに入った2本のボールペンを取り出し、しょんぼりしている良君の前に置きました。さてこれが、今回の課題なのです。

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