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» 2008年09月10日 11時44分 UPDATE

いまさら聞けない エンジン設計入門(8):タイミングベルト、まだ使っているの? (1/3)

ローラーチェーンは精度が悪いし、音がうるさい。そんな問題を解消すべくタイミングベルトは生まれた。そして、いまは……。

[山本 照久,@IT MONOist]

 今回はエンジンの重要部品である「タイミングベルト」と「タイミングチェーン」について解説していきます。

 タイミングベルトは、車に詳しくない一般ユーザーでも耳にすることが多い部品ですね。それもそのはず、タイミングベルトは平均すると10万kmで交換が必要とされる定期交換部品だからです。

 またユーザーがタイミングベルトという部品を強く意識する理由とは、素人では対応が難しい整備内容のため、整備工場へ車を持ち込んで作業を依頼しなければならない(つまり、お金が掛かる)ことにあるのではないでしょうか。

 タイミングベルトは、エンジンのクランクシャフト(ピストン)の動力をカムシャフト(バルブ)に伝えつつ、クランクシャフトとカムシャフトとの位置関係を同期させ、バルブタイミング*1を取る部品です。

*1 バルブタイミングについては次回で詳しく解説します。

 エンジンルームからタイミングベルトを探そうとしても見つからないでしょう。当然です、ベルトの天敵である異物や水分、油脂類の付着を防ぐためにカバーで覆われているのですから。

 タイミングベルトの交換には高額な整備料金が掛かるのは周知の事実です。

 「交換の必要がなくなるよう設計すればいいのに」

といった考えをユーザーが抱いてもおかしくありませんよね。

 現在新たに開発されているエンジンでは、ほとんどがタイミングベルトの代わりにタイミングチェーンを採用しています。このタイミングチェーンは平均すると30万kmでの交換と設定されていますので、廃車までほぼ交換が必要ないという認識で大丈夫といえます。

きっと誰もが知っている、ローラーチェーン

 チェーンというのは昔からある技術のはずなのに、どうして最近になってタイミングチェーンを採用したのでしょうか。実は、この背景に技術力の進歩による部品の移り変わりの歴史があります。

 タイミングギヤは、クランクシャフトの近くにカムシャフトがあるOHV(Over Head Valve)方式のエンジンに主に使用され、現在の車での採用例が極端に少ないのです。超高回転領域を使用するレースエンジンやバイクエンジンなどでは現役で活躍する機構ですが、コストや騒音などを考えると、現在の車では採用が難しい構造といえるでしょう。

 クランクシャフトとカムシャフトとの距離が必然的に遠くなるOHC(Over Head Camshaft)方式のエンジンが徐々に採用されるようになってきてから、バルブタイミングを取るためにローラーチェーンが導入されました。

 タイミングチェーンとして使われる「ローラーチェーン」は自転車などにも用いられる一般的なチェーンのことです(写真1)。

alt 写真1 ローラーチェーン

 一昔前(1950年ごろ)の技術では、ローラーチェーンが技術力を要する最高の選択でした。 しかしながら昔のローラーチェーンは、現在のそれと比べて非常に精度が悪く、騒音という面においても当時から高い評価を得ていたとはいえませんでした。

 騒音は、性能そのものとはまた違う問題ですからそれほど気にしなくてよかったのでしょう。しかし精密な管理を必要とするバルブタイミングを担う部品の精度が悪いという部分は致命的でした。素材という面で見ても、当時のローラーチェーンは現在のものよりも「伸び」が多く、定期的に調整を行わなければ、エンジン性能を大幅に低下させるほどのバルブタイミングの狂いが生じました。

 当時もゴムを使用したベルトの採用が検討されていましたが、耐久性が非常に乏しくとても採用できるようなレベルではなかったのです。つまり多少精度が悪くてもローラーチェーンを採用せざるを得なかったと考えられますね。

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