当たらない需要予測とうまく付き合う法こうすればうまくいく生産計画(2)(2/3 ページ)

» 2008年10月23日 00時00分 公開
[佐藤知一/日揮@IT MONOist]

需要予測の誤差と付き合う

 アパレルほど季節性が強くないとしても、月々の需要変動の大きな業種は数多い。「せめて営業の販売予測がもっと当たってくれればなあ」――そう思ったことのない生産計画担当者はまれだろう。でも営業部門の責任範囲は売り上げ達成であり、予測精度の向上は普通眼中にない。需要予測ソフトを導入しようと思い立つのは、大抵計画部門である。

 需要予測ソフトの中身は、統計手法の中の時系列分析モデルを基本に、さまざまなパターンをユーザーが選べるようになっている。普通は12〜16カ月程度の自己相関・移動平均モデルを内蔵しており、季節変動に対応できるのが特徴である。また、商品ファミリーや販売チャネルごとの集計・分配計算などの機能も持っているものが多い。販促キャンペーンの効果については、数値的な扱いは難しいが、それでもインパクト分析ツールを併用できる場合がある。

 とはいえ、予測はあくまで予測であり、どんなに高価なソフトを導入しても、必ず誤差が付きまとう。上手にチューニングしないと、担当者のカンによる読みの方が精度が高かったりする。まして、需要予測ソフトを持たない会社も多いだろう。予測に誤差がある場合、それに対してどう付き合うべきか?

 対応策は、1つしかない。予測誤差をカバーできるだけの製品安全在庫を持つべきなのだ。

 安全在庫は普通、需要の急な変動に対応するために、意図して置く在庫だと考えられている。製品の需要がある程度一定していて、平均値のまわりを変動するような場合には、安全在庫量は数式で計算できる。その際、統計学でいう「分散」の値がキーになる。分散とは平均値から外れる度合いを示した値であり、(個別実績値−平均値)の2乗の総和を、(データの件数−1)で割ったものである。分散の平方根を標準偏差と呼ぶ。

 安全在庫量は、需要の平均値ではなく、需要の標準偏差の値で決まる。標準偏差が小さければ小さいほど、需要変動のばらつきも小さいので、安全在庫量も少なくすることができる――以上の考え方は、在庫管理の参考書などにも解説されている古典理論だ。しかし、これは後補充型の生産方式が前提になっており、需要の予測という観点が、まったくない。では、需要の先読みに基づく計画生産のケースでは、安全在庫量はどう設定すべきだろうか?

 答えははっきりしている。需要の予測をしなかったときの安全在庫量は、需要の標準偏差から定めることができた。それなら、需要を予測したときの安全在庫量は、

予測誤差=(需要予測値−需要実績値)

の標準偏差を基にして計算すればよい(図1)。予測精度が悪ければ、ばらつきを示す標準偏差も大きくなり、たくさんの安全在庫がいる。もしも需要予測が完ぺきで、ぴったり実績値どおりだったら、安全在庫量はゼロでいい。なぜなら、安全在庫とは予期せぬ変動に対応するためのもので、完ぺきな予測の下では予期せぬことは起きないからだ。いい直すと、計画生産の下では、需要予測の精度を上げれば、安全在庫量はどんどん減らしていけるのである。

図1 需要を予測したときの安全在庫量の求め方 図1 需要を予測したときの安全在庫量の求め方

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