車載バッテリーの性能低下を化学的にカイゼンNEDO開発機構、新技術発表

独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO開発機構)は、鉛蓄電池の充電容量を基礎評価で約1.6倍改善する新しい負極添加剤(リグニン)を開発した。

» 2008年10月31日 00時00分 公開
[MONOist]

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO開発機構)は2008年10月30日、鉛蓄電池の充電容量を基礎評価で約1.6倍改善する新しい負極添加剤(リグニン)を開発したと発表した。産業技術研究助成事業の一環として、独立行政法人森林総合研究所 主任研究員 久保 智史氏が開発した。

 久保氏は、これまで鉛蓄電池に不可欠な添加物でありながら充電性能の低下を引き起こすとされてきたリグニンに四級アンモニア塩の化合物を用いることで改質。鉛蓄電池の充電性能を向上させる新しいリグニンを開発した。このリグニンを用いた鉛蓄電池は、車載用電池として不可欠である鉛電池の充電効率を改善していることから、今後車載用や汎用2次電池として利用拡大が期待される。

 リグニンはリグノセルロースに含まれる天然芳香族高分子化合物で、木材の主成分とされている。工業的には化学パルプ製造工程やリグノセルロース原料からのバイオエタノール生産工程における残渣として回収できるという。

 NEDO開発機構では、開発したリグニンと既存技術を鉛蓄電池に使用した際の比較として、以下3点を挙げている。

  • 鉛蓄電池の性能改善:従来技術では、鉛電池の長所である放電特性の改善を目的に添加剤の開発が行われてきたが、新リグリンでは、少量の添加で充電容量が改善できる
  • 低環境負荷:鉛蓄電池はリサイクル法が確立された材料で構成されている。今回、充電容量を増やしたことで、安価で高エネルギー効率な2次電池の生産が期待される。
  • 未利用資源の有効活用:エネルギー効率の改善とバイオマス利用システムの構築により、二酸化炭素排出の低減する
比較ポイント 充電性能 コスト 環境負荷 安全性 エネルギー密度
従来のリグニンを使用した鉛蓄電池 ◎(少ない) ◎(安全。発火などの危険性無し)
今回開発したリグニンを使用した鉛蓄電池 ○(基礎評価で約1.6倍) ◎(従来技術よりもわずかに高い) ◎(少ない) ◎(安全。発火などの危険性無し) ○(基礎評価で約1.6倍)
表 鉛蓄電池にかかわる従来技術と新技術の比較

 NEDO開発機構では現在、開発した負極添加剤と化学結合させたリグニンを実用化するため、実電池に添加して効果を実証しているという。

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