製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

不良発生の瞬間をつかまえる測定技術を検討しよう品質改善の王道を行こう(4)(1/3 ページ)

モノづくり現場で発生している品質不良を改善し、不良率半減を目指そう。品質改善のツールはあくまでもツールであって、それに振り回されてはいけない。本連載は品質改善コンサルタントによる品質改善の王道を解説する。

» 2008年11月10日 00時00分 公開

 前回の「3現観察法で不良原因の見える化を目指そう」では、要因解析の第一歩として、測定の信頼性を確認した後、慢性不良の現状実態を正しく把握する手法を紹介しました。慢性不良における「未知の要因」を探索するには、3現観察法による不良の見える化が最もパワフルな力を発揮します。

 3現観察法では、慢性不良の現物を実際に観察することを勧めました。例えば、傷の不良に悩んでいたとします。打痕、ひっかき傷、こすれなど、現象を細分化できるのに、一口に傷と不良項目をまとめていることで、問題が隠れてしまいます。ひどいときには、まったく別の不良まで同じ名前で分類されていることもあります。

 こういう見逃しはよくありますから、まずは不良の現物をメンバー自身の目でしっかり見てほしいのです。不良の現物を粗く→細かく観察する工夫「不良の見える化」をして現象をきちんと把握できれば、それが慢性不良を解決する糸口になります。

 今回は、前回の要因解析の続きです。

プログラム4-4 測定技術検討

 問題が多少複雑な場合、さらに「不良が発生する瞬間を目で見る」検討が必要になります。例えば、完全クローズされた中で生産している、動きが速過ぎて何が起こっているか分からない、高温や高圧下の製造でち密な測定ができていない、などといった生産状況はあるかもしれません。だからといって測定をあきらめては何も改善できません。

 「不可能である」と証明できることは少なく、単に「可能な方法が見つからない」にすぎないものです。あきらめたときに改善は終わります。粘り強く改善に取り組みましょう。

 それでは「不良が発生する瞬間を目で見る」ための視点を紹介します。不良の発生する瞬間ですから、観察する対象は生産設備や生産工程のいずれかになります。前提として「どこを観察するか」はつかんでおいてください。

(1)モノの動きを遅くして観察する

 水面に水滴が落ちる瞬間の写真(ミルククラウン)を見たことはありませんか。とても美しい写真ですよね。ミルククラウンやそれ以上に動きの速いものでも(限度はありますが)、昨今の技術では、その瞬間の映像が撮影できるようになっています。


ミルク・クラウン現象について(http://milk.asm.ne.jp/chishiki/crown.htm)参照、


 もし、自社の設備の動きが速いのであれば、高速度のビデオカメラを使って撮影を工夫するという手があります。動きをスロー再生していけば、不良が発生する瞬間が分かるかもしれません。逆にあまりに遅い動きの場合は、早送りすると現象がつかめることもあるでしょう。

(2)モノの動きを止めて観察する

 例えば、射出成形やダイカストなど金型に溶融物を流し込んで成形する場合、途中で止めて金型を開ければ、溶融物の流れの状態がよく分かります。止める時間を少しずつ変えれば、溶融物が流れていく様子が連続的に分かるはずです。

(3)見えないモノを可視化して観察する

 圧力や温度分布を測定して、分布状況を色分けして示したり、流体の動きを観察するためにオイルミストを使ったりすることで、現象を可視化して正確につかみます。

 視点は以上です。補足ですが、製造方式によっては、不良になった製品の製造日が分からないことがあります。その製品をいつ製造したかがつかめないと、どういう製造条件で作ったかも分かりませんから、とても困ります。

 不良製品の製造条件を後から調べようとしても、何日か前に起こったことなんて、ほとんど何も分からなくなっています。生産技術の高い工場は、その場で良不良の結果が分かるようにオンライン測定をしています。不良が発生した瞬間に、すぐ調査できれば、原因は見つけやすいです。

 「不良が発生する瞬間を目で見れば、問題は解決するのだ!」という強い信念を持って、測定のための知恵をチームで出しましょう。それが自社の技術力向上にもつながります。

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