メンテナンス用機能をシンプル化してコストダウン事例で知るVA・VEのコストダウン手法ABC(7)(2/2 ページ)

» 2008年11月13日 00時00分 公開
[舩倉 満夫/フナックス・エンジニアリング,@IT MONOist]
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 以下の図2では、ユニットの単純化を行いました。上部のプレートを下げるためには、まず、カンヌキ状のストッパー軸を抜きます。次に、その上にある灰色のプレートを下げます。元々の動作に、「ストッパーを抜き差しする」という動作が加わった形です。

 しかし月に1度のメンテナンスのユニットですし、この程度の手間が増えたところで何ら問題ないはずなのです。

図2 機構を簡略化したユニット:動かないように固定しておくためのカンヌキ状のストッパーがついている。使用するには、ストッパーの抜き差しが必要だ

動画1 簡略化したユニットの動作

 結果、部品点数は5点まで減りました(表2)。機構は、だいぶ単純化されています。

表2 設計課題13のユニットの部品構成を見直した

 これにより、部品コストと組み込み工数の削減が行えました。

メンテナンスユニット設計の落とし穴

 「ワンタッチ動作で作業を楽にする」

 ここが、設計課題13においての一番の落とし穴といえます。

 生産用機能なら、作業効率が良いにこしたことがないので、そうした方がいいでしょう。しかし、メンテナンス用機能にまで、それと同等の作業効率を要求する必要が、本当にあるのかどうか? この点をよく検討するべきです。「その方が、装置全体的にバランスがいい」と錯覚することなく、メンテナンス用という前提をくれぐれも強く意識しましょう。

「右にならえ」ではなく、改革を起こそう

 これまでの記事の中で、産業機械の設計現場では、「取りあえず、このユニットや部品も、アレと同じ要素を取り入れておこう」といった具合に、周囲にある既存の形状に影響を受け、「右にならえ」の発想になってしまいがちだということをたびたび説明しました。

 どうしてそうなってしまうのかといえば、「責任を取りたくないから従来品と同等の機能を採用しておけば、安全だ」、つまりは、「余計な冒険をしたくない」「改革をしたくない」と考えてしまうためでしょう。

 筆者はこれとは逆に、「今日よりも明日に、もっと素晴らしいことを起こそう」、「改革を起こそう」と考えています。またそういった気持ちを終始一貫し保持し続けることも大事だと思っています。それが、最適設計の実現へとつながっていると信じています。

 ユニットの機能の価値を見極めつつ分析すること、それがつまり「価値分析」、つまりVA(Value Analysis)です。VE(Value Engineering)は、分析結果を生かし、最適なコストにて実現すること。 「事例で知るVA・VEのコストダウン手法ABC」では毎回テーマを変え、それぞれの問題への取り組み方を説明してきましたが、根底の考え方はすべて同じです。また、その内容は、あくまで基本的な取り組み方です。しかし、それらを応用することで、皆さんの遭遇するだろうほとんどの課題に対応できるよう網羅したつもりであります。

 本連載は今回で終了となります。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。読者の皆さまのコストダウン検討のお役に立てることを願っております。(終わり)

Profile

舩倉 満夫(ふなくら みつお)

製造業に生きて40年、省力化機器製造会社、プレス金型製造会社、半導体製造装置、金型製造会社、ワイヤハーネス用全自動端子圧着機製造会社と経験し、運良く工場内でメンテナンス、機械加工、組み込み、設計、品質管理、生産管理、購買部とものづくりのあらゆる工程を経験。この特異な経験と知識を生かした最適加工および工法により、数々の設計改善・コストダウンを実施してきた。さらにビジネスへと展開するべく、2001年、フナックス・エンジニアリングを設立し、現在に至る。モットーは「仕様に基づいた品質の追求」。



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