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» 2008年11月17日 00時00分 UPDATE

会社のムダを根こそぎ撲滅! TOCスループット(4):ものづくりのムダ取りに「時間」の概念を導入する (1/2)

TOCでは「原価計算は生産性の最大の敵である」と主張する。現行の会計制度に存在する矛盾を明らかにし、企業の継続的な利益創出を支援するTOCスループットの基本を紹介しよう。

[村上 悟/ゴール・システム・コンサルティング,@IT MONOist]

 これまで3回にわたって会社に存在するムダともうけ損ないを見てきました。こんな状況に対しゴールドラット博士はこう指摘します。

マネジャーなら誰でもスループット、在庫、業務費用それぞれの尺度がどちらの方向に動くべきなのか、ちゃんと分かっている。スループットは増えた方が良い、在庫の形で眠っているお金の量は減った方が良い、業務費用も少ない方が良い。しかし実際の行動になると在庫を積み増したりして、見掛けの原価を引き下げる行動に出るのだ

 この相反する2つの間にあるものが、博士の指摘する評価の「ゆがみ」や「ねじれ」なのであり、このような「理に合わない」人間行動の原因なのです。

 そして、手余り(市場制約)と手不足(物理制約)という制約条件が変化すれば、それに応じて意思決定を変えるのは当然なのです。

「時間」の概念を経営に取り込む

 TOCスループットの考え方を理解するうえで大変重要なのが時間の概念です。すべての人間や組織にとって等しく、かつ有限なのが時間です。ですから同じ1万円の利益を生み出すにも、1時間で生み出すことが可能なのか、24時間を必要とするのかを認識しなくてはならないのです。

 この「時間当たり利益」を認識することはある意味で、といえるでしょう。時間という概念は水や空気と一緒で当たり前であるが故に、通常はあまり競争の源“コロンブスの卵”的発想泉として意識されることはないからです。

図1 ボトルネックの速度・流量がスループットを決めている 図1 ボトルネックの速度・流量がスループットを決めている

 製造業は「原材料を調達し、加工し、お客さまにお届けして、代金をいただく」というプロセスでスループットを生み出しています。いい換えれば原材料に形を変えた「お金」がプロセスの中に投入され、加工され、製品に姿を変え顧客に販売され、本来の「お金」に戻る投資からリターン(回収)の流れそのものです。

 もしもこの調達から販売に至るプロセスにボトルネックがあればどうなるでしょうか。ボトルネック工程ではあたかも川の流れがせき止められ、湖ができるように、お金をそこで滞留させることになってしまいます。またそのボトルネック工程を通るスピードが製品ごとに異なる場合はどうなるでしょうか。当然ボトルネックを速やかに通過できる製品を優先した方が、トータルで得られるお金は大きくなります。

 つまり、個々の製品が生み出す時間当たり利益を把握することによって、販売の優先順位や業務プロセスに潜む改善ポイントを見つけ出すことができるのです。時間当たり利益は、製品1単位当たり得られるスループットをボトルネック工程の通過時間で割ってやれば簡単に計算できます。

  時間当たり利益=
  製品1単位当たりのスループット÷ボトルネック工程の通過時間

 この時間当たり利益の概念は製造業のマネジメントに何をもたらすのでしょうか。

 TOCの基本的な考え方は「現在を起点として、有限な経営資源からどのように最大の収益を上げるか」ということです。そのため「現状の経営資源を完全に使い切ったときに、得られる利益はどれだけか」をつかんでおく必要があります。こうしておけば新規投資に当たっても、現有資源での達成可能利益と新規投資による増分のスループットの対比によってその可否や優劣を容易に検討することが可能となります。

もうけるために競争優位を作り出す

 スループットを最大にするためには、手不足であれ手余りであれ、内部的な資源を徹底活用するだけでは十分ではありません。さらにスループット拡大を実現するためには、顧客により高い価格で購入してもらう、すなわち市場を制約として考え徹底活用する作戦を考えなければなりません。

 市場を徹底活用するとは、どう考えたらいいのでしょうか?

 注目すべきなのは、ものやサービスの値段は売る側と買う側ではまったく違う見方をしているということです。売る側は製品に投入したお金に応じた価値すなわち、トータルコストに適正な利益率を上乗せしたものが売価だと考えるのが通常です。しかし、買う側はその製品やサービスを使って得られる便益が価値だと考えます。

図2 図2 顧客が考える製品価値は同じではない(稲垣公夫著『TOC革命』JMAN刊より)

 そう考えると、買う側の方は1つの製品やサービスに対して多様な価値を見いだしているわけです。もうけを最大にするためには、製品に高い価値を見いだしてくれる客には高く売って、低い価値しか見いださない客には安く売ればいいことになります。実際にホテルや航空機のチケットなどの価格は時期だけでなく、予約日までの日数によって大きく変動します。

 この考え方をさらに進めて、もっと高い価格で購入してもらうためにはどうすればよいでしょうか。法人顧客との取引の場合、顧客が製品やサービスを購入する背景には必ず明確な理由があります。そうです。「顧客はもうけるため」に事業活動を行うのです。そして現在の利益に満足している企業はほとんどありません。そう考えると、

  顧客は製品やサービスを購入するたびに「不満足」も一緒に購入している

ことが分かります。

 TOCでは競争優位を実現するために、究極の制約条件は市場と顧客であると考え、「不満足」という真の需要やニーズに従属する仕組みを作り上げます。それにより「顧客にとってより価値がある製品やサービスを容易にまねできない仕組みで提供する」ことで、競合他社より収益性が高い状態をつくり出すのです。

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