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» 2009年01月27日 00時00分 UPDATE

ピタゴラスイッチの計算書を作ろう(5):ボールがスコーンと跳ねる高さを調整せよ (1/4)

シーソーに置いたボールをバスケットにスコーンとゴールさせるには? ここでもエネルギー保存の法則や反発係数の定義などが活躍。

[岩淵 正幸/技術士(機械部門),@IT MONOist]

シーソーの設計

 最後のサブ・システムの設計です。サブ・システム4で転倒した台車の中のボールが、シーソーの上に落下して、反対側に置いてあったボールを跳ね上げ、バスケットの中に放り入れます。このような運動を実現するための設計条件を計算で求めることが今回の課題です。

草太「とうとうシーソーの設計まできたね」

銀二「そうだね。だけどシーソーは、あくまで全体システムの中の1つのサブ・システムでしかない。シーソーの設計ができたからって、ピタゴラスイッチの設計が完成したわけではないからね」

X年度 卒業設計課題(亜津戸大学 工学部 物田研究室)

yk_pita01_1.gif ピタゴラスイッチ

 図のようなピタゴラスイッチを設計・製作し、設計計算書と試作品を提出せよ。

 A地点から出発したボールは曲線スロープを経てB地点に到達し、直線スロープ1の終端のゲートを通過した後、直線スロープ2に繋留(けいりゅう)している台車のロックを解除する。

 繋留が解除された台車は直線スロープ2を降り、ストッパによって横転し、台車の中のボールがシーソーに落下して、反対側のバスケットボールを跳ね上げ、バスケットの中に入るものとする。

 なお、曲線スロープの出発地点Aの高さHとスロープの底の高さHb、曲線スロープの長さLは図示した値とし、また、B地点を通過するときのボールは極力遅くなるように設計すること。



草太「僕がやった実験では、ベニヤ板のゲートなら、ボールはきれいにゲートを通過していたけどなぁ」

銀二「分かってきたね。油断は禁物ってことだよ」

草太「じゃあそろそろシーソーの設計に入ろうよ」

銀二「もう、お前1人でも十分設計できるだろう。やってごらん」

草太「できるかな。やってみるから、おかしかったら指摘してよ。まず台車から落下するボールの軌跡を求めてみようかな。うーん……」

銀二「そんな細かい計算をする前に、設計の手順についてまず考えてみようぜ」

草太「設計の手順?」

銀二「そうだよ。まずサブ・システム5の目的はなんだね?」

草太「シーソーの上のボールをバスケットに入れることだよ」

銀二「そうだよな。シーソーの上に置かれたボールをバスケットに入れるんだよな。ボールが入るバスケットの位置やボールの大きさや重さの指定はないよな。ということは……?」

草太「自由に決められるってことだよね。そうか、ということは、まずシーソーやバスケットの絵を描いてみて、そのときにボールがバスケットに入る条件を求めればいいってことだよね」

銀二「そういうことになるね。シーソーの大きさやバスケットの高さが自由に決められるといっても、ほかのサブ・システムとのバランスがあるから、まったくの自由ではないけどね」

草太「つまり、シーソーの大きさとバスケットの高さをバランスよく決めて、台車から落下してきたボールを受けたとき、シーソーのボールがバスケットに入るためには、どの程度の重さのボールにすればいいかってことだね?」

銀二「そのとおりだ!」

草太「これって、自由に作文を書けっていわれるとなかなか書けないけど、題を決められると書きやすいのと似ているね」

銀二「そうだね。設計には、勝手には決められない部分と自分で自由に決められる部分があるってことだ。つまり何かしらの自由度がある。その自由度をうまく使うかどうかが設計センスということだね。だから、今度の場合もバスケットの高さではなく、バスケットボールの重さを自由に決めて、そのボールがうまくバスケットの中に入るようにバスケットの高さを計算で求めるという方法も考えられる。だけど、ボールが重過ぎて、バスケットの位置が低くなると、ピタゴラスイッチとしては、もう1つ見栄えが良くないよな」

草太「だから、バスケットの高さを決めてから、バスケットの中に入るために必要なボールの重さを算出する、という手順になるわけだね」

銀二「そういうことだよ。じゃあ、シーソーの構造を考えてみようか」

草太「こんなんで、どうかな。シーソーの板は大学の工作室からもらってきた厚さ2mmのアクリル板の切れ端だよ。支点には、壊れたテープレコーダに使われていたゴムローラーを利用してみたんだ」

 草太が作ったシーソーを写真5.1に示します。

yk_pita05_1.jpg 写真5.1草太が作ったシーソー

銀二「いいんじゃないのかい。ところでバスケットに入れるボールはどこに置くんだい?」

草太「当然シーソーの端だよ」

銀二「でも、シーソーには勾配(こうばい)が付いているから、ボールはシーソーの上には留まっていないぜ」

草太「そうだね。転がり出さないように抑えが要るね。でも抑えを設計するといってもボールの大きさがまだ決まっていないから具体的に設計できないよ」

銀二「じゃあ、まず必要なボールの条件を求めてみようか。この場合には重さがポイントだな。重さが分かれば、どんなボールにすればよいかだいたい分かる。軽ければ、密度の小さい材質でできたボールにしなければならないし、重ければ密度の大きい材質でできたボールにすればいい」

 そういうわけで、シーソーの構想は図5.1のように決まりました。

yk_pita05_2.jpg 図5.1草太が作ったシーソーの構想図

 バスケットの高さを床から150mmとすれば、シーソーに置かれたボールが跳ね上がる高さは少なくとも150mmは必要ということになります。そこから余裕を見て、バスケットボールが200mmぐらい跳ね上がるように設計することにしましょう。

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