“進化するケータイカメラ”を支えるモルフォの組み込み技術組み込み企業最前線 − モルフォ −(2/2 ページ)

» 2009年08月07日 00時00分 公開
[西坂真人,@IT MONOist編集部]
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手ブレ補正のノウハウ生かした「フレーム補間」

 携帯電話で培った技術を、ほかの組み込み製品に応用する例も出てきた。2009年4月30日に発売された東芝のDVDプレーヤー「ポータロウ SD-P93DTW」に搭載されたワンセグ放送の高画質化技術に、同社のフレーム補間技術「FrameSolid」が採用されたのだ。

 「FrameSolidは、15fps(毎秒15フレーム)しかないワンセグ放送から画像処理によって中間画像を生成して最大30fpsにする技術。もともと携帯電話端末向けに開発したものを、今回はワンセグ搭載DVDプレーヤーに応用した」(平賀氏)。

 計算によって中間画像を生成してフレーム数を増やし、映像を滑らかに見せるという手法は、最近の薄型テレビの高画質技術としては一般的になっている。だが薄型テレビでは専用ハードを使って60fpsから120fps(倍速補間)などのフレーム補間をしているのに対し、FrameSolidはその処理をすべてソフトウェアで行い、しかも携帯電話やDVDプレーヤーといったリソースの限られた組み込み機器でそれを実現しているのだ。

 「ワンセグの圧縮されたデータを解凍しながら、さらに補間していくという作業になる。専用ハードではなく、ソフトウェアで実現するというところも大変だったが、実は60→120fpsよりも、フレーム数の少ない15→30fpsの方がアルゴリズムとしては難しかった。フレーム間が離れている(フレーム数が少ない)と、そこに映っているオブジェクトの動きが激しくなる。いかに効率よく動きを滑らかにするかという技術には、手ブレ補正のときに培った動き検出のノウハウが生かされている」(平賀氏)。

フレーム補間技術「FrameSolid」 画像4 フレーム補間技術「FrameSolid」

iPhoneライクな画像閲覧をより多くの携帯電話に

 画像処理をベースにした新技術を次々と開発するモルフォ。2008年11月に登場したドコモ「N-01A」で話題となった高速画像閲覧機能「クイックアルバム」も、同社が開発した画像高速表示技術「ImageSurf」がベースとなっている。

 圧縮画像の必要な部分だけ解凍して表示させることで、すべて解凍してから表示していたこれまでのビューワと比較して圧倒的な表示速度を実現。タッチパネル対応で、フリック操作で前後の写真を快適に切り替えたり、ピンチ操作で拡大縮小表示できるなど、iPhoneライクな画像の楽しみ方を日本製携帯電話に広めた功績は大きい。2009年夏モデルではドコモのNEC製端末(N-06/N-07/N-08/N-09:ImageSurf Ver.1.0)とシャープ製端末(SH-05A/SH-06A/SH-06A NERV/SH-07A:ImageSurf Ver.3.0)などに採用されている。

 「最新のVer.3では、サムネイル高速描画にも対応。サムネイルのスパイラル表示といった凝った処理も高速に行えるようになっている。こだわったのは、画像が指についてくるリアルタイム性。昨年末からタッチパネル搭載端末が増えているが、ユーザーは皆、iPhoneのようなタッチ操作感覚を望む。ImageSurfはいろんなプラットフォームで実現できるので、この“高速閲覧の気持ちよさ”を広げていきたい」(平賀氏)。

自由な発想が生み出す“次世代の技術”

 デジカメメーカーではないモルフォが生み出すケータイカメラ向け技術は、発想の自由さが武器になっている。例えば今年春モデルから搭載された「PhotoScouter」という技術は、当初(Ver.1.0)は名刺/バーコード/QRコードを高速に判別する機能として使われていたが、同社はVer.2.0でこの技術をケータイカメラの撮影シーン自動判別機能へと昇華させた。

 「Ver.1.0は名刺かバーコードかをざっくりと判別するアルゴリズムを作った。この“ざっくり”というのがポイントで、コアとなるエンジンはOCRやQR認識エンジンではなく被写体のカテゴリーの判別に特化しているため、非常に高速に判別できる。この“いろいろな被写体の特徴を捉えてざっくり認識する”という技術を発展させ、最近デジカメでもトレンドになっている撮影シーン自動判別モードに応用したのがVer.2.0」(平賀氏)。

 こういった自由な発想は、デジカメメーカーにはなかなかまねのできないものだろう。デジカメメーカーが同様の機能を考える場合、明るさがどうとか、AFの合焦距離、ヒストグラムなど、どうしても“カメラならではのパラメータ”をベースに考えてしまう。

 「われわれは文字っぽい、風景っぽい、人物っぽいなど、ある意味あいまいなアルゴリズム(認識方法)を採用しており、実はカメラとは違うアプローチ。例えば空+山+緑であれば、それは“風景”という流れ。被写体を“ざっくり”認識しようという発想は、デジカメメーカーではないわれわれならでは」(平賀氏)。

「PhotoScouter」の撮影シーン自動判定 画像5 「PhotoScouter」の撮影シーン自動判定

 同社が開発したこれらケータイカメラ向け技術は多くのメーカーの賛同を得て、搭載機種は国内外合わせて161機種、この3年間で累計9000万ライセンスを突破した。

 「今年中には1億ライセンスを超えたい。携帯電話向けに限らないが、陥っちゃいけないのは『われわれの開発した技術は素晴らしいので、これを採用してくれないのはお客様が悪いのではないか』という考え方。技術開発もエッジの利いたとこばかり狙い過ぎて、全然市場ニーズを把握していないというケースがある。そのへんのバランスに気を使って技術開発を行っているところが、当社がこれまでうまくやってこれている理由でしょうね。今後は、携帯電話向けミドルウェアというかたちだけでなく、そことサービスを組み合わせた“今までにない面白さ”を提供していきたい」(平賀氏)。


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