製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

3現観察法で不良原因の見える化を目指そう品質改善の王道を行こう(3)(2/3 ページ)

» 2008年09月19日 00時00分 公開

プログラム4-3 3現観察法

 製造系企業における課題解決の基本精神に、3現主義があります。

  • 現場に行って
  • 現物を見て
  • 現実はどうなのかを知りなさい

という戒めですが、そのまま品質改善にも当てはまります。

 本連載の冒頭で、小集団活動や技術者個人の取り組みでは限界に来ているから、プロジェクトチームを作って、組織一丸となって慢性不良に取り組もうと提案しました。しかし、プロジェクト会議ばかりになってはいけません。

 会議室の議論も大切ですが、そこから導き出されるのは既知の要因の確認にすぎず、会議室では未知の要因はなかなか出てこないのです。従って、メンバーは3現主義で現場を重視して改善に取り組んでほしいのです。「不良は会議室で起きているんじゃない!」ですよ。

 その第一歩が「3現観察法」です。現場に行って、良品と不良品を比較して、差異があるか観察してください。前項の慢性不良の現状実態分析で4つの項目を確認し、チームで情報を共有しましたから、どの製品を比べたらいいか分かるはずです。

 実際に現物を目の当たりにしながら話した方が、改善のヒントはつかめるはずです。逆に、見比べても何も分からないとなれば、それが問題なのです。「不良の見える化ができていない=技術力不足」という課題が分かったということです。

【事例】3現観察法で慢性不良を改善

 パイプを製造している工場で、ある製品だけ内圧試験が通らないという問題がありました。内圧試験ではパイプの両端をふさいだ状態で、中から所定の圧力を掛けて、耐圧性能を試験します。ところが内圧試験中にパイプがパカッと割れるのです。それでロットアウトになるものですから、とても困っているのです。

 不良ロットのパイプと良品ロットのパイプを見比べても、表面的には何も分かりません。ここであきらめたら改善はまったく進みませんから、プロジェクトメンバーで現物を前にして脳ミソに汗かいて、うんうんと考えるわけです。

Aさん 「内圧試験が通らないということは、肉厚が薄いんじゃないの?」

Bさん 「外径はオンラインで測定しているから、肉厚も問題ないはずだけど」

Cさん 「とにかく良品と不良品のパイプの両端を測定して、比較してみようよ」

 しかし、良品と不良品のパイプの肉厚に大きな差はなく規格内です。

Aさん 「じゃぁ中心部はどうだろう? 肉厚にバラツキがあるかもしれないよ」

Bさん 「だけど中心部の肉厚なんてどうやって測定するの? 切断したらうまく測定できないよ」

Cさん 「品質管理課に超音波測定器があるじゃないか。それで測定できないかな」

 パイプに細かくメッシュを書いて、超音波測定器で肉厚を測定してみると、肉厚にバラツキがあり、明らかに薄い個所がありました(図3)。

図3 超音波測定器によるパイプ中心部の肉厚測定

Aさん 「明らかに肉厚が薄い個所に印を付けて、内圧試験をしてみよう。薄い個所から割れるのでは?」

Bさん 「それが分かったからって、何になるの?」

Cさん 「1本だけでなく、ロット分まとめて内圧試験をやれば、何か傾向が分かるかもしれないよ」

 内圧試験の結果、予想どおり印を付けた薄い個所が割れました。

Aさん 「予想どおり割れたけど、何か傾向をつかめないかな?」

Bさん 「割れ方には、そう違いはないね」

Cさん 「生産している順番に、割れたパイプを並べてみてはどうだろう」

Aさん 「よし、やってみよう!」

 肉厚試験を行ったパイプを生産した順番に並べてみると……(図4)。

図4 割れたパイプを生産順に並べる 図4 割れたパイプを生産順に並べる

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