摩擦係数というより摩擦係数の変数だピタゴラスイッチの計算書を作ろう(2)(4/4 ページ)

» 2008年09月25日 00時00分 公開
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問題1の解答

 2つあります。

解答1

 図2.9の草太が設計したスロープの最大傾斜は54度であり、tan(54.5度)=1.4である。

 (2-16)式より、最大静止摩擦係数が0.4以上あれば、原則、ボールはスロープ上を滑らず回転しながら移動する。従って、損失エネルギーは転がり摩擦によるエネルギー損失Elossのみが発生する。

 転がり摩擦によるボールの単位質量当たりのエネルギー損失は、転がり摩擦係数をμrotと書く。

 (1-21)式より以下のようになる。

図1.6(第1回より) 曲線を直線に分解

 これはまた、位置エネルギーに換算して表示すると、

 と書ける。

 図1.6と積分の定義から、

 だから、転がり摩擦によるエネルギー損失は位置エネルギー換算により、以下となる。

   0.05×350mm=17.5mm

解答2

 ボールの回転運動の運動方程式は摩擦力をFとして、(2-1)式となる。

 同じく、ボールの並進運動の運動方程式は(2-2)式となる。

 (2-1)にω、(2-2)にvを乗じて加えると、

 ボールの回転角度をφ、並進移動距離をsとすると

であるから

である。

 出発点Aから終点Bまで積分すれば、

となる。

 右辺第4項は摩擦によるエネルギー損失であるが、解答1からボールはスロープ上を滑らないからds=rdφであり、よって右理論上は右辺第4項の摩擦エネルギー損失は0である。

 しかし実際にはミクロの変形によるエネルギー損失が存在し、その値は転がり摩擦係数μrotを使って以下のように計算できる。

 ただし、斜面法線力Nには遠心力は作用しないものとしている。

 mgで割って位置エネルギーに換算すると、損失エネルギーは以下のようになる。

 以下は解答1と同じため省略とする。

問題2の解答

 (2-13)から最大静止摩擦係数が0.3の場合、

     tanθ ≦ 3.5μmax=3.5X0.3=1.05

 上記を満足する範囲ではボールは滑らずに回転して移動する。その範囲の水平距離をLrotとすれば、解答1の結果から、転がり摩擦による損失は

である。

 逆に、残りのスロープの勾配tanθが1.05を超える領域では、ボールは滑りながら移動するから、滑り摩擦によるエネルギー損失は最大静止摩擦係数をμmaxとして、位置エネルギー換算で、

である。

 表1のスロープ形状からこう配(tanθ)を計算すると、表2の薄い水色で着色した範囲で勾配が1.05より小さく転がり摩擦が発生していて、その全長は210mmである。

 従って、以下のようになる。

  • 転がり摩擦によるエネルギー損失は0.05×200=10
  • 滑り摩擦によるエネルギー損失は0.3×(350-200) =45

 上記を合計すると、55mmとなる。

 上記計算において、表2の転がり摩擦から滑り摩擦に変わる部分、またはその逆の部分の位置は、その中間点であると計算している。

表2 図2.9のスロープの傾斜データ
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