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» 2009年09月28日 00時00分 UPDATE

ゼロから学べる SysML入門:モデリング言語 SysMLを概観する (1/2)

UMLを基に、よりコンパクトな言語仕様として策定された「SysML」。その誕生の経緯を紹介するとともに、SysMLの特徴・概要を紹介する

[鈴木茂(株式会社オージス総研 組み込みソリューション部),@IT MONOist]

SysMLとは?

 私たちの身の周りには多くの“システム”が存在する。人間が作り上げたシステムもあれば、生命体のような自然の産物もある。また、人間が属するさまざまな組織もシステムと考えることができるだろう。このように、システムという言葉はよく使われるものであるが、何か漠然としている。そこで、あらためてシステムの定義について確認してみよう。

――システムとは、「相互に関係し合う要素群から構成され、ある目的のために機能する、まとまりや仕組み」といった抽象的な概念を指す。

 具体的には、オフィスにあるような複合機のほか、ジェット機、プラントなどもこうしたシステムとしてとらえることができる。このような人工のシステムは、一般にハードウェアやソフトウェアから構成されるが、システムの概念は『ハードウェアやソフトウェアを区別なく包含するもの』である。

 今回紹介する「SysML」は、システムを実現する際に効果を発揮する「モデリング言語」の一種である。SysMLはシステムの仕様化、分析、設計、妥当性確認や検証のために利用できるため、現在、自動車、航空宇宙、通信分野などで幅広く活用されている。

 SysMLとは、“OMG Systems Modeling Language”の略称であり、「UML(Unified Modeling Language)」と同様、OMG(Object Management Group)によって仕様が策定されている。

SysMLのモデル 図1 SysMLのモデル

 SysMLの大きな特徴として挙げられるのは以下の3つである。

グラフィカルなモデリング言語
SysMLはグラフィカルなモデリング言語である。SysMLのモデルは直感的な理解が容易で、設計者の思考を助ける。

標準言語
SysMLは標準言語である。そのため、SysMLによる設計では、担当者間でモデルの解釈に差が生じにくい。

コンパクトな言語仕様
SysMLの言語仕様はUMLをベースとしていながら、よりコンパクトにまとめられている。そのため、SysMLは覚えやすく導入が容易である。

SysMLの歴史

 続いて、SysML誕生の経緯を紹介しよう。SysMLの策定には、システムエンジニアリングやモデリングに関係する以下の組織がかかわってきた。

INCOSE:International Council on Systems Engineering

 INCOSEは、1990年に設立された非営利会員組織である。INCOSEの使命は社会的必要を満たし、技術的に適切な解決策を生み出すため、産業界、学術界、政府系におけるシステムエンジニアリングの先進性を推進し、実践することである。

OMG:Object Management Group

 OMGは、1989年に設立された国際的でオープンな会員制を取るコンピュータ業界の非営利コンソーシアムである。あらゆる組織がOMGに入会し、標準策定プロセスに参加できる。SysMLのほか、UML、CORBA、MDAなどの標準仕様を策定した。

SysML Partners

 SysML Partnersは、システムエンジニアリング向けのUMLプロファイルを作成する目的で招集されたツールベンダや業界リーダーのグループである。IBM社、モトローラ社、ボーイング社などが参加。

 以下の表1は、これらの組織によってSysMLがどのように策定されてきたのか、その歴史的な流れ・経緯についてまとめたものだ。

主な経緯
2001年 2001年1月、INCOSEモデル駆動システム設計ワークグループが、UMLをシステムエンジニアリング向けにカスタマイズすることを決定。
2001年7月、INCOSEとOMGは、共同で「OMG Systems Engineering Domain Special Interest Group(以下、SE DSIG)」を設立。SE DSIGは、INCOSEとISO AP 233ワークグループの協力でモデリング言語のための要求を開発。
2003年 2003年3月、SE DSIGが取りまとめた要求を基に、OMGは「UML for Systems Engineering Request for Proposal(UML for SE RFP;OMG document ad/2003-03-41)」を発行。
システムエンジニアリング向けのUMLプロファイルを作るため、SysML Partnersが2003年に招集された。SysML Partnersは、OMGのUML for SE RFPの要求を満たすオープンソースの言語仕様としてSysMLを定義。
2005〜06年 SysML Partnersは、SysML v.1.0aオープンソース仕様のドラフトを完成させ、2005年11月にOMGに提出。一連の相互に矛盾のある仕様の提案があった後、矛盾を解消した“SysML Merge Team”の提案が2006年4月に提出された。この提案は、OMGによって2006年7月にOMG SysMLに適用。
表1 SysML誕生の経緯

SysMLとUMLの関係

 SysMLの言語仕様は、UMLの言語仕様の一部を再利用した部分と、SysMLのために新たに拡張した部分から構成される。

 図2はSysMLとUMLの関係を示すベン図である。図2の中で、SysMLとUMLをおのおの“SysML”“UML”と書かれた円で表す。

SysMLとUMLの関係 図2 SysMLとUMLの関係

 図2の「SysMLで再利用される部分」と書かれた2つの円の交わる個所は、“SysMLで利用可能なUML仕様の一部”である。「UMLに対するSysMLの拡張」と書かれた個所は、SysMLのために新たに定義された“UMLにはない部分”、あるいは“UMLの一部を置き換える部分”である。さらに、「SysMLで利用されない部分」と書かれた個所は、UMLの言語仕様のうち、“SysMLでは必要とされなかった部分”である。

 このようにSysMLでは、UML仕様の中でシステムエンジニアリングのために必要と思われる部分のみを再利用し、残りを採用しないことで、できる限りコンパクトな言語仕様を実現している。また、システムエンジニアリング用モデリングに必要な仕様を新規に追加して言語を強化している。

 続いて、SysMLに含まれる各種ダイアグラムの分類を図3に示す。

SysMLダイアグラムの分類 図3 SysMLダイアグラムの分類

 SysMLのダイアグラムは大きく「構造図」「振る舞い図」「要求図」に分類される。さらに構造図と振る舞い図は、おのおの複数のダイアグラムに分類される。また、各ダイアグラムは、UML仕様との対比の観点から、「UMLと同じ」「UMLから修正」「新ダイアグラム」のいずれかに分類できる。

 SysML独自のダイアグラムは「パラメトリック図」と「要求図」の2つである。さらにほかの3つのダイアグラム(アクティビティ図、ブロック定義図、内部ブロック図)にも変更を加え、全体としてシステムエンジニアリングの用途に沿った言語仕様に仕上げられている。

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