インタビュー
» 2009年12月11日 12時00分 UPDATE

新しい技術から使える技術へ:ZigBeeで実現する日本版スマートグリッド

日本版スマートグリッドはあるのか――本稿では、ZigBeeをはじめとするワイヤレスM2M対応のモジュール・製品を数多く提供するディジ インターナショナルの江川 将峰氏に聞いた、日本版スマードグリッドの可能性とワイヤレスM2M市場における同社の取り組みを紹介する。(編集部)

[上口翔子,@IT MONOist]

 2009年度は、さまざまな技術関連展示会で“スマートグリッド”という言葉を耳にした。米国のオバマ大統領が「グリーン・ニューディール政策」の1つとして掲げたこのキーワードは、環境負荷の少ない、安定した電力供給網を提供するためのシステム・仕組みを示しており、米国では現在、スマートグリッド対応の電力メーターやモニタ端末の普及が進んでいる。

 スマートグリッドを実現する通信規格の1つに「ZigBee」がある。ZigBeeは、省電力/低コストを特長とした近距離無線通信規格で、最大伝送速度は250kbps。物理層インターフェイスにIEEE 802.15.4が採用され、2.4GHz帯の周波数帯域を16チャネルに分割して利用できる。

 日本においても、ZigBeeを介した家庭内外の電力管理・制御システムが検討されており、来年以降、本格的なZigBeeの普及が期待されている。

 今回は、そうしたZigBeeをはじめとするワイヤレスM2M対応のモジュール・製品を数多く提供しているディジ インターナショナルのリージョン マネージャ 江川 将峰氏に、日本版スマードグリッドの可能性とワイヤレスM2M市場における同社の取り組みを伺った。

日本版スマートグリッドの可能性

photo ディジ インターナショナル リージョン マネージャ 江川 将峰氏

――日本でも今後、ワイヤレス通信を利用した電力制御システムの導入が加速していくのでしょうか

江川氏: この議論は10年以上前からされていて、すでに国も動き始めている。京都議定書に続く新たな枠組み――2020年に、CO2排出量を1990年比マイナス25%にするという目標を実現するためにも、国民1人1人の二酸化炭素排出量を下げる必要がある。日本でも、スマートグリッドに近いものをどこかの時点で導入しなければならないのは確かだ。

江川氏: ZigBeeは低消費電力なので、例えば家庭の屋根に設置した太陽電池の電力量などをモニタリングする際にも、そこに対しての電力消費をあまり懸念しなくて良い。また、管理するデータ自体がそれほど大きな容量ではないため、ZigBeeの伝送速度(250kbps)で十分対応できる。

――想定される使用例としてはどのようなものが考えられるでしょうか

江川氏: 太陽電池や家庭内蓄電池などのエネルギー監視を例に取っていくと、ZigBeeを介して端末側で受電量などのデータを受け取り、それをモニタに表示する。さらに、外との情報送受信には、ワイヤレスLAN経由でアクセスポイントに飛び、既存のネットワークインフラに接続することで、電力キャリアから状態をモニタリングできる。

江川氏: 既存のインフラがない場合には、携帯電話のセルラー通信を使用して外に情報を出すという方法もある。監視する場所が屋内ではなくへき地であったり、移送船や輸送トラックの場合には、場所や状況に応じて衛星通信やセルラー通信を使用するなど、ネットワークを使い分けて対応できる。

江川氏: 例えば輸送トラックのモニタリングには、運転席からZigBeeを介した荷台状況の管理(例えば冷凍庫を荷台にしているのであれば温度管理)やタイヤの空気圧やバッテリー状態の監視ができる。さらに、遠隔地から携帯通信/衛星通信を使用したトラック自体の管理もできる。

――荷台の温度が急激に上がるなど、異常が起きた場合にはどう対応するのでしょうか

江川氏: バッテリーの電力量が下がっている、もしくは荷台の温度が異常に上がっているなどの異常が起きた場合には、運転席の端末から確認できる。また、自動的にエラーメッセージを発生させそのデータをセンターサーバで受け取ることも可能だ。M2Mを利用すれば、人に手を介さずに自動で状態を判断し、エラーを発生させることができる。

江川氏: また、家庭内の電力管理においても、例えば昼間と夜間で電気代が切り替わるタイミングを自動で判断でき、昼間の時間は、自家発電したものを使用し(余った電気は電力会社に販売)、電気代の安い夜間には必要に応じて電力会社から電気を買う、といったシステムが自動で動く。

ワイヤレスM2M市場におけるディジ インターナショナルの取り組み

 同社はもともと、有線のシリアルインターフェイスから始まり、1台のモニタリング用のPCから複数台の機器を監視/管理する製品を取り扱ってきた。それが後にUSBに変わり、USBでは遠隔監視ができないため、有線LAN、無線LANへと事業範囲を拡大。現在では、より複数の機器同士(最大6万5535端末)を比較的広エリアで、かつ低コストでカバーできるZigBee、携帯(セルラー)通信、衛星通信などに対応した、多数の組み込みモジュールを提供している。そのほか、完成品という形で筐体に入ったものや、ユーザーの要求に合わせたハードウェア・ソフトウェアのカスタマイズ、OEM、モニタリング用のアプリケーションサーバとしたASPサービスなども行っている。

photo 同社のZigBeeモジュール(画像=左)とZigBeeコンセントルータ(画像=右)

 また、2009年度はそうしたM2M関連製品やプロセッサなど、計21個の新製品を発表したが、来年度も引き続き同程度の数の新製品を導入していく予定だという。中でも、ZigBee関連製品の比重が増えるとしている。

――メインの市場はやはり海外でしょうか

江川氏: 米国はスマートグリッドを政府が後押ししていることもあり、ZigBeeの需要が高い。弊社としてもそこに多数の製品を導入しており、今後は欧州も含めてさらに伸びると期待している。2013年には、2009年度の売り上げ(1億6600万ドル)の約3倍となる5億ドルを目指す。

――その期待(市場の伸びに対する期待)の中に、日本市場の割合はどれほど含まれているのでしょう

江川氏: 2009年度売り上げ(原価)のうち、日本を含めたアジアの割合は約10%。これを2013年度には日本だけで10%まで持っていきたい。分野としては産業機器や工業機器をメインに、そのほか家庭内の装置や先ほど例として紹介した荷物管理や輸送モニタリング。加えて交通管理やFA/IA機器、ヘルスケア関連のシステムなどもターゲットとしている。

――今後のM2M市場に対する期待、可能性を教えてください

江川氏: 日本法人としては、やはり日本市場の急速な立ち上がりを願っている。ZigBeeを日本で紹介し始めてからすでに3年ほど経過したが、もうそろそろ「新しいテクノロジー」という認識から「使えるテクノロジー」だという認識を持っていただけていると考えている。そうした意味で、2010年は大きなビジネスが急速に立ち上がってくることを大きく期待している。

江川氏: 日本は新しいテクノロジーを使うという部分においては諸外国から遅れを取っているが、作る製品のクオリティは非常に高い。今後、日本製の製品が出てきて、その高いクオリティと新しい通信技術を持ってすれば、諸外国にすぐに追い付ける(もしくは追い抜ける)可能性がある。



Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.