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» 2010年01月06日 00時00分 UPDATE

Windows Embeddedセミナーレポート(1):組み込みシステムにおける割り込み処理の重要性 (1/2)

Windows Embedded組み込みセミナーが仙台で開催。大阪電気通信大学の南角准教授が、割り込み処理の重要性を語った。

[西坂真人,@IT MONOist]

 昨年登場した新世代のOS「Windows 7」によって、組み込みシステムの世界にも新たな可能性が出てきた。これを受けてマイクロソフトは昨年(2009年)11月から、全国各地でWindows 7をベースとした「“Windows Embedded”組み込みセミナー」を展開。教育や技術、最新半導体動向、組み込みOSやソフトウェア品質にかかわる問題などを踏まえた内容でセミナーを行っている。

 本稿では昨年12月10日に仙台で行われたセミナーから、大阪電気通信大学 大学院 総合情報学研究科 准教授の南角 茂樹氏の講演内容を中心にお伝えする。

あらゆるものに使われている組み込みシステム

南角 茂樹氏 大阪電気通信大学 大学院 総合情報学研究科 准教授の南角 茂樹氏

 Windows Embedded CEなどの組み込みOSを使用した研究・授業を行っている大学教授らとともに、組み込み開発に携わるさまざまな人々の橋渡しを行う組み込み開発者コミュニティ「エンベデッドフォーラム」のコアメンバーでもある南角氏。今回のセミナーでは「組み込みシステムにおける割り込み処理の信頼性向上について」と題した講演が行われた。

 南角氏は冒頭、組み込みシステムがわれわれの生活にかかわるあらゆるものに使われていることを説明。「携帯電話や地上デジタル放送機器などの各種AV機器、家電製品、自動車、インダストリアル製品、自動販売機や自動改札、パチンコなどの娯楽機器、果てはレーダーや宇宙機器などに広く及ぶ。世の中は組み込みシステムで満ち溢れている」と語った。

あらゆるものに組み込みシステムが使われている あらゆるものに組み込みシステムが使われている

 これら組み込みシステムの特徴として南角氏は「リアルタイム性」や「ソフトウェア/ハードウェア/メカ(機構)の連携」が必要であると訴える。

 「外界(現実世界)との相互作用により最適な処理を行うことが必要。つまりセンサやアクチュエータとの連携が必須。センサは現実世界の様子をコンピュータに伝えるもの。一方、アクチュエータはその逆でコンピュータが現実世界に対して何か影響を与えるもの。センサやアクチュエータにはそれぞれ扱うデバイスがあって、そのデバイスの仕様が違う。となると、そのデバイスドライバは必須となる。組み込みシステムというのは、製品ごとに最適なものなので、その(デバイスドライバの)組み合わせは膨大なものになる」(南角氏)。

 そして、組み込みシステムはハードウェアとソフトウェアによる協調動作で成り立っている、と南角氏は語る。

 「例えば冷蔵庫なら、温度上昇という自然現象を温度センサというハードウェアで検知し、その情報を受けたソフトウェアが冷媒を圧縮する量をどれぐらい増やしたらいいか解析してコンプレッサ(ハードウェア)に伝達することで、冷蔵庫内が適温に冷やされる。また、人口衛星なら衛星の回転を太陽センサや地球センサで検知し、衛星が静止するようにスラスタ(推進器)を噴くといったこともハードとソフトの協調動作で行っている」(南角氏)。

組み込みシステムはハードウェアとソフトウェアによる協調動作で成り立っている 組み込みシステムはハードウェアとソフトウェアによる協調動作で成り立っている

 組み込みシステムのリアルタイム性や協調動作を実現するために、組み込みソフトウェアにはプログラムの並列処理が必要となる。

 「組み込みシステムは次に何が起こるか分からない現実世界を対象としているため、割り込み処理(ISR)やリアルタイムOSを用いてのタスク(スレッド、プロセス)などを用いた並列処理が必須。また並列処理を実現するためには、排他制御の知識も必要となる」(南角氏)。

教育機関でも組み込みシステム開発者の育成を

 近年の各種産業のIT化に伴って組み込みシステム技術の重要性はますます高まっている。南角氏は、資源の乏しい日本こそ、こういった組み込みシステムを得意分野とすべきであると述べる。

 ただし、その組み込みシステムの開発を行うためには、ソフトウェア開発の知識以外に、電子デバイスなどハードを制御するための知識や、リアルタイム設計の知識など、より深くより広範囲な知識が必要となる。その一方で、組み込みシステムや組み込みソフトの存在は、社会では必ずしも認知されていない。

 南角氏は現在の教育機関に対し、組み込みシステム開発者を育てる体制が整っていない点を訴える。

 「組み込みシステムは“メーカー”のもの。製品に組み込まれるものなので、大学など教育機関では経験しづらい。なおかつ、企業の方は自社の製品技術なのでおいそれと(ノウハウを)外部に出せない。このようなことから組み込みシステムや組み込みソフトを教えられる人が大学など教育機関に非常に少ないのが現状。教材の不備など実習環境も整っていない」(南角氏)。

 こういったことから、組み込みシステムの教育はメーカーに就職してからの企業内教育がスタートになってしまうわけだが、南角氏は大学など教育機関でも組み込みシステムの基礎は学べるのではと提案する。

 三菱電機のエンジニア出身である南角氏は、数値制御装置システムソフトウェア、組み込みリアルタイムOS、エンジニアリングワークステーション、分散リアルタイムOS、分散組み込みシステムなど、メーカー時代は一貫して組み込みリアルタイムシステムの研究に従事。2006年から大阪電気通信大学で教鞭(べん)を執っている。

 「組み込みソフトウェアの知識技術体系(下図参照)を見ると、応用分野固有の知識などはメーカーで学ばないといけないものだが、その下のベースとなる共通技術や関連知識/周辺知識などは、教育機関で十分学べるもの。われわれの大学では、このあたりの知識の習得を目指している」(南角氏)。

組み込みソフトウェアの知識技術体系図 組み込みソフトウェアの知識技術体系図
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