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» 2010年02月17日 11時00分 UPDATE

甚さんの設計サバイバル大特訓(3):恐怖のケミカルクラック&ウェルドライン (1/3)

変身度が非常に大きい樹脂部品は、設計も加工も非常に難しい。その理由が、ケミカルクラックとウェルドラインだ。

[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),@IT MONOist]

当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


 こんなことがあるのでしょうか? ――第2回の冒頭を見てみましょう……。

いつも社告とリコールを出しているのは、自動車メーカーのA社とB社のほぼ2社。家電はC社とD社とE社の3社。OA事務機器はF社。企業によっては、人命をも容易に奪い、何度も繰り返しています!

 また予言が的中してしまいました! 残念です。

 2010年1月、これらの企業から社告・リコールが立て続けに発表されました。最近の社告・リコールは、企業名が特定化しているのが特徴です。また、その発生のインターバルが短縮化し、ますます被害が大規模化している傾向があります。

 ある日、1人の韓国人留学生(大学院卒)から相談を受けました。この春にあこがれの日本企業に就職するそうですが、「日本企業に就職するのが不安。やはり、帰国すべきか」と。筆者は、アドバイスの言葉に詰まりました。

 ここで、図1を見ましょう。

yk_jsurvival03_1.gif 図1 日本人技術者と中国/韓国人技術者の意識の相違

 筆者は、中国、香港、韓国でも「超低コスト化手法」や「トラブル完全対策法」のセミナーやコンサルタントを実施していますが、これらの国々において、受講席は最前列から埋まります。しかし日本の場合は、部屋の後ろ、しかも、その両端から埋まります。その席は、心理学から「やる気にない席」として新人コンサルタントから真っ先に学ぶ知識です。

 その前に日本ではそれらのセミナーを受講すらしません。どうして、このような事態になってしまったのでしょう?

 日本企業は、コストも品質も興味がないのでしょうか?

 一方、先ほどの諸外国では、帰国できないほどの質問攻めにあうのです。

「百年に1度の大不景気」なのに、「安かろう、悪かろう」の戦後の日本企業に戻ったような気がします。しかし、そのころの日本は、「やる気は満々」であったのです。しかしいま、「理科離れ」、「工学離れ」、そして、企業内部では「技術者離れ」が加速しています。良君の上司、“出世逃げ課長”のように……。

甚

べらんめぇ! “出世逃げ”の成果主義か、直下の部下を育成せず、2階級昇格すれば、関係ない……よくできているなぁ! 感心しちまったぜぃ!


良

甚さん! 前回も同じことをいっていましたよ!大丈夫ですか? もう、朝食はとりましたか?

*「出世逃げ」については、前回をご覧ください。


甚

あったりめぇだ! 食ったぞ。下町の朝飯は、なんたって、納豆かシャケだ。アジの干物でもいい。納豆食わねぇヤツは……日本人じゃねぇ!


良

甚さん、僕だって食べてますよ。ヨシギューの納豆定食、370円。ご飯大盛りで、ちょうど400円!


甚

ヨシギューの朝定食ってか? ……ちょいと、オレサマはうるさいぞ。焼き魚定食に、『別納豆』を追加注文するのがツウってもんよ。牛丼並に『別納豆』……これも江戸の下町じゃ、グウ! だ。


良

牛丼のツユに納豆があうんですよねぇ! どうしてかなぁ?


甚

ただし、ヨシギューで納豆を単品注文できるのは、朝10時までだ。3分ぐらいの遅刻ならよぉ、どうにか許してくれるってぇもんよ。その点、松屋はいつでも、納豆単品の注文がOKだ。ネギもいっぱい付けてくれる。


良

甚さん、どうして、そんなに牛丼屋の朝定食に詳しいのですか?


甚

それは、聞くな! 武士は食わねど爪楊枝(つまようじ)……いいか、良君! 技術を学ぶのもいいが、それよりも、いい奥さんをもらえ!


良

“爪”楊枝!? “高”楊枝じゃないの? というか、いい奥さんをって、どういう意味ですか? 興味津々……。


 さて前回も説明しましたが、設計と加工において、板金部品・樹脂部品・切削部品の中で、樹脂部品は最も難しい部品です。なぜならば、「変身度」が最大だからです。変身度に関しては、第2回の「図3 加工法別による変身の内容と変身度」で、もう一度復習してから、この先へ進みましょう。

 最難関たるゆえんが、今回のテーマである「ケミカルクラック」と「ウェルドライン」です。

甚

いいか、良君! まずは『恐怖のケミカルクラックから逃れる設計サバイバル術』を教えっからよぉ、耳の穴、かっぽじってよく聞きやがれっ!


 その前に……、以下を確認しましょう。

設計サバイバル・ノート

【ケミカルクラックとは】

ケミカルクラックとは、「樹脂にケミカル(化学物質)が触れると割れる」と学校では習う場合がありますが、もう少し知識を深めておきましょう。

  1. ケミカルアタック
  2. ケミカルクラック
  3. ソルベントクラック

などと、いろいろな呼び方がありますが、筆者のコンサルタント先の皆さまは、「ケミカルクラック」と呼んでいますので、今回はそれに統一します。



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