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» 2010年03月31日 00時00分 UPDATE

PLM導入プロジェクト、検討前に読むコラム(1) :クラウド? OSS? PLMアプリケーションの新しい選択肢とライセンスモデル (1/3)

製品ライフサイクル全体を管理するためにはPLMを基軸としたシステム作りが急務。PLM導入・改善プロジェクトを担当する際に事前に知っておくべき話題を、毎回さまざまな切り口から紹介していきます。

[久次昌彦/プログレス・パートナーズ,@IT MONOist]

「腰が重いんだよね」は世界共通だが……

 皆さまこんにちは。プログレス・パートナーズの久次(ひさつぐ)です。

 今回の連載では「製品開発業務システム化担当者の悩みを解決」をテーマに、モノづくり力アップのためにCADやPDM、PLMの導入を検討している現場担当者の目線から課題を示し、その解決策をさまざまな切り口やヒントから紹介していきたいと思います。

 最初のテーマは、CADやPLMシステムの販売形式として一般的なライセンスビジネスモデルに対し、最近登場してきたクラウドサービスやオープンソースシステムに関する採用のポイントについて触れていきます。

 設計業務の効率を上げるためにCAD/CAEやPDM/PLMシステムなどの導入を検討するのですが、CADやPLMソフトのライセンスの費用は1人当たり数十万円するのは当たり前です。

 ライセンスソフトウェアのほとんどは利用人数によってライセンス費用が掛け算で計算されるため、100人を超える規模で利用するシステムを構築する場合、ソフトウェアの購入だけでも数千万円の予算が必要になってきます。

 これではシステム化提案に向けてのアクションに対し腰が重くなってしまうのも当たり前ですね。

 またさまざまなコンペを経て、やっと上申しても、承認されるころには市場にはより良いものが出てきてしまうことも多々あります。これは日本の企業だけの悩みではなく、世界中のIT担当者が悩んでいるテーマでもあります。

 ただ、海外のビジネスマンはこのような悩みを自社の中だけで解決するのではなく、Linked Inなどのビジネスソーシャルネットワークを通じて盛んに議論を行い、より良い解を貪欲(どんよく)に求め実践しています。

 ライセンスビジネスモデルに対しては、「Big Software has duped us for decades」(「巨大ソフトウェアはわたしたちを何十年もの間かついできた」)なんていう刺激的な記事が掲載されたりもしていますので、興味のある方は一読してみてはいかがでしょうか。

Big Software has duped us for decades Big Software has duped us for decades

 筆者はIngresという歴史あるデータベースソフトウェア企業のCEOであるRoger Burkhardt氏。このエントリには多数のコメントも寄せられており、活発な議論が行われている。本文はこちらのリンクから参照ください。

 最近ではPLMシステムの提供も多様化し、Arena SolutionsがPLMシステムをクラウドサービスで提供していたり、手前味噌になりますが、筆者も関係するAras

Corporation(日本語はこちら)がオープンソースでPLMシステムをライセンスフリーで提供するといった選択肢も出てきました。

 そこでエンタープライズソフトウェアのコストを下げる選択肢としてライセンスソフトビジネスの持つ課題を踏まえ、新しく出てきた選択肢としてのクラウドやオープンソースを選択する場合のポイントについて触れていきます。

ライセンスビジネスモデルの再考

 ライセンスビジネスの課題とは何でしょう?

 前述の記事にも書かれていますが、ライセンスビジネスモデルではユーザーは、結果として使わない費用をシステム化の最初の段階で投資してしまうということです。

 費用が高いか安いかは企業の体力に依存することですので問題ではありません。それよりも使い切れないライセンスに対して投資してしまうことによって、企業における改善の柔軟性が損なわれてしまうことが問題です。業務改善とITは表裏一体です。業務改善を実施したらそれを定着させるためにITを使うのが一番効果的な手順です。

 しかし、せっかく導入したITが適切でないと、それに引きずられて業務改善が進まないといったことも起こりがちです。業務改善のために導入したITが逆に業務改善の足を引っ張るといった、矛盾したパラドックスに陥ります。

 ライセンスを多く持っていると、「せっかくなので使い切ろう」といった考えになりますが、目的と手段が一致していない使い方をしても成果は出ません。

 なぜ、使わないライセンスを企業は購入するのでしょうか?

 1つにはボリュームディスカウントを受けるために、実際より多くのライセンスを購入しているというパターンです。工場の中では「ムダをなくせ!」と一生懸命活動しているにもかかわらず……です。

 詳細は先のCNN Monyの記事を参照いただきたいのですが、それ以外にもライセンスビジネスモデルではアップフロントコスト(初期投資コスト)が大きいという問題を抱えています。

 ライセンス販売されているソフトウェアは、通常お金を出して購入しないと実際にどのように動くのか見ることができません。そのため紙ベースのプレゼンテーションやデモンストレーションだけを見て、多くの会社ではソフトウェアを選択してしまっています。

 もちろん、システム化がうまくいき業務が改善され、購入したライセンスを使い切れれば問題ありませんが、一般的にシステム化プロジェクトの成功率はまだまだそれほど高くありません。最適なシステム化の投資費用を検討するには、アップフロントコストを抑えて、小さな成功を積み重ねて大きな成果を得る手順を考えるべきです。アップフロントコストを抑えて業務改善を段階的に進めるにはクラウドやオープンソースといったサービスは有望な選択肢の1つといえます。

 このような形で提供されているソフトウェアは少し前までは、ライセンス販売されているものに比べ自由度や完成度が劣っていたのですが、今日このような形態で入手可能なシステムは非常に完成度か高いものもあり、日本企業でも使いこなして活用している企業が出てきました。

 最適なシステム化投資を実現するために、情報システム担当者がクラウドやオープンソースシステムを採用する場合に考慮しておかなければならないポイントを見ていきましょう。

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