クラウド? OSS? PLMアプリケーションの新しい選択肢とライセンスモデルPLM導入プロジェクト、検討前に読むコラム(1) (2/3 ページ)

» 2010年03月31日 00時00分 公開

クラウドサービスのPLMシステムを使う場合の落とし穴

 クラウドシステムの一番のメリットはハードウェアやソフトウェアを用意しなくてもすぐに利用することができる点です。

 このメリットは大きく、システムの構築期間を短縮できるだけでなくシステムの保守や運用もクラウドサービスに任せることができます。また内部統制上、新規のハードウェアを導入するのが困難な場合などもこの手のサービスを使うメリットといえます。

 少し前までのSaaSやクラウドサービスのシステムは、どのユーザーにも同じ機能のみを提供していましたが、最近のものはある一定の範囲であれば個別に属性を持たせたり、個別プログラムを実行したりできます。

 PLMシステムとしてクラウドサービスを有効に活用できる場面としては、取引先や外注先との間のドキュメントのやりとりが一般的です。

 システムではもちろん部品構成も管理できるので、パーツにドキュメントを関連付けたり、ドキュメントとして設計変更を運用できます。

 かつては設計情報を外部のホスト(サーバ)に預けることに一抹の不安がありましたが、今日ではセキュリティに関しても技術的にはクリアされています。

 クラウドサービスのデメリットとしては3つ挙げられます。

 1つ目は、サービスの利用を中止すると過去のデータが使えなくなる点です。短期間のデータを蓄積するだけでよければ問題ありませんが、設計情報のデータは多くの場合、長期間保管しなければいけません。製品のライフサイクルが短いからといって簡単に過去のデータを消去するわけにはいかないからです。

 営業日報や会計データのようにある期間を過ぎてしまえばほとんど見直さないデータの場合は問題ありませんが、設計情報データはそうはいきません。このためクラウドは簡単に利用できますが、その中で管理されている情報をいかに企業の中に蓄積していくかも併せて検討しておく必要があります。

 2点目は回線スピードです。CRMシステムやERPシステムではテキストベースのデータなので問題ありませんが、PLMシステムではCADの3次元モデルデータなど大きなサイズのデータを扱います。

 CADデータなみのサイズのデータを瞬時に送ることができない今日の技術では、クラウド上で扱うデータ種別を絞り込んでおく必要があるでしょう。

 3点目は、業務システムとして運用する場合、相互にデータを流通させる必要があります。会計システムのデータを生産管理システムやPLMシステムで使いたいといったニーズは必ず出てきます。

 PLMシステムの性格上、プロダクトのライフサイクルの各工程に適切なデータを渡してあげることが望まれます。クラウドサービスでPLMシステムを使う場合は、単機能システムとして割り切って取り扱った方が無難といえます。

 また、意外と見落とされがちなのが、システムのアップグレードに関する対応です。システム資産を一括でベンダに任せているクラウドやSaaSの場合、システムアップグレードの自由度はベンダに依存することになります。専用環境で利用している場合はいいのですがマルチテナントで利用している場合、システムのアップグレードはベンダに依存してしまいます。システムは業務の成熟度に合わせて成長させないと、業務改善の足かせになることもあります。

 このような点がクリアにされているかをクラウドサービス選択の検討ポイントとするといいでしょう。

オープンソースシステムって業務に使えるの?

 オープンソースシステムの魅力はなんといっても無料で手に入ることでしょう。

 最近ではライセンス販売されているシステムと同じ機能を持つものがオープンソースでも提供され始めています。

 オープンソースとフリーソフトを併せてFLOSS(Free/Libre and Open Source Software)といった言葉が使われていますが、いまのところエンタープライズアプリケーションとして提供されているものはオープンソースが多いため、ここではオープンソースに絞って紹介したいと思います。

 オープンソースで提供されるソフトウェアのほとんどは、ソフトウェア自身は無料で入手できます。従って、システム構築の際の初期投資(アップフロントコスト)をかなり抑えることができます。

 ソフトウェアそのものは無料で手に入りますので、システム化を検討する際は実際に使ってみて、自分たちの要件に合致しているかを十分調査しながらシステム化プロジェクトを進めることができます。

 これはシステム構築を成功させるうえで非常に大きなアドバンテージとなるでしょう。アップフロントコストを抑え、少ない投資を継続しながらシステムを構築していくことで、システム構築におけるリスクを大きくヘッジできるからです。

 実際に使えるメリットとして見落としてはならないのが、システムには業務ノウハウが埋め込まれているという点です。そこにはさまざまな企業で培ったノウハウを垣間見られるので、自社の業務のあるべき姿を構築するうえで非常に参考になります。

 また、オープンソースで提供されているシステムには、規模の差こそあれオープンコミュニティが存在し、個別に開発しなくても自分たちが欲しい機能を簡単に取り込めたり、コミュニティのプログラムを参考に自社の要件に合ったサービスを作成することができる点も非常に大きな魅力です。

 オープンソースシステムのデメリットとしては大きく2つ挙げられます。

 1つはシステムが一定の方向性持って継続して開発し続けるか? という点です。オープンソースは個人やある特定のグループによって推進されている場合が多く、この場合企業活動として取り組まれているソフトウェアよりビジョンや開発の方向性が定まっていないということも多くあります。

 2つ目はシステムのサポートなどはコミュニティ頼りな部分も多く、システム開発時にキチンとしたサポートが受けられずに苦労する場合もあります。

 このようなオープンソースのデメリットも最近では改善されてきています。PLMのようなエンタープライズシステムをオープンソースモデルで提供している企業はほとんどの場合、特定の企業がコアになるシステムを開発して提供しています。また、従来であれば1社で開発するしかなかった拡張機能なども、オープンソースモデルの場合はコミュニティの力を有効活用して機能拡張できるため、特定の企業内で開発するシステムより多くの機能が短期間に提供されています。

 後者のサポートに関してもサブスクリプションサービスという形でサポートを有償で提供しているため、一般的なライセンスモデルで販売されているソフトウェアと同じように安心して使えるようになってきました。

 もちろんオープンソースシステムで構築したシステムも個別のシステムですので、従来通りハードの調達や開発マネジメントおよび保守・運用まで考慮しなければならない点もお忘れなく。

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