製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

日本企業の市場問題管理とデザインレビューの水準いま考えるべき品質マネジメント改革(1)(6/6 ページ)

» 2010年04月26日 00時00分 公開
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製造業の市場問題管理とデザインレビュープロセスに関する実態調査

 話は少し変わりますが、NECが2009年7月に実施した開発プロセスに関する調査結果から、品質管理(特に市場問題管理とデザインレビューのやり方)についての抜粋をご紹介します。

 その中で、業務プロセスとして改善すべき課題を探っていきたいと思います。

製造業が重視する取り組みテーマ

 本調査の冒頭で、各社が重視する取り組みテーマについての回答を集計しました(図10)。その結果、品質は、売り上げ増大(商品力強化)に次いで2番目に重視するテーマであることが判明しました。筆者がコンサルティングで依頼される案件の大部分がコスト削減に関するテーマであることから、コスト削減がもっと上位にくることを予想していましたが、品質確保がコスト削減の前提でした。

 ちなみに、回答は137社から得られたものであり、電機・自動車・自動車部品・住宅・建材・産業機械・精密など業種は多岐にわたっています。

図10 製造業が重視する取り組みテーマ 図10 製造業が重視する取り組みテーマ

市場問題管理とデザインレビュープロセスの評価方法

 冒頭で2004年をピークにリコール件数や台数が減少していると説明しました。実際に、2000年初頭から発生してきたリコール問題に対し、自動車メーカー各社は、不具合原因の追究と分析に多大な人と資金を投じて、既知の問題や不具合を共有してデザインレビューにフィードバックし、設計段階での品質を高めるプロセスの導入を徹底的に実践したといわれています。

 ここからは、このプロセスの基本的な手順と評価方法を説明します。

 各設問で、2つのプロセスが全社的に徹底的に運用されていたら5点、徹底的ではないがプロセスが存在していたら4点、片方ができているのであれば3点、としてアンケート回答を入手し、集計しました。

図11 市場問題管理とデザインレビュープロセスのあるべき姿 図11 市場問題管理とデザインレビュープロセスのあるべき姿

製造業における市場問題管理とデザインレビュープロセスの水準

 評価の結果、以下のことが判明しました。

  • 品質問題の原因分析と次開発へのフィードバックでは、「重大問題は関係部門に即時共有されるが、再発防止策のチェックリスト化は十分ではない」
  • 不具合情報やチェックリスト管理は「記載方法は統一されているが、部門管理が中心」
  • デザインレビューの実施方法は「有識者からの指摘事項中心のレビューで、指摘事項はフォローされている」

 過去の不具合を二度と発生させないことは品質マネジメントの基本です。そのためのデザインレビューは効率的かつ客観的に行われる必要があります。しかし、多くの企業がこのプロセスを徹底的に実施できておらず、自信を持っていないことが読み取れます。

 品質保証/管理部門は、市場での不具合だけでなく、製造工程で発覚した問題や改善提案を含めて、技術部門へのフィードバック提案を積極的に進めていくべきではないか、さらにその中核組織になるべき、と筆者は提言します。

図12 市場問題管理とデザインレビュープロセス診断結果 図12 市場問題管理とデザインレビュープロセス診断結果

◇ ◇ ◇

 次回は、開発期間短縮と品質問題削減の両立を実現するためのメカニズム、コンサルタントが品質マネジメント改革プロジェクトの中で活用する実践的なツールについてご紹介していきたいと考えています。

≫「品質要件マネジメント手法とフロントローディング開発」へ続く


参考文献

  1. 「ケタ違いの品質」(『日経Automotive Technology』2008年3月号、p.72〜73)
  2. 『2009年版ものづくり白書』(経済産業省、p.94〜96)
  3. 「電子化進む危うさ」(朝日新聞 2010年2月5日朝刊 第3面)
  4. 「PLMクイック診断 製品開発力分析レポート」(NEC独自調査、2009年7月)

筆者紹介

三河 進(みかわ すすむ)
NECコンサルティング事業部
http://www.nec.co.jp/service/consult/services/07.html
NCPシニアビジネスコンサルタント
システムアナリスト(経済産業省)
全能連認定マネジメントコンサルタント
PMP(米国PMI)

精密機械製造業、PLMベンダ、外資系コンサルティングファームをへて、現職。
専門分野は、開発設計プロセス改革(リードタイム短縮、品質マネジメント、コストマネジメント)、サプライチェーン改革(サプライヤマネジメント)、情報戦略策定、超大型プロジェクトマネジメントの領域にある。
自動車・電機・ハイテク・重工などのPLM・SCMに関する業務改革プロジェクトに従事中。
論文「モジュール化による設計リードタイムの大幅短縮」で平成20年度の全能連賞を受賞。


【おことわり】
本記事は執筆者の個人的見解であり、NECの公式見解を示すものではありません。



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