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» 2010年05月13日 11時00分 UPDATE

いまさら聞けない シャシー設計入門(8):続・ブレーキってどうなっているの? (1/3)

前回説明し切れなかったブレーキの構成部品についての解説。ブレーキキャリパやキャリパピストンなどにも、工夫がたくさん。

[山本 照久,カーライフプロデューサー]

 前回はブレーキペダルを踏み込むことで発生する踏力が、マスターパワーで数倍に増幅され、マスターシリンダを経由して各ブレーキ装置へ到達し、油圧が発生するところまで説明しました。今回も引き続き、ブレーキの機構について説明を続けます。

ブレーキホース

 マスターシリンダで発生した油圧は、ブレーキフルードを介してブレーキキャリパへと伝わりますが、その直前に「ブレーキホース」があります。ブレーキホースはその名のとおり、ゴム製のホースであり、金属製のブレーキパイプとは性質がまったく異なります。

ALT 写真1 ブレーキパイプ:ブレーキパイプからブレーキホースへ切り替わる部位です(ホイールハウス内)

 単純に考えれば、ブレーキパイプを直接ブレーキキャリパに接続すればいいと考えるかもしれません。しかし車の挙動をイメージすると、ブレーキホースの必要性が分かります。ブレーキキャリパは、各タイヤに追従して動くように取り付けられています。つまり車が走行することで、ブレーキキャリパは路面に追従して動きます。なので、サスペンションが上下にストロークした際、ブレーキキャリパもタイヤと同じく上下に動きます。前輪については、ハンドルを切ることでタイヤが左右に回転することになり、ブレーキキャリパも自動的に左右に回転します。

 このとき、もし金属製のブレーキパイプがブレーキキャリパに接続されていると、さまざまな挙動に対応できずに破損してしまうことになりますね。つまりブレーキホースは、車の挙動により変化するブレーキキャリパの位置に柔軟に追従できるように、ゴム製で長さにも余裕を持たせた状態で設けられているのです。

 ただし、ブレーキホースは耐圧製に加えて、耐熱性や耐日光性、耐ブレーキフルード性なども求められるため、内面のゴムの周りに繊維を用いた補強層を二重で施し、さらに耐日光性を持ったカバーゴムで覆われるという非常に頑丈な作りとなっています。それだけ頑丈に作られていてもブレーキ圧は非常に高く、どうしてもブレーキホースは膨張してしまいます。膨張してしまう、ということはつまり、ブレーキ圧が逃げてしまうことになります。

 普通に運転している分にはまったく問題ありませんが、ハードなブレーキングや繊細なブレーキタッチが求められるスポーツ走行においてはマイナス要素となります。

 そこでスポーツ走行などで求められる膨張しないブレーキホースを実現するために、金属に伸縮性を持たすメッシュ構造を施した「ステンメッシュブレーキホース」(写真2)が多く出回っています。*ステン=ステンレス

写真2 ステンメッシュブレーキホース:外観を考慮して交換される場合もあります

ブレーキキャリパ

 ブレーキキャリパはブレーキ装置内における油圧発生の最終地点であり、ブレーキパッドに直接触れ、キャリパピストンを保持している部分です。

ALT 写真3 ブレーキキャリパ

 ブレーキキャリパにはブレーキディスクの片側だけにキャリパピストンがある「浮動キャリパ型」と、ブレーキディスクの両側にキャリパピストンがある「固定キャリパ型」があります。

浮動キャリパ型

 浮動キャリパ型は、両側にキャリパピストンがないことからスペース効率に優れ、さらにコストパフォーマンス面では非常に優れています。ただし制動力という観点で、固定キャリパ型と比べると、ディスクの両側から確実に挟み込む構造ではないため必然的に劣ってしまいます。剛性面でも劣っていますが、一般的な用途を基準に考えると、まったく問題がないレベルであり、スポーツカーや高級車を除くほとんどの車種で採用されている方式です。

 次に浮動キャリパ型の作動について説明します。浮動キャリパ型は大きく分けてキャリパ本体とキャリパベースとに分かれ、双方は キャリパピンにより結合されています(写真4)。

ALT 写真4 浮動キャリパ

 双方はキャリパピン上をスムーズかつ平行にスライドするようになっており、この動きが「浮動」という名称の由来といえます。キャリパベースは一般的にナックル*に取り付けられ、キャリパ本体とは違い、完全に固定されています。油圧が掛かるとピストンは前方へと押し出され、それに伴いピストン側のブレーキパッドがブレーキディスクに押し付けられます(写真4内矢印A)。しかしキャリパ本体は固定されていないため、キャリパピン上を写真内矢印Bの方向へスライドします。するとキャリパピストンの反対側にあるブレーキパッドもブレーキディスクに押さえ付けられることになりますので、片側にしかキャリパピストンがなくてもブレーキディスクを両側から挟み込むことができますね。

 浮動キャリパにとって非常に重要なのは、キャリパピンです。その使用過程で摩耗や異物のかみ込み、錆(さび)などが発生し、動きがスムーズでなくなってしまうと、ブレーキパッドの内面と外面とで消耗具合は大幅に異なってしまうことになります。そうならないようにキャリパピンにはダストブーツが取り付けられており、内部にはグリスが充填(じゅうてん)されています。しかし定期的なメンテナンスを行わなければ、いずれは動きが悪くなることになります。

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